米雇用統計 2023年9月1日(金)の結果と解説
振り返りバックナンバー
米労働省が2023年9月1日に発表した8月雇用統計の主な結果は、①非農業部門雇用者数18.7万人増、②失業率3.8%、③平均時給33.82ドル(前月比+0.2%、前年比+4.3%)という内容であった。
①8月の非農業部門雇用者数は前月比18.7万人増と市場予想の17.0万人増を上回った。ただし、7月分の増加幅が18.7万人から15.7万人へ、6月分が18.5万人から10.5万人へとそれぞれ下方修正された。このため、米雇用市場の基調的な動きを見る上で重視される非農業部門雇用者数の3カ月平均の増加幅は15.0万人にとどまり、コロナ禍で大幅減を記録した2020年6月以来の低水準となった。
②8月の失業率は3.8%と、市場予想および前月の3.5%を上回り2022年2月以来の水準に上昇した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も、前月の6.7%から7.1%へと上昇。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が62.6%から62.8%へと上昇したことも失業率の悪化につながった。なお、労働参加率の62.8%は2020年2月以来の高水準。
③8月の平均時給は33.82ドルと前月の33.74ドルから0.08ドル増加した。伸び率は前月比+0.2%、前年比+4.3%で、ともに7月(+0.4%、+4.4%)から伸びが鈍化。前月比の+0.2%は今年最低の伸びであり、2022年2月以来の低さとなった。なお、市場予想は前月比+0.3%、前年比+4.3%だった。
今回の米8月雇用統計では、3カ月平均で見た非農業部門雇用者数の増加幅が鈍化し、失業率は0.3ポイント悪化した。さらに賃金上昇率(平均時給伸び率)も鈍化しており、米労働市場の需給ひっ迫が薄れたとの受け止めが広がった。これにより、次回9月FOMCでは政策金利の据え置きが濃厚との見方が強まっている。ただし、失業率はFOMCが6月に示した10-12月期の予想中央値である4.1%を依然として下回る水準にある。また、平均時給についてはコロナ禍直前の水準である前年比3.0%前後を大幅に上回っている。インフレ率が目標の2%に戻るにはなお時間を要すると見られる中、FOMCは9月に利上げを見送っても、次回11月利上げの可能性を閉ざすことはしないだろう。このため、9月FOMCに向けて米長期金利の低下は限定的と見られ、ドルの下値余地も小さいと考えられる。特に、マイナス金利通貨の円に対してはドルの底堅い動きが継続するだろう。
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米国 経済指標(失業率・非農業部門雇用者数)過去の推移
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