金融政策とは?決定会合や財政政策との違いなどをわかりやすく解説

金融政策とは?

金融政策とは、中央銀行が金利や通貨の供給量を調整することで行う、金融面からの経済政策のことです。金融政策のなかでも、為替相場では政策金利の調整が大きく注目されます。政策金利とは、中央銀行が一般銀行に貸し出すときの金利です。

政策金利一覧

金融政策の目的は物価の安定

金融政策の目的は物価を安定させることです。物価の安定を図るために、金融政策では金利の引き上げ(利上げ)や引き下げ(利下げ)を行って景気の過熱や失速を防ごうとします。

一般的に中央銀行は、景気が過熱すると金利の引き上げを行います。政策金利が引き上げられると、長期金利が上昇して各種ローンの金利が引き上げられる可能性が高まります。するとローンを組んで自動車や家などを買いにくくなるため、行き過ぎた消費行動が抑制されます。このように、消費の伸びを緩やかにして景気の過熱を抑える目的で「利上げ」は実行されます。

景気の過熱を抑える目的で「利上げ」は実行されます

逆に、景気悪化の歯止めがかからないときには金利の引き下げを行います。政策金利が引き下げられると、長期金利が低下して各種ローンの金利にも引き下げ圧力がかかります。するとローンを組んで自動車や家などを買いやすくなり、消費行動が促進されます。このように活発な消費行動を呼び起こして景気を回復させる目的で「利下げ」は実行されます。

景気の過熱を抑える目的で「利上げ」は実行されます

経済は緩やかに長く成長するのが最も理想的です。そのためには、あらゆる経済活動の基盤となる物価が安定していることが重要です。物価を安定させ、理想的な経済成長を実現・持続させていくために実施されるのが金融政策なのです。

金融政策決定会合とは?

金融政策の基本方針は、日本銀行の政策委員会による「金融政策決定会合」で決定されます。年8回、それぞれ2日間開催され、金融市場調節方針や金融政策手段、経済・金融情勢に関する基本的見解などが審議・決定されます。決定内容は会合終了後、ただちに公表されます。また、会合後に日銀総裁が行う会見も市場関係者に注目されます。

財政政策とは?

金融政策と並ぶ経済政策の柱として「財政政策」があります。財政政策とは、政府が国債の発行や公共事業の拡大・縮小などを通じて雇用の拡大や国の総需要の調整などを行うことです。

金融政策と財政政策の違い

金融政策は中央銀行による物価を安定させるための政策であるのに対し、財政政策は政府が雇用の拡大や需要の調整などを目的として行うもので、下記のような違いがあります。

経済政策の種類 主体 目的 具体例
金融政策 中央銀行 物価の安定 金利の調整
通貨供給量の調整など
財政政策 政府 雇用の拡大、総需要の調整など 増税・減税
国債発行の増減
公共事業の拡大・縮小など

金融政策の手法

金融政策の手法には、次のようなものがあります。

公開市場操作

金融政策決定会合で金融市場調節方針が決まると、その方針を実現するために、日本銀行は金融市場において資金の供給や吸収を行います。これを金融市場調節といいます。金融市場調節の主な手段が、金融機関を相手に資金の貸付けや国債の売買などを行う「公開市場操作(オペレーション)」です。

公開市場操作には、日銀が資金の貸付けや国債等の買入れを行って市場に資金を供給する「買いオペ」と、日銀が手形の売出しや国債の買戻条件付売却などを行って市場から資金を吸収する「売りオペ」があります。

日銀が買いオペを行って市場に資金が供給されると、金利や物価が下がり、投資や消費が促進されて景気が底上げされます。逆に日銀が売りオペを行って市場から資金を吸収すると、金利や物価が上がり、投資や消費が抑制されて景気の過熱が抑えられます。

現在の日本においては、この公開市場操作(オペレーション)が金融政策の主要な手段となっています。

支払準備率操作

金融機関は、預かっている資金のうち一定の比率を日本銀行に預け入れることが義務付けられています。これを準備預金制度といい、この比率を支払準備率といいます。支払準備率の引き上げや引き下げによる金融政策を支払準備率操作といいます。

支払準備率が引き上げられると、金融機関は手持ちの資金が少なくなるため貸出が抑制され、金利が上がるなど金融引き締めの効果があるとされます。逆に支払準備率が引き下げられると、金融機関は多くの資金を貸出に回せるようになり、金利が下がるなど金融緩和の効果があるとされます。

かつては、支払準備率操作は金融機関に強制的に一律で影響を与える強力な金融政策として用いられていました。しかし現在では、日本を含む主要国では短期金融市場の発達などを背景に、金融政策の手段としてはあまり用いられなくなっています。

基準割引率および基準貸付利率

日本銀行が金融機関に資金を貸し出す際の基準金利を「基準割引率および基準貸付利率」といいます。かつては「公定歩合」と呼ばれ、預金金利など各種の金利が公定歩合に連動する仕組みになっていたため、公定歩合を調整することは金融政策の重要な手段でした。

しかし1994年に金利が自由化され、公定歩合と預金金利の直接的な連動はなくなりました。それを受けて公定歩合は「基準割引率および基準貸付利率」に名称が変更され、現在では公開市場操作が金融政策の中心的な手段となっています。

金融政策のこれまでの取組み

日本における金融政策のこれまでの取組みを概観してみましょう。

かつては支払準備率操作や公定歩合の調整が金融政策の手段となっていましたが、1994年に金利自由化が完了し、公開市場操作によって金融市場調節が行われるようになりました。

1999年から2000年にかけては「短期金利の指標である無担保コール翌日物の金利をできるだけ低めに推移するよう促す」という金融市場調節方針が出され、いわゆる「ゼロ金利政策」が実施されました。

2001年には「量的緩和政策」が開始されました。通常は金利を下げていけば景気は回復しますが、それでは十分効果を発揮できない場合に、金利を下げるだけでなく市場に供給する資金の量を増やすことで景気の回復を図るのが量的緩和政策です。日本では低金利政策を続けていながら景気の低迷やデフレ状態が続いたため、2001年3月に初めて量的緩和政策が導入されました。

2010年に開始された「包括的な金融緩和政策」では、金融緩和を一段と強力に推進するため、ゼロ金利政策の継続に加えて国債などの資産の買い入れが行われました。

さらに2013年には市場に供給される資金の量を増やす「量的緩和」に加え、日本銀行が長期国債の買い入れなどを拡大する「質的緩和」を組み合わせた「量的・質的金融緩和」が開始されました。

2016年には「量的・質的金融緩和」を発展させたものとして「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が導入されました。マイナス金利とは、金融機関が中央銀行に預ける預金の金利をマイナスにすることです。マイナス金利政策のもとでは、金融機関は日銀に資金を預けておくと金利を支払わなければならないため、日銀に資金を預けるよりも企業への貸し出しや投資に資金を回すことが促され、経済の活性化が期待されます。

その後も量的・質的金融緩和を強化する形で導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」や、2020年に新型コロナウイルス感染症への対応として決定された「金融緩和の強化」など、デフレ脱却や物価の安定を目指す金融政策が打ち出されています。

時期 金融政策
1999年2月~2000年8月 ゼロ金利政策
2001年3月~2006年3月 量的緩和政策
2010年10月~2013年4月 包括的な金融緩和政策
2013年4月~2016年1月 量的・質的金融緩和
2016年1月~同年9月 マイナス金利付き量的・質的金融緩和
2016年9月~ 長短金利操作付き量的・質的金融緩和

各国の政策金利

金融政策のうち、FXにおいて大きく注目されるのは、中央銀行が一般銀行に貸し出すときの金利である政策金利の調整です。

政策金利一覧

政策金利次第でスワップポイントによる収益が変わってくるため、特に中長期トレードを行うトレーダーにとって政策金利は要注目のポイントとなります。政策金利は各国の中央銀行が決定します。

米国 FRB(Federal Reserve Board, 米連邦準備制度理事会)

米国ではFRB(Federal Reserve Board, 米連邦準備制度理事会)がFOMC(Federal Open Market Committee, 米連邦公開市場委員会)において金融政策や政策金利を決定します。FOMCの決定事項は株や為替の市場に重大な影響を与えることもあり、大きく注目されます。

米連邦準備制度理事会

英国 BOE(Bank of England・英国中央銀行)

英国の中央銀行は BOE(Bank of England, 英国中央銀行)が、金融政策委員会(Monetary Policy Committee; MPC)で金融政策や政策金利を決定します。ポンドの発券銀行でもあり、BOEによる金融政策がポンドの動きに影響を与えることがあります。

英国中央銀行

ユーロ圏 ECB(European Central Bank・欧州中央銀行)

ユーロ圏の中央銀行は ECB(European Central Bank, 欧州中央銀行)です。本部はドイツのフランクフルトにあり、ECBが決定した金融政策に従って、ユーロ圏内各国の中央銀行が公開市場操作等で自国の金融市場調節を行います。ユーロ相場がECBの金融政策発表を受けて変動することもあり、米国のFRBと同様に注目度が高くなっています。

欧州中央銀行

日、英、米は政策金利のほかにココもチェック!

金融政策は中央銀行の委員による多数決で決定されます

たいていの場合、金融政策は中央銀行の委員による多数決で決定されます。日本、英国、米国は票数の内訳も公表されるのですが、この内訳も為替相場に大きな影響を与えることがあります。

例えば、英国では2007年6月に政策金利水準を据え置くことを決定したものの、反対票(利上げを主張)が4票と賛成票の5票に1票差にまで迫ったことで、次回は利上げが実施されるだろうとの観測が台頭しました。その結果、次回の金融政策決定会合を待たずに、利上げを見込んだポンド買いによってポンド円相場が大きく上昇しました。

このように、政策金利の他に金融政策決定会合における賛成票と反対票の内訳も注目材料となることがあります。

シェアする