米国との貿易問題
2月1日にトランプ大統領はカナダとメキシコに25%、中国に10%の関税発動に署名した。3日にはペソやカナダドルが売られリスクオフの流れから日経平均も1100円超の下落となった。しかし、トランプ大統領とシェインバウム大統領の電話協議で関税の発動は3月1日に延期された。メキシコが国境警備を強化することで延期が決定した。
米国はあらたに鉄鋼とアルミニウムへの関税を3月12日に発動する予定。エブラルド・メキシコ経済相は米国からの鉄鋼の輸入量は米国への輸出量を上回るとし関税措置は正当化されないと反発した。
20日にエブラルド経済相はラトニック米商務長官と会談し、建設的な対話が始まったと述べている。
メキシコはトランプ大統領に初動ではうまく対処し、シェインバウム大統領の手腕は評価されている。ただ関税引き延ばしはメキシコにとって一時的な勝利で今後は移民と治安分野で成果を出せるかどうかにかかっており楽観は禁物だと思われる。
メキシコの金融政策
2月6日の会合でメキシコ中銀は政策金利を0.5%引き下げ9.5%とした。ここまで0.25%の利下げを続けてきたが今回は0.5%と大幅な利下げとなった。ただ決定は全会一致ではなくヒース副総裁が0.25%の利下げを主張した。
声明ではインフレ環境により利下げ継続が可能となっており、「同程度」の利下げを実施する可能性があると述べた。
2月19日にメキシコ中銀は2025年の成長見通しを1.2%から0.6%に引き下げた。国内外に不確実性の中で経済の減速が加速する可能性もあり最悪-0.2%の予想もでている。
物価に関して2025年第4四半期の前年比を3.0%から3.3%に引上げ目標の3.0%に低下する時期が遅れるとの見通しを示した。しかし物価上昇が鈍化する中で利下げ継続が可能とした。
20日にメキシコ中銀は2月会合の議事要旨を発表した。会合での0.5%の利下げはインフレが落ち着いてきたことと、GDPが小幅にマイナスになったことが材料になった。ほとんどの理事が景気に懸念を表明。メキシコを取り巻く環境は不透明感が高く、特にトランプ政権の政策の影響を受ける可能性があり、このことが成長の鈍化やインフレ率の下落圧力につながるとの警戒感を示した。
これらを考慮すると3月27日の次回会合でも0.5%の引き下げの可能性がある。
メキシコペソの予想
2月のドルペソは3日に関税発動の報道で21.28ペソ付近まで上昇した。しかしそこが高値となり関税発動延期もありすぐに20ペソ台前半に下落した。
その後20.70ペソ付近までドルが上昇する局面もあったが、20.18ペソ付近まで下落し執筆時点(24日)は20.35ペソ付近で推移している。米国との貿易摩擦は継続中だが、当面シェインバウム大統領の手腕を評価してペソは比較的落ち着いている。とはいえメキシコ経済は24年10~12月期はGDPが0.6%減少と3年ぶりのマイナス成長となっており、これに対して中銀は利下げ継続でペソが売られやすい状況は続いている。
20ペソが重要なサポートとなっており、ここが維持されれば20~21ペソのレンジ継続と思われる。一方で貿易問題の進展や、ドル安の流れなどペソにとって追い風となる場合は20ペソ下抜けできれば200日移動平均線が位置する19.50ペソ付近への下落もありうると思われる。
ペソ円は2月3日に一時7.27円付近まで下落し、その後7.64円付近まで反発したが、ドル円が149円台に下落したことで7.29円付近まで下落している。
7.27円付近が昨年10月以降の安値で重要なサポートレベルになっている。ここが下抜けすると昨年9月安値7.18円が次のポイントになる。ここが下抜けする場合は7円が長期的にも重要なサポートとなる。
一方で7.47円に25日移動平均線(EMA)、7.55円に75日移動平均線、一目均衡表の雲が位置しレジスタンスになっている。 7.27円が維持できれば7.27~7.55円のレンジを予想する。
【メキシコペソ/円 日足】
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株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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