目次
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
ドル円相場の動向
過去1-2週間は円高方向を積極的にテストする展開が続いた。日本の金融政策について「ギアシフト」という表現が使われ、日本のインフレ状況が依然として厳しいことから、さらなる利上げが必要との見方が強まっている。
先週、日銀の植田総裁がJGB(日本国債)の金利が急騰した場合にJGBを買い支えると発言。この発言を受けて市場は驚き、ショートカバー(空売りポジションの買い戻し)が発生した。この発言はYCC(イールドカーブ・コントロール)解除時と同様の内容であり、特に新しい方針ではないものの、市場は敏感に反応した。
最近の植田総裁の発言は、円安方向を示唆するものが増加している。ドル円相場が158円近辺から140円台に推移したことで、植田総裁のスタンスも変化しつつある可能性がある。
ドル円下落の具体的な要因は
日本の利上げ期待だけでなく、米国の複数の経済指標が予想を下回ったことも大きく影響している。米国の小売売上高が市場予想を大きく下回る結果となった。小売大手ウォールマートの決算自体は悪くなかったものの、将来の見通しが非常に悪く、消費の減速懸念が強まった。
米サービス業PMI(購買担当者景気指数)の悪化を受けてドルが急落し、ドル円は148円後半に一気に下落した。相場は148円台を何度も試し、この過程で新型コロナウイルスの新たな変異株発生の懸念も一時的に影響した。
米国の著名エコノミストからは、アメリカの民間セクターはすでにリセッション(景気後退)に入っているとの指摘もある。
ドル円相場のテクニカル的な分析
148.65円が昨年12月の安値として重要なサポートラインとなっている。このサポートを割り込む動きがあったが、下げきれずにショートカバーで上昇する展開が続いている。
一方で150円以上になると売りが入り押し戻されるというパターンが続いており、レンジ相場の様相を呈している。チャート分析からは、このサポートを下抜ける可能性が高いとの見方が示されている。
米テクノロジー関連銘柄の状況と分析
NVIDIAの決算自体は市場予想を上回る良好な内容だったが、グロスマージン(粗利益率)がやや低下している。中国ディープシークショックの影響が依然として残っており、NVIDIAの高性能チップを「是が非でも買わなければならない」という状況ではなくなりつつある。
決算発表後、NVIDIA株は120ドル台まで下落し、半導体指数(SOX指数)は6%の大幅下落となった。AI関連の他の銘柄も軒並み不振で、デル、クラウドストライク、台湾セミコンダクターなど多くの関連銘柄が下落している。
トランプ銘柄として注目されていたテスラは、トランプ氏米大統領選当選で約280ドルから489ドルまで急騰(約75%上昇)した後、現在は約200ドル(約40%)下落している。イーロン・マスク氏のトランプ政権内での影響力は依然として強いものの、株価はバブル的な買われ過ぎの反動で調整局面に入っている。
デジタル資産のビットコインも大きく調整しており、トランプ関連銘柄全般に調整圧力がかかっている状況。
今後の市場見通しと歴史的教訓
AIの時代が来ることは間違いないが、2000年のドットコムバブル崩壊のように過度な期待による調整が厳しくなる可能性がある。2000年代初頭もインターネット時代の到来は明らかだったが、ナスダックは最高値から約80%下落した歴史がある。
テクノロジーの将来性と現在の投資価値評価は区別して考える必要がある。マイクロソフトのAIデータセンターリース解約のニュースは、AI投資の現実的な収益性に関する重要なシグナルとなっていると感じる。
サム・アルトマン氏(OpenAI)が孫正義氏(ソフトバンク)と提携したのも、マイクロソフトのAIへのリソース配分見直しが背景にある可能性がある。
トランプ氏の政治的リスク要因
トランプ大統領の関税政策に関する発言が錯綜している(4月2日実施から3月4日実施への変更など)。発言の一貫性のなさに対する懸念も市場参加者の間で広がっている。
引き続き突然の政策変更のリスクがあり、市場の不安定要因となっている。
短期的な注目イベント
月末のポートフォリオリバランスではドル円買いの可能性があるという見方が出ている。3月5日の日銀内田副総裁のコメントが重要なポイントとなる。
その時点での円相場水準によって発言内容が左右される可能性がある。円高が進んでいれば、円高へのブレーキをかけるような発言をする可能性が高い。
為替市場のテクニカル分析見通し
全体的に円高方向のモメンタム(勢い)が強まっている。特にユーロ円は155円あたりでヘッドアンドショルダー(天井形成を示す逆三尊)のチャートパターン形成の可能性がある。
このパターンが完成すると、理論上のターゲットは約20円下落した135円程度となる可能性がある。相場の転換点に差し掛かっている可能性が高く、今後の動向に警戒が必要な相場環境となっている。
結論
全体として円高方向への圧力が強まっている中、日銀の姿勢変化の兆しと米国経済の減速懸念が重なり、為替市場は不安定な状況が続いている。テクノロジー株、特にAI関連銘柄は過度な期待の反動で調整局面に入っており、ドットコムバブル崩壊の教訓を踏まえた慎重な見方が広がっている。
今後の日銀関係者の発言やトランプ政権の政策動向、そして技術的なチャートパターンの完成が市場の方向性を決める重要な要素となるだろう。特にユーロ円の動向には注意が必要で、155円を下回ると135円を目指す大きな円高の流れが形成される可能性がある。
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慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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