避けられないドル高
動画配信期間
2024/12/5~
概要
ふくおかフィナンシャルグループのチーフ・ストラテジストの佐々木融氏が登壇。
2024年は波乱に満ちた1年となり、市場や経済は変化を遂げましたが、2025年のマーケットはどうなるのか!?
外為どっとコム総合研究所の神田調査部長とドル円を中心とした為替相場の見通しや、金融・経済の展望を解説します。
セミナー内容のまとめ・抜粋
【12月の金融政策】FOMC利下げ見送りで円安加速も
2023年12月のFOMCでは市場が織り込む利下げの可能性は低く、日銀も利上げを見送る見通しです。市場は7割程度の確率で利下げを織り込んでいますが、米経済の底堅さを背景に、FRBは慎重な姿勢を維持する見込みです。パウエルFRB議長も米経済は予想以上に強いとの見方を示しており、このシナリオ通りであれば、ドル円は155円まで上昇する可能性があります。また、日銀については一部で利上げ観測もありましたが、ドル円の上値が重い状況や政治的な不確実性から、年内の利上げは見送られる可能性が高まっています。
【2025年の日銀政策】インフレ圧力で年2回の利上げも
2025年は前半と後半にそれぞれ1回の利上げが予想され、政策金利は0.75%程度まで上昇する見通しです。特に注目すべきは、予想以上のインフレシナリオの可能性です。深刻な人手不足を背景とした賃金上昇圧力により、企業は価格転嫁を余儀なくされており、インフレ率が予想以上に上昇する可能性が指摘されています。
しかし、仮に利上げを実施しても、インフレ率の上昇スピードが金利の上昇スピードを上回るため、実質金利のマイナス幅はむしろ拡大する可能性があります。例えば、インフレ率が3%になり、政策金利が0.75%になったとしても、実質金利のマイナス幅は現在より拡大することになります。これは円安要因として働く可能性が高いと分析されています。
【米国経済2025】トランプ政権下でも経済優位性は継続
アメリカ経済は「一人勝ち」状態が続いており、その優位性は2025年も継続する見通しです。特に注目されるのは、トランプ次期政権の経済政策です。財務長官としてスコット・ベッセント氏の起用が示唆されていることから、極端な保護主義的政策は回避される可能性が高いとされています。ベッセント氏は関税引き上げに否定的な立場で知られており、むしろ財政赤字削減と規制緩和を通じた民間主導の経済成長を重視する姿勢を示しています。
また、アメリカのIT関連企業の競争力は依然として強く、株式市場への好影響も継続する見込みです。米国家計の金融資産の約4割が株式であり、株価上昇による資産効果も個人消費を下支えする要因となっています。
【2025年為替相場】ドル円170円到達の可能性を解説
2025年のドル円相場は170円まで上昇する可能性があります。この予想の背景には、複数の構造的要因があります。第一に、日本の実質金利が継続的なマイナス状態にあること、第二に、アメリカ経済の構造的な強さ、第三に、日本の円安要因が不変であることが挙げられます。
特に注目すべきは、過去4年間にわたって円が主要通貨の中で最も弱い通貨となっている点です。アメリカ経済の一人勝ち状態が加速する中、この傾向は今後も継続する可能性が高いと分析されています。
【日本経済の課題】少子高齢化と対外投資流出が円安圧力に
日本経済は深刻な構造的問題に直面しています。人口動態を見ると、20代の人口は60代の8割、10代の人口は50代の6割、10歳未満は40代の半分しかおらず、労働力不足は今後さらに深刻化する見通しです。
また、対外直接投資の継続も大きな課題となっています。2023年9月までのデータでは、対外直接投資は過去最高を更新する勢いです。これに伴い、かつては黒字だった電気機器の貿易収支も赤字に転落しており、日本の貿易構造にも大きな変化が生じています。
さらに、国債問題も深刻です。日銀のバランスシートは大きく拡大しており、政策金利の引き上げは多額の利払い費用を発生させる可能性があります。これにより、金融政策による円安抑制が困難な状況が続いています。
【円安対策】国内投資促進と移民政策が鍵に
円安対策として、金利政策による短期的な解決は難しい状況です。中長期的な対策としては、以下の3点が重要とされています:
1. 国内投資の促進:海外への投資流出を抑制し、国内への投資を促進する政策の実施
2. 積極的な移民政策:深刻化する人手不足に対応するための外国人材の受け入れ
3. 産業構造の改革:国際競争力の強化と付加価値の高い産業の育成
特に、閉鎖的な労働市場が日本の競争力を弱めているという指摘もあり、外国人材の積極的な受け入れによる労働市場の活性化が求められています。
まとめ:2025年の日本経済展望
2025年に向けて、円安基調は当面継続する見通しです。日本経済の構造的な問題により、短期的な解決は困難であり、アメリカ経済の優位性も継続する見込みです。 特に、日本の金融政策は国債問題により制約を受けており、金利政策による円安是正は困難な状況です。また、少子高齢化による労働力不足や対外投資の流出など、構造的な問題も円安圧力となっています。
円安から脱却するためには、金融政策だけでなく、経済構造全体にわたる抜本的な改革が必要とされています。特に、国内投資の促進と人材確保が重要な課題となっています。長期的には、移民政策の見直しや産業構造の改革など、より包括的な対策が求められています。
※上記の見通しは、2024年12月時点の分析に基づいています。今後の政策動向や世界経済の変化により、予測が変更される可能性もあることに留意が必要です。また、地政学的リスクや予期せぬ経済ショックなど、様々な不確実性要因も存在することを考慮する必要があります。
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外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。
佐々木 融 (ささき・とおる)氏
1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。
2010年にマネージングディレクター就任、2015年から2023年11月まで同行市場調査本部長。23年12月から現職。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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