(画像=PIXTA)
以下の取材記事は金融ライターK氏が執筆したものです。その内容について当社が保証するものではありません。
「日経平均株価」は日本の株式市場を代表する指数のひとつです。過去数十年以上、日本経済の動向や景気の状態を示す指標として、投資家のみならず、多くの人たちに利用されてきました。2024年には史上初となる4万円超えで最高値を更新するなど、「日経平均株価」は、たびたびニュースで取り上げられています。日経平均株価の仕組みや特徴を詳しく知ることで、投資においてどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は日経平均株価を投資に生かす方法について考えてみました。
日経平均株価とは
日経平均株価は、日本を代表する大手新聞社のひとつである日本経済新聞社が、東京プライム市場の中から、市場流動性や業種などのバランスを考慮して選定した225銘柄の株価を使って算出した株価指数です。「日経225」とも呼ばれています。もともとは東京証券取引所が1950年に算出を始めました。日経平均株価と連動する金融商品も多く、その動向は多くの投資家から関心を集めています。日本経済を代表するような大手企業が多く含まれていることから、株式市場や日本経済の行方を予測するうえで重要な指標とされています。
(※1)株価指数としての連続性を持たせるために、計数導入時点の構成銘柄のみなし額面を基準に、調整後の株価が原則として同じ値となるように設定されており、原則は1となる
日経平均株価の変動要因
そもそも企業の株価は基本的に需給バランスで決まります。買いたい人(需要)が、売りたい人(供給)よりも多くなれば、株価は上昇します。逆に、買いたい人が、売りたい人よりも少なければ、株価は下がります。
このような株式相場の需給関係を変化させる要因は以下のようなものになります。
1)企業価値
業績好調の企業の株価は上昇します。販売商品や提供するサービスの人気が高まり、売れ行きが伸びれば株価は上昇します。逆に社員が事件に巻き込まれたり、販売商品が事故の原因になれば、株価は下落するでしょう。このように企業価値に影響するようなことは、株価変動の直接的な要因です。日経平均株価は上場225社の「平均株価」ですから、構成銘柄の株価変動で、日経平均株価は変動します。
2)マクロ環境
もうひとつは政治・経済・社会といった企業を取り巻くマクロ環境です。政権交代や政策実施、法改正など政治動向や地域紛争やテロのような国際情勢。天変地異のような自然災害や寒波や熱波のような気候変動などは株価を動かす要因です。
中でも経済的な環境は重要です。景気や物価、金利や為替などの動向は、株式市場全体に大きな影響を与えます。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の状況を示す経済成長率、消費者物価指数、失業率、インフレ率などの経済指標は、日経平均株価の動きを予測するうえで、重要な判断材料になります。
米ドル/円相場と日経平均株価の関係
為替レートの変化と日経平均株価の関係を考えてみます。「円安」になると日本製品は海外で高く売れるので、輸出企業にとって大きなメリットがあります。また、海外からの観光客が増えるので、ホテルや飲食店などサービス業には追い風となります。逆に円高になると原油やガスを輸入するエネルギー産業などでは、原材料費が安くなるので経費が圧縮できます。
一般的に日本は輸出企業が多いので、「円安になると日経平均株価は上昇し、円高になると下落する」と言われています。これは本当でしょうか。2014年4月の最安値を起点に、その後10年間の日経平均株価の動きと、米ドル/円のレートの動きを比較してみました。
確かに日経平均株価の直近10年間の「山」と「谷」を拾って、為替相場のレートと突合してみると、「円安(ドル高)になると株価は上昇する」という説明に合致するようです。
金利と日経平均株価
一般的に「金利が上がると株価は下がり、金利が下がると株価は上がる」とされています。金利が上昇すると銀行からの借入金の利息の支払いが増えて、企業収益を圧迫したり、さらなる借入を控えたりするようになります。その結果、業績が悪化して株価下落の可能性は高まります。逆に金利が低下すると、銀行への利息の支払いが減るほか、資金調達は容易になり、企業活動が活発になると、業績が向上して株価上昇の可能性は高まります。
投資の観点からも、金利と日経平均株価の関係をみてみましょう。金利上昇は銀行預金の金利を上昇させます。金利上昇は株価下落要因なので、株式投資の利回りと銀行預金に預けた場合の利回りの差分はどんどん狭まります。そうなると、リスクを取って株式投資に回していた資金を、定期預金や国債のような他の金融商品に切り替える人が増えてきます。つまり、相対的に株式の人気が下がるので、株価は低下傾向になります。
主要な経済指標で考えてみましょう。経済成長率の上昇は、企業の経済活動が活発化した結果なので、日経平均株価上昇の可能性を示唆しています。失業率の低下は企業が雇用を増やしたことの表れなので、日経平均株価上昇のサインとなるでしょう。またインフレ率の上昇は金利上昇につながるので、日経平均株価には逆風になる可能性があります。経済指標がどのような結果になると好材料になるのか、悪材料になるのかを知っておくと、日経平均株価の動きは予測しやすくなります。
日経平均株価のアノマリー
「アノマリー(anomaly)」とは日本語で「例外」という意味ですが、金融市場には価格決定メカニズムでは説明できないけれども、経験則として広く認識されている価格の動きや事象があります。いくつか日経平均株価に関するアノマリーをご紹介しましょう。
1)選挙は買い
今回の総選挙で話題となったのは「選挙は買い」というアノマリーです。過去17回行われた総選挙で、解散日の前営業日から投開票日の前営業日までの日経平均株価の騰落率が、すべて上昇していたため、「選挙は買い」というアノマリーはかなり知られています。ところが今回の総選挙では、1,023円62銭安で約2.6%の下落となり、「『選挙は買い』というアノマリーが50年ぶりに崩れた」と新聞やテレビで大きく報道されました。しかし、選挙後の3営業日で日経平均株価は反発・続伸、終値で3万9千円を超えて下落分を取り戻しています。
2)辰巳天井
2024年は辰年です。辰年の相場には「辰巳(たつみ)天井」という格言があります。それは株価が「卯年から上昇し始め、辰年から巳年にかけて『天井』を付ける」という意味です。確かに卯年の2023年から日経平均株価は上昇し始め、辰年の2024年3月に史上初めて4万円を超えました。その後も株価は3万円台で推移し、巳年の2025年を目前にしています。まず辰年相場は本当に上昇しているのかをみてみましょう。
ご覧の通り、2000年以外はすべて上昇しています。2024年は10月31日までの10カ月間ですが、年末は株価が上昇する傾向があるので、おそらく2024年も上昇相場で終わるので、5/6という確率で上昇しています。
実際にはどのような経済状況だったのでしょうか。卯年と巳年も含めた3年間で簡単にまとめてみました。
さて、辰年となった2024年は日経平均株価が大きく値を上げています。過去60年間のアノマリーに従えば、2025年(巳年)はさらに上昇する可能性が高いのですが、ただ、アノマリーはあくまでも「経験則」です。金融市場の価格決定メカニズムから導きだされた数値ではありませんので、これを実際に判断材料として使うかどうかは慎重に考えましょう。
3)年末は株高
「11月〜12月にかけて日経平均株価は上昇する傾向を示す」というアノマリーもあります。「年末商戦に向けた景気拡大の影響だ」とか、「11月に決算を終えた欧米のヘッジファンドが年末に向けて買い戻すからだ」とかいわれていますが、本当のところはわかりません。ただ、確かに2023年も年末にかけて緩やかに上昇しました。2022年、2021年は横ばいのような結果でしたが、2020年は上昇しています。
日経平均株価への投資方法
さて、今回は日経平均株価についていろいろと考えてみました。日経平均株価をベンチマークにした金融商品はたくさんありますから、実際に投資してみることが可能です。日経平均株価に連動する投資信託やETF(上場投信)だけでなく、CFDでもできます。
投資信託やETFではなく、CFDで日経平均株価に投資する最大のメリットは、「売り」からでも取引が開始できることでしょう。つまり、日経平均株価が下落傾向にあるときでも、積極的に利益が狙えるというわけです。また、CFDは差金決済ですので、レバレッジを効かせた投資(※5)が可能で、少額からでもスタートできます。日経平均株価の動きに関する情報はご紹介したように、個別株に関する情報よりもかなり豊富でわかりやすく、株式投資の入り口としてはわかりやすいと思います。株式投資に興味を持った方は、まず少額投資で始めてみてはどうでしょうか。
(※5)外為どっとコムのCFD「日経N225」はレバレッジ10倍まで。
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ライターK
大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。