総括
FX「利上げと円高で日本は持ちこたえられるか」
ドル円=146-151、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.03-1.08
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨9位(10位)、株価7位(7位)、利上げと円高で日本は持ちこたえられるか」
(11月も7月同様に円高。12月は?)
日々様々な、刺激的な、かつ強烈なニュースが飛び込んでくるが、ドル円は例年通り、また7月の円高に続き11月は円高に終わった。トランプ・トレードでドルは上昇し円以外の通貨に対し強かったが円には例年通り敗れた。12月も円高の傾向が強い。
(石破首相、経済対策、現状無し)
時事通信の「首相動静」という書き込みを見ているが、経済閣僚との面談は滅多に見られない。為替は財務省に、金融政策は日銀に任せているようだ。何か混乱があるまでは現状維持なのだろう。
その日銀は従来「為替政策」は担当外としていたが、このところの日銀当局者の発言ではやたらと「円安」を懸念するものが多い。円安阻止のための利上げか。
(利上げと円高で日本は持ちこたえられるのか)
7月の円買い介入と日銀の利上げ以降、株価が伸びない、ドル円も160円には戻らない。歴史的には「株下げ、円高」では景気回復がなかったの心配だ。1985年から2011年の26年間、あれだけ円高株安デフレに苦しんでいたのに、またその道へ向かっているようだ。ここ数年の物価高に不満を持つ声が多くなったからだろう。ただ連合会長は、物価高を越える賃金上昇を主張している。
7-9月の円高株安で企業収益、機関投資家の運用は落ち込んでいる。日本の経済成長見通しも下方修正された。インフレ上昇、といっても、他国がうらやむ2%台(基調は1%台)だが、そこに重点を置いて経済成長を止めるなら、賃金上昇も止まり、物価が下がっても可処分所得が減り、購買力は縮小する。それでいのだろうか。失われた26年が好きなのだろうか。
(貿易需給は)
11月上旬の貿易統計は1094.5億円の黒字となった。前年同期は4894.4億円の赤字だったので約6000億円分、赤字から黒字へ転換した。原油価格の緩やかな下落や原発再稼働が影響しているか、もうしばらく様子を見たい。2011年の原発停止による貿易赤字化での景気回復がここで転換するかもしれない。
(速水総裁のそごう破たん時の利上げ)
日本の大手企業も苦境に立つところが出てきた。あの速水日銀総裁のそごう破たんにもかかわらず利上げをした時のことを思い出した。到底、経済は耐えられず日銀は6か月後、利下げに転じた。
*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)5位(6位)、パウエル議長発言。雇用は回復するか」
(トランプトレードで11月2位となったドル)
11月のドルは終盤、円に抜かれたが強く2位となった。11月の円は最強だったが、日経平均は下落した。一方、米国はドルが強くても弱くても株は強いことが多い。これが米国の強さかもしれない。ただ11月最終週は、多くの主要通貨に対して弱くそれを引き摺っての12月入りとなる。
(パウエルFRB議長発言あり)
パウエル議長が「利下げを急ぐことはない」と発言してから、トランプディールもあり米金利上昇、ドルは強含んできた。ただ11月最終週は米金利が低下、ドルも下落してきた。
ミネアポリス連銀カシュカリ総裁が「12月の利下げは依然として合理的な検討事項だ」と発言したこともある。先週発表のFOMC議事要旨では、一部の参加者は、「労働市場が軟化するか経済活動が停滞すれば緩和が加速する可能性がある」と述べている。フェッドウオッチでが利下げ派が据え置き派をやや上回っている。その中でパウエル議長の発言も今週は注目したい。
(10月悪化した雇用者数にも注目)
10月雇用統計では非農業部門雇用者数がハリケーンやボーイング社のストライキで大幅減少したが、それがどこまで戻すのが焦点。
(トランプ氏の関税発言に変化)
メキシコ、カナダ、中国への関税引き上げに続き、週末は「BRICS諸国にドルを使わず、BRICSの新通貨を作れば関税を100%に引き上げる」と発言している。ただトランプ氏の関税引き上げ発言は、貿易不均衡是正のためではなく、メキシコ、カナダに米国への麻薬、不法移民防止という条件が付いており、それが達成されれば引き上げはないようだ。以前ほどの何がなんでも関税引き上げの強硬さはない。
日本が原油輸入の関税を引き上げれば日本が苦しむだけのように、米国にもそういう部分が多い。関税引き上げには柔軟性が出てくるだろう。
*ユーロ「通貨5位(7位)、株価6位(6位)DAX)、同情するくらい指標は弱いが、年間では通貨も株も日本より強い」
(11月のユーロは月間最弱)
11月のユーロは弱かった。月間最弱。それでも年間5位は維持。株価(独DAX)指数は年初来17.16%高と日経平均の14.18%高をしのぐ。独10年国債利回りは2.08%と前週の2.26%から低下した。
11月最終週は3位でドルの9位を上回り対ドルで週足陽線。好材料はないが年間でユーロが円より強いのは貿易黒字を維持しているからだ。
(経済指標はことごとく弱く、ストライキあり)
なかなか強い経済指標を目にすることはない。ユーロ圏11月消費者信頼感指数、11月製造業・サービス業PMI、独では10月小売売上、11月雇用統計、11月独IFO指数とことごとく弱い。独最大の産業別労働組合IGメタルはフォルクスワーゲンの労働者が今週にも全国でストライキを実施する可能性があるとの見通しを示した。
(仏の格付けは据え置き)
S&Pは、仏の長期国債の格付けを「AA-」に据え置いた。 見通しも安定的で変更なしとした。5月、財政赤字拡大を理由にフランスの格付けを「AA」から引き下げ、見通しはネガティブから安定的に修正した。
大規模財政赤字を削減できない場合や、経済成長が長期間当社の予測を下回る場合、格付けを引き下げる可能性があると警告している。一方で「基本的には、当局は来年、高水準の財政赤字縮小に向けた中期計画の一環として国内総生産(GDP)比1%弱の財政再建を進めると予想している」と指摘した。
(12月12日のECB理事会では0.25%利下げか)
12月12日のECB理事会での0.25%の利下げは完全に織り込む一方、0.5%利下げの可能性は約20%に低下している。 11月にはエネルギー価格の影響でインフレ率が目標である2%を上回り2.3%に達し、サービス部門のインフレも高止まりしたが、ユーロ圏経済の減速の兆候を懸念し0.25%の利下げに踏み込むものと見られている。
*ポンド「通貨3位(3位)、株価15位(16位)、12月政策金利据え置き予想でポンド反発」
(ポンドは年初来2位へ戻す)
トランプトレードでドル高・ユーロ安が進んだ11月であったが、終盤のポンドは盛り返した。年間でもポンドはドルと同率だが2位に浮上。11月の10年国債利回りは4.43%から4.24%へ低下。
FT株価指数は年初来7.16%高で19市場中15位で強くはない。
(12月19日に年内最後の政策金利決定)
英国は インフレ再燃への懸念から英中銀は政策金利の据え置きを決めると広く見込まれている。
ロンバルデリ副総裁は、インフレ率が英中銀の予想より低くなるのではなく、高くなるリスクをより懸念していると述べ、利下げは緩やかなペースで行うべきとの見解を示した。「インフレの下振れリスクと上振れリスクの可能性はおおむね均衡している」との見方を示した。 「しかし、現時点では上振れリスクが現実化した場合の結果をより懸念している。必要とされる政策対応のコストが大きいからだ」と説明した。賃金の伸びが3.5-4.0%程度に減速し、インフレ率が目標の2%ではなく3%程度で安定するというシナリオが企業や消費者の予想として定着すれば、対応するコストがさらに大きくなるだろうと述べた。
一部のエコノミストは、英国のインフレ率が2025年初頭に3%まで上昇する可能性があると予想している。
一方、ラムスデン副総裁は、インフレ率が予測を下回る可能性があり、より速いペースでの利下げが必要になり得るとの見方を示した。
(英中銀の警告)
英中銀は11月29日、貿易障壁の強化は世界経済の成長に影響を及ぼし、インフレの不確実性を高め、金融市場の不安定化を引き起こす可能性があると警告した。
(財務相が追加増税否定)
リーブス財務相は、労働党政権が提示した初の予算案に盛り込まれた以外の増税は必要ないと明言した。国民保険料の企業負担率引き上げによる250億ポンドの実質増税に驚いた企業の不安を払しょくする狙いがあると見られる。予算案は「われわれが前に進む上で必要な安定と土台」を提供してくれたと強調した一方、企業はこの先の税率については確実性を手に入れることができると説明した。
*豪ドル「通貨6位(5位)、株価10位(11位)、豪ドルは週間、月間、年間で6位。コアCPIが高い」
(豪ドルは真ん中)
豪ドルは週間、11月月間、年初来でいずれも12通貨中6位と極めて安定している。10年債国債利回りはほぼ米国10年債とパラレルに動き、若干豪のほうが金利が高い。豪全株指数は年初来11.11%。
(10月消費者物価のコアが高い)
10月の消費者物価は前年比2.1%上昇と、伸び率は前月から横ばいで3年ぶりの低水準にとどまった。予想の2.3%を下回った。
一方、コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は、前年比3.5%上昇と前月の3.2%上昇から加速し、物価上昇圧力の根強さを示した。RBAが目標とする2-3%からの乖離が拡大し、利下げのハードルが上がった。 市場は中銀の利下げ開始時期について、来年2月じゃ5月で意見が分かれている。
(RBA、金融政策判断変えず)
ブロックRBA総裁は、コアインフレ率は短期的に利下げを許容するには高過ぎるとの見方を示した。当面利下げはできないと述べ、12月利下げの可能性を事実上排除した。3Qのコアインフレ率が3.5%と中銀の目標である2-3%を上回ったとし、目標達成を確信できるまで制約的政策を維持する必要があると指摘した。 「現状、基調的なインフレ率はなお高すぎるため、短期的に政策金利の引き下げを検討することはできない」と指摘。「インフレ率を持続的に2-3%の目標レンジ内に戻すにはまだ時間がかかる」とし、11月の政策声明で示した予測で目標への持続的回帰は2026年と想定していると述べた。
総裁は利下げする前にインフレが目標レンジに向かっていることを確認する必要があると指摘。インフレ率が目標レンジ内に入る必要はないが、目標に向かう必要があると述べた。
(今週は指標多数)
今週は11月TDMIインフレ指数、10月住宅建設許可、10月小売売上高、11月求人広告、3Q経常収支、3Q・GDP、10月貿易収支の発表がある
(米国は中国の追加関税を示唆)
トランプ次期米大統領は、就任初日に、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと表明した。中国について、メキシコから米国への違法薬物の流入阻止に十分な措置を講じていないとし、「それが止まるまで、中国からの全ての輸入品に対し、あらゆる追加関税に加えて10%の追加関税を課す」と述べた。米国の対中追加関税で中国の景気減速があれば、豪にも悪影響が出ると予測されている。
*NZドル「通貨10位(9位)、株価11位(10位)、ついに円に抜かれ年間11位へ後退」
(ついに円に抜かれ年間11位へ後退)
11月のNZドルはは月間5位であったが、月間最強の円にはついに円に抜かれ年間で10位に後退した。対ドルでは先週は9週ぶりに陽線となった。11月の10年国債利回りは4.52%から4.49%へ低下した。
株価指数(NZ50)は19市場中11位で年初来11.01%高。
(政策金利は0.5%引き下げ)
NZ中銀は、政策金利を0.5%引き下げ、4.25%とした。ほぼ予想通り。0.75%利下げ予想も少数いた。シルク総裁補は、国内インフレの抑制になお取り組む必要があるため、0.5%より大幅な利下げの必要性は感じなかったと述べた。
3Qのインフレ率は2.2%と、貿易財の価格下落を受けて減速し、中銀の目標の1-3%内に収まった。一方、主に国内の物価上昇圧力である非貿易財のインフレ率は4.9%に高止まりした。
シルク氏は「現時点で金利を中立水準まで戻せば、国内インフレが鈍化しないという、さらなるリスクが生じる」と指摘。また「コアインフレ率が持続的に目標の中間値に戻るようにする必要もある」と述べた。 来年2月の会合については、0.25%利下げと0.5%利下げの両方の議論されるとの見方を示した。
(最近の経済指標)
11月消費者信頼感指数は99.8で前月の91.2から改善、企業信頼感しすっは64.9で前月の65.7から悪化。3Q小売売上は前年比で2.5%減少、前期は3.6%減少。
10月貿易収支は15.44億NZドルの赤字で前月は21.54億ドルの赤字であった。
(トランプの関税政策の影響は)
NZ中銀のチーフエコノミスト、コンウェイ氏は、トランプ次期米大統領の経済政策はインフレに中期的なリスクをもたらす恐れがあると述べた。 コンウェイ氏は 「トランプ氏が何をするかは予測できない。実際に何が実施されるかに反応するのは軽率だ」と述べた。トランプ氏は、来年1月の就任初日に米国の3大貿易相手国のうちメキシコとカナダからの全輸入品目に25%の関税を課し、中国には追加で10%を課すと表明した。実現すれば世界的な貿易戦争につながる可能性があるほか、NZ経済に影響が及ぶ恐れもある。NZは中国貿易に大きく依存している
(雇用悪化で経済も縮小か)
ニュージーランドの求人数は10月に7カ月連続で減少し、失業率上昇の兆候が強まった。求人件数が9月から2,017件、つまり0.1%減少し、235万9,000件になったと発表した。4月以降、求人件数は累計3万6,700件減少した。過去12か月間で求人件数はわずか2回しか増加していない。高金利が経済成長を抑制し、雇用に悪影響を及ぼしているからだ。中銀は8月から金利を引き下げており、先週は0.5%引き下げを行った。規制緩和政策が雇用を押し上げ始めるまでには時間差があることを認めている。
中銀は失業率は2024年第3四半期の4.8%から来年は5.2%まで上昇すると予測した。今年上半期に企業信頼感が落ち込んだため、雇用は圧迫された。
2Qの経済は0.2%縮小し、3Qでさらに縮小すると予測されている。中銀は0.2%の縮小を予測した。
テクニカル分析
*ドル円「11月の下げは健在、月足はカブセ、日足は雲の上限まで下落」
日足、ボリバン2σ下限を下抜くほど急落。雲上は維持。9月30日-11月29日の上昇ラインがサポート。11月27日-29日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、11月18日週の行き詰まり線をきっかけに雲の中に急落。ボリバン上位は維持。9月30日週-11月25日週の上昇ラインがサポート。11月11日週-18日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線下向き。
月足、11月はカブセ線、上ヒゲ長い。ボリバン中位維持。5か月線が20か月線を下抜くか。10月-11月の上昇ラインがサポート。7月-11月の下降ラインが上値抵抗。
年足、3年連続陽線。今年は介入で一時陰転するも再び陽転。ただここ3年は上ヒゲが長い=介入=ので3σ上限近くから下落。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「ボリバン下限から反発し中位近くまで上昇」
日足、ボリバン下限から反発し中位近くまで上昇。11月27日-29日の上昇ラインがサポート。11月6日-29日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、4週ぶり陽線。ボリバン3σ下限から反発。雲下。11月18日週-25日週の上昇ラインがサポート。11月11日週-25日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、10月は4か月ぶり陰線。11はさらに下落し雲の下、ただボリバン3σ下限から下ヒゲ長い。10月-11月の下降ラインが上値抵抗。5か月、20か月線下向き。
年足、24年は再び陰転。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「4週連続週足陰線、日足は2σ下限下抜く」
日足、雲下へ、2σ下限を下抜く。9月16日-11月29日の上昇ラインがサポート。11月28日-29日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、4週連続陰線、雲下へ。9月16日週-11月25日週の上昇ラインがサポート。11月18日週-25日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、10月は4か月ぶり陽線も11月は陰線。9月-11月の上昇ラインがサポート。7月-11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向き、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年も上ヒゲがかなり長くなったがここまでかろうじて陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを一時上抜く。
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