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イールドカーブと株価指数の関係

 

(画像=PIXTA)

 国が発行する「国債」の利回りとその残存期間の関係を示す「イールドカーブ」は、将来の金利動向や経済の先行きを示す重要な指標です。日本銀行は2024年3月まで「イールドカーブ」をコントロールする金融政策を実施してきました。テレビニュースや新聞報道でご存知の方も多いと思います。この記事では、イールドカーブの形状、株価指数との関係性、どうすれば投資家がイールドカーブという指標を十分に活用できるのかなど、詳しく解説してみたいと思います。

そもそもイールドカーブとは?

 イールド(Yield)という英語は「利回り(金利)」という意味です。イールドカーブとは、残存期間の異なる債券の利回りをグラフで表したもので、縦軸に利回り(通常は債券の利率)、横軸に債券の残存期間を取ります。これにより、短期、中期、長期の利回りがどのように異なるかが一目でわかります。

国債は同時に満期の異なる債券が発行されています。仮にどのようなイールドカーブが描けるのか、異なる残存期間と利回りの架空の国債を設定して、グラフ化してみましょう。

一般的に残存期間が長くなるにつれて、将来の経済状況やインフレ率の予測は難しくなり、リスクが増大するため、残存期間が長い債券の利回りは高くなります。

また、将来の景気がいまよりも良くなると市場参加者が考えている場合は、ローリスク・ローリターンの国債は買わずに、ハイリスク・ハイリターンの株式などに投資しようとするので、国債に対する需要が減るため債券価格が下がり、利回りは上昇します。

景気拡大予想期:長期債の需要減少⇒長期債価格下落⇒長期債の利回り上昇

そのためイールドカーブは図のように右肩上がりになることが多いです。この形状を「順イールド」と呼びます。

逆に、景気低迷を予測する市場参加者が多くなると、リスクの低い国債に投資したほうが安全と考え、国債に対する需要が増えるので、債券価格は上昇、利回りは低下します。

景気縮小予想期:長期債の需要増加⇒長期債価格上昇⇒長期債の利回り低下

このような右肩下がりのイールドカーブを「逆イールド」といいます。逆イールドは、景気後退局面で発生するケースが多く、景気悪化や株価下落の先行指数として注目されています。

金融政策とイールドカーブの関係

 中央銀行が金融政策を変更すると、金利動向が変化するので、イールドカーブの形状も変化します。イールドカーブはその時の短期債や長期債に対する需給の結果を反映しています。つまり、市場参加者の経済予測や金利動向の予測を捉えるうえで重要な指標となります。

たとえば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げと日銀の利上げが最近の大きなテーマになっています。中央銀行が決める政策金利とイールドカーブの間には、どのような関係があるのでしょうか。

中銀の金融政策で変化する短期金利

 中央銀行が景気刺激や景気引き締めのために操作する金利のことを「政策金利」と呼びます。政策金利の変更は即座に「短期金利」に影響を及ぼします。

これに対して「長期金利」は市場の期待や予測で変動します。

 中央銀行の利下げによる景気刺激策が奏功して、長期的に景気が良くなると思われた場合は、債券を購入するよりも、株式などのリスク資産に資金が流入するので、長期国債が売られて長期債の利回りは上昇します。

景気減速予測時の長短金利の動き

 つまり、長期金利が現在よりも上昇するので、イールドカーブは急勾配(スティープ)になります。

逆に中央銀行が利下げしても、景気はそこまで良くならず、長期的に低迷するだろうと思われた場合は、株式などのリスク資産よりも、リスクの少ない国債に投資したほうが安全と考えられ、債券価格が上昇し、債券利回りは下落、つまり長期金利も低下することになります。

日銀のイールドカーブコントロール

 バブル崩壊後、日本のGDP成長率は極めて低水準で推移していました。日銀は景気刺激策として、1999年2月に政策金利を史上最低の0.15%に誘導、当時の日銀総裁が「ゼロでもよい」と発言したことから「ゼロ金利政策」と呼ばれるようになりました。

短期金利がゼロに近づいたことで、金融機関はより多くの資金を、企業や消費者に貸し出すことができるようになりました。しかし、ゼロ金利政策にもかかわらず、当時はデフレ圧力が強かったため、物価下落や消費低迷が続きました。

バブル崩壊で発生した不良債権問題の影響で、リスク回避の姿勢から金融機関の貸し渋りが続き、ゼロ金利政策の効果は限定的でした。

イールドカーブ(1999年4月1日)

           財務省HPからダウンロードしたデータで著者作成

 その後、日銀はさらなる金融緩和を行い、2016年1月に一部の銀行預金に対してもマイナス金利を適用するマイナス金利政策を導入しました。

イールドカーブ(2016年4月1日)

                 財務省HPからダウンロードしたデータで著者作成

 しかし、マイナス金利政策の導入で長期金利が下がったため、10年債や15年債の利回りまでマイナスとなり、金融機関の収益悪化が懸念されました。

その対策として日銀は同年9月、短期でマイナス金利を維持しつつ、長期金利の過度な低下によるイールドカーブのフラット化を抑えるために、10年物国債の利回りを0%程度に維持しようとする「イールドカーブ・コントロール」を導入しました。

 

イールドカーブ(2016年10月1日)

 

                 財務省HPからダウンロードしたデータで著者作成

 イールドカーブ・コントロールのために、日銀は国債の売買を調整しました。長期金利が0%以下になりそうな場合、国債を売却してその利回りを上昇させ、逆に上昇しすぎた場合は国債の買い入れで利回りを抑えました。

導入当初はイールドカーブのフラット化防止が目的でしたが、結果的にこの政策は低金利を長期間維持し、日本の経済活動を支えるためのものになりました。ただ、長期間インフレ率が低水準にとどまったため、目標達成までにはかなり時間がかかりました。

イールドカーブ・コントロール終了と日本の株式市場

 日銀のイールドカーブ・コントロールが解除されたのは、世界経済の状況が変化したからです。

世界経済は新型コロナ禍でサプライチェーンが混乱、物資の供給不足で各国のインフレ率は上昇したのに加えて、景気後退を防ぐため、各国で金融緩和策を実施され、世界的に物価は上昇、インフレ圧力はさらに高まりました。

また、2022年に起きたロシアのウクライナ侵攻で、エネルギーなどの資源価格や食料価格の上昇もインフレ圧力を高める要因となりました。

コロナ禍が過ぎると多くの国々は金融緩和策を終了し、利上げに踏み切りました。しかし、日本は十分な景気回復が見られず、その後もゼロ金利政策を継続したため、他国との金利差は拡大し、相対的に円安が進行しました。

そして、2024年3月、他国に遅れを取りましたが、日本も物価と賃金の上昇を確認し、マイナス金利やイールドカーブ・コントロールなどの金融緩和施策を解除しました。

イールドカーブ(2024年10月8日)

                                                              財務省HPからダウンロードしたデータで著者作成

 日銀のイールドカーブ・コントロールの終了で短期金利は正常化され、長期金利も上昇、景気拡大予想で現れる「順イールド」カーブを形成しました。

日本のイールドカーブが「順イールド」を描いている点は、株式投資の好材料になるでしょう。「順イールド」の形状は、長期金利が短期金利を上回る状態を示しており、将来の経済成長に対する市場の期待を反映しています。つまり、企業業績が上向き、株価や株価指数の上昇が期待できるわけで、株式投資家には有利な状況といえるでしょう。

現在、インフレ上昇を抑えるために、日銀が利上げを検討しています。利上げが実施されると、短期金利が上昇し、イールドカーブが「フラット化」または「逆イールド化」する可能性があります。

「フラットイールド」や「逆イールド」は、景気減速やリセッションのサインとされ、株式市場にはネガティブな影響を与えることがあります。利上げで企業の借入コストが増加し、消費や投資も抑制されるため、企業業績が悪化し、株価下落の可能性が高まります。

日経平均株価がバブル期の最高値3万9098円68銭をつけた1989年12月29日は「逆イールド」でした。

イールドカーブ(1989年12月29日)

                 財務省HPからダウンロードしたデータで著者作成

さて、現在のイールドカーブをどのようにみるかということですが、「順イールド」を好材料としつつも、日銀の金利政策に注意を払うことが重要です。利上げによって短期金利が上昇し、長期金利も上昇するのであれば市場は景気拡大を予想していると判断できます。逆に長期金利が下がって逆イールドを形成するような方向になれば、景気縮小を予想しているとの判断が可能です。

(本文ここまで)

岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。