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ドル/円の11月見通し「米大統領選が最大の焦点に」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 10月の推移
・10月の各市場
・10月のドル/円ポジション動向
・11月の日・米注目イベント
・ドル/円 11月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 10月の推移

10月のドル/円相場は142.957~153.876円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約5.8%上昇(ドル高・円安)した。イランがイスラエルに向けてミサイル攻撃を行った1日には143円台を割り込む場面もあったが、その後は上昇地合いが継続。2日には石破首相が「現在は追加利上げをするような環境にはない」と発言したことなどを受けて146円台へと急伸。米9月雇用統計が予想以上に良好だったことから4日には148円台へと続伸した。その後、150円の節目を前にやや伸び悩んだものの、米9月消費者物価指数(CPI)が予想を上回る伸びとなったことなどからドルは堅調を維持。17日に発表された米9月小売売上高が予想を上回ると8月1日以来の150円台に乗せた。下旬にかけては11月5日の米大統領選でトランプ氏が勝利する可能性が意識され米債売り・ドル買いの動きが強まったほか、27日の衆院選で自民党と公明党の与党が過半数議席を割り込むとの見方から円売りに傾くと、23日には153円台へと上伸した。衆院選で実際に自・公の議席が過半数を割り込むと28日の東京市場で153.88円前後まで上値を伸ばして約3カ月ぶりの高値を付けた。ただ、31日に日銀の植田総裁が早期の追加利上げに否定的な見解を示さなかったことがややタカ派的と受け止められて上げ幅を縮小。152.00円前後で10月の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
143.584 153.876 142.957 152.004


出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

1日
米8月JOLTS求人件数は804.0万件と市場予想(769.3万件)を上回り、3カ月ぶりに増加した。一方、同時に発表された米9月ISM製造業景況指数は47.2と市場予想(47.5)に届かなかった。イランはイスラエルに対する報復としてミサイル攻撃を実施。イスラエル軍は、大多数は迎撃したものの一部は同国中部や南部に着弾したと明らかにした。

3日
米9月ISM非製造業景況指数は54.9と市場予想(51.7)および前月(51.5)を上回った。米景気の底堅さが示されたとの見方から米長期金利が上昇した。

4日
米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が25.4万人増と市場予想(15.0万人増)を大幅に上回り、失業率は予想(4.2%)を下回る4.1%に低下した。さらに、平均時給は前月比+0.4%、前年比+4.0%と市場予想(+0.3%、+3.8%)を上回る伸びとなった。きわめて強い雇用統計と受け止められ、米国の大幅利下げ観測が急速に後退した。

9日
米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月会合の議事録を公表。「大多数の当局者が50bp(0.50%ポイント)の利下げを支持した」ものの、「数名が25bpの利下げを支持した」ことが明らかになった。

10日
米9月CPIは前月比+0.2%、前年比+2.4%といずれも市場予想(+0.1%、+2.3%)を上回る伸びとなった。食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年比+3.3%と予想(+3.2%)を上回った。総合CPIの前年比の伸びは前月(+2.5%)から鈍化したが、コアCPIは前月(+3.2%)から加速した。

17日
米9月小売売上高は前月比+0.4%、自動車を除いた売上高は前月比+0.5%といずれも市場予想(+0.3%、+0.1%)を上回った。国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア売上高(自動車、ガソリン、建材、外食を除く)も前月比+0.7%と市場予想(+0.3%)を大幅に上回った。

28日
27日に投開票された衆議院選挙で自民・公明の与党が過半数議席を獲得できなかったことから政治の混乱が懸念されたほか、混乱によって日銀の追加利上げが困難になるとの見方が広がった。

30日
米7-9月期国内総生産(GDP)・速報値は前期比年率+2.8%と市場予想(+2.9%)には届かず、4-6月期(+3.0%)からやや減速した。ただ、GDPの7割を占める個人消費は前期比年率+3.7%と予想(+3.3%)を大きく上回り、住宅投資の落ち込みや輸入の増加によるGDP押し下げの影響をある程度カバーした。

31日
日銀は予想通りに政策金利を0.25%で据え置いた。その後の会見で植田総裁は、8月以降たびたび使用している「(政策判断に)時間的な余裕がある」との表現について、(市場の混乱や米経済の不確実性など)リスク度合いは低下しており、『時間的余裕』という表現は不要になると考えて今日も使っていない」と説明。追加利上げへの距離感を示す言葉として市場が認識していた「時間的な余裕」を植田総裁が使わなかったことで、次回12月会合での利上げの可能性もゼロではないとの見方が浮上した。

10月の各市場

10月のドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

11月の日・米注目イベント

ドル/円 11月の見通し

 11月のドル/円相場における最大の注目イベントは5日の米大統領選であろう。特に、共和党のトランプ候補が勝利すれば、関税強化や減税によってインフレ懸念が再燃するとの見方から米長期金利が上昇するとともにドル高に振れるとの見方が多い。この場合、ドル/円は155円を超えてドル高・円安が進む可能性が高まりそうだ。さらに、上下両院を共和党が支配するようなら、160円が視野に入ってくることも考えられる。大統領選と同時に行われる議会選の結果にも注目だ。なお、全米の支持率平均で見ると、民主党候補のハリス氏とトランプ氏の差はほとんどなく誤差の範囲内と言える。議会選も、改選議席が少ない上院は共和党がやや有利と見られるが、下院は拮抗している。今回の大統領選・議会選は歴史的な接戦の様相となっており、選挙結果は予断を許さない。それだけに選挙前にポジションを大きく傾ける動きは出にくいと見られることから、選挙結果を受けたドル/円の反応は大きなものにならざるを得ないだろう。仮にハリス氏が勝利すれば、議会選の結果いかん(ねじれが生じる可能性がある)では、比較的大きくドル安に振れることも考えられる。他方、6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では25bp(0.25%ポイント)の利下げが決まる公算が大きいと見ている。市場も同様の見方であり、25bp利下げを90%以上の確率で織り込んでいる。そのため波乱要素は少ないとみられることから、ドル/円相場への影響も比較的小さいと思われる。11月のドル/円相場の趨勢は、やはり米大統領選が握ることになりそうだ。
(予想レンジ:148.000~158.000円)

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外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。

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kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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