中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
中銀のタカ派姿勢後退も市場は好意的
トルコ中銀は先週19日、政策金利を50.00%に据え置いた。据え置きは6会合連続で、声明では引き締めスタンスについて「インフレリスクに注意を払いつつインフレ基調が大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が予想範囲に収束するまで維持する」とあらためて表明した。ただ、「インフレに重大かつ持続的な悪化が予想される場合、『効果的に金融政策手段が活用される』」として、『 』内の文言を従来の「金融政策スタンスを引き締める」から修正。タカ派姿勢を後退させた形で、将来的な利下げを示唆したものと受け止められた。
もっとも、市場はトルコ中銀の利下げ示唆をある程度好意的に捉えた模様だ。通貨リラはこの日、対ドルで小幅ながら上昇。対円でも堅調を維持した。エルドアン大統領の非伝統的な政策で大混乱したトルコ経済が、正統的な金融政策への回帰によって正常化へ向かいつつあることを好感したと見られる。なお、5月に75%台に上昇していた同国のインフレ率は8月に51%台へと鈍化。マイナス成長が見込まれていた4-6月期国内総生産(GDP)は前期比+0.1%とプラス圏に踏みとどまった。リラは、その後対ドルや対ユーロでやや弱含みで推移しているものの、大きく崩れる様子はない。トルコ中銀の拙速な利下げ開始には警戒が必要だが、インフレの鈍化基調を確認した上での緩やかな利下げであればリラの逆風にはならないと見てよさそうだ。なお、トルコの9月インフレ率は来週10月3日に発表される。
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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