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マクロ経済の基本「GDP」を理解して、FXや株価指数のトレンドを把握しよう!

 

(画像=PIXTA)

 経済ニュースなどでよく登場する「GDP(国内総生産)」という言葉。株価や為替相場と深く関連しているのですが、それがどのように影響しあっているのか、具体的に理解している人は少ないかもしれません。そこでGDPとはどういうものなのか、そしてGDPが株価や為替にどのような影響を与えているのかを解説してみましょう。FXや株価指数のCFD投資などにきっと役立つと思います。 

マクロ経済学とGDP統計

 マクロ経済学は、国全体や世界規模での経済の動向を分析する学問です。主な研究対象はインフレーション(物価の上昇)、失業率、経済成長、貿易収支などです。その中でも、国の経済全体の状態を把握するための統計として、GDP(国内総生産)がよく用いられます。
 GDPはある期間内に、ある国で生産されたすべての財やサービスの付加価値の総額を示しており、GDPが増加すれば、経済は成長し、企業利益や雇用増加が見込まれます。

三面等価の原則

 GDPには経済学上の基本原則があります。それはGDPを「生産」「支出」「分配」という3つの側面から算出しても同じ値になるというものです。これを「三面等価」の原則といいます。

 

生産と支出の関係

 ある期間のある国の国内「生産」による付加価値の総額がGDPです。「生産」されたものは、必ず消費者、企業、政府などによって購入されます。つまり「生産」されたものは、すべてどこかで「支出」として計上されることになるのです。
 このため一国の経済全体でみたとき、総生産の価値は総支出の価値と一致します。。

 GDP(国内総生産)=GDE(国内総支出)・・・①

支出と所得の関係

「支出」されたお金は、最終的に労働者の賃金や企業の利益、政府の税収など、誰かの「所得」になります。たとえば、消費者が商品を購入する「支出」は、企業の売上となり、その一部が労働者への給与や株主への配当で分配されます。「支出」されたお金はすべて「所得」として誰かに渡ることになります。
 このため一国の経済全体でみたとき、総支出の価値は総所得の価値と一致します。

 GDE(国内総支出)=GDI(国内総所得)・・・②

 

①の式と②の式をあわせると以下の式が成り立ちます。

GDP(国内総生産)=GDE(国内総支出)=GDI(国内総所得)

これが「GDPの三面等価の原則」です。生産されたもの(生産面)は、最終的に消費されたり、投資されたりする(支出面)と、同時にその活動を通じて所得が生み出される(所得面)という経済の基本的な循環を表しています。

GDPはある国の「年収」

GDP(国内総生産)はGDI(国内総所得)と等しいので、「その国を『人間』と見立て『年収』」と表現されることがあります。「年収」という表現のほうがわかりやすくなるかもしれません。

・米国のGDP ⇒ 『米国』(という人)の『年収』
・ある『国』のGDP成長率 ⇒その『人』の年収増加率
・中国のGDP成長率が鈍化 ⇒『中国』の『年収』の伸びが鈍化
・日本のGDPがドイツに抜かれた ⇒『日本』の『年収』が『ドイツ』に抜かれた

 国民生活の豊さを国別で比較するときには、GDPをその国の人口で割った「一人当たりGDP」が使われるのはこのためです。

GDP成長率と株価・通貨の関係

 外国為替市場(FX)は、多くの要因が複雑に絡み合って動向が決まるので、その変動の根拠を簡単に説明することはできません。ドル/円レートの動きの裏には、経済指標の内容、中央銀行の金融政策の変更、地政学的リスクの変化、投資家心理、財・サービスの輸出入、自然災害やパンデミックなど、さまざまな要因が関わるからです。これらの要因が、互いに影響を及ぼし合いながら、ドル/円レートを変化させます。

 これは株式市場も同じです。さまざまな要因の影響を受けており、株価指数の変動を理解するためには多角的な視点が必要です。

 その中でもGDPは重要な要因のひとつです。そこでGDPという視点から株価や通貨への影響を分析してみましょう。

高いGDP成長率と株高

 高いGDP成長率は、その国の経済成長を示しており、投資の魅力が高まります。経済成長する国では、新規のビジネスチャンスが多く、外国企業はその国に工場を建てたり、子会社を設立したりして、直接投資を増やします。また、経済成長が続くと、企業の売上や利益が増える期待が高まるため、国内外の投資家が、その国の株式を買うので、結果的に株価は上がりやすくなります。

高いGDP成長率と通貨高

 このような投資が増えると、その国の通貨が必要になります。投資をするには、その国の通貨で取引を行う必要があるからです。これにより、外国為替市場ではその国の通貨がたくさん買われるので、通貨高になります。

GDP成長率と中央銀行の政策の関係

高いGDP成長率は、中央銀行の金融政策にも影響を与えます。

高GDP成長率でインフレ発生

 高成長が続くと、需要が供給を上回り、商品価格が上昇しやすくなるので、インフレが発生しやすくなります。また、成長に伴う賃金上昇が消費を促進し、インフレを加速させる要因となります。
 インフレが続くと、商品やサービスの価格が上昇します。消費者の実質的な購買力は低下し、生活費が増加します。原材料費の値上がりから、企業の生産コストは上昇しますが、その上昇分を価格転嫁することが難しい場合が多く、企業の利益率は低下します。

政策金利の引き上げでインフレ対策

 このようなインフレによる悪影響を抑制するために、中央銀行は政策金利の引き上げを検討し始めます。政策金利引き上げは以下の影響をもたらします。

(1)借入コスト上昇
 中央銀行が政策金利を引き上げると、市中銀行が設定する金利が上がるので、企業や個人が銀行からお金を借りるコストが増えます。これにより、企業の投資や消費者の支出が減少し、経済活動が抑制されるため、物価上昇は抑えられます。

(2)貯蓄促進
市場金利が上昇すると、銀行預金の利息が増えます。人々は消費するよりも、貯蓄を優先するようになり、市中に出回るお金が減って、需要が抑えられるので、インフレは収まりやすくなります。

(3)通貨高で輸入物価の低下
市場金利の上昇は、その通貨の需要が増えて通貨高になります。通貨高になると、輸入品価格は相対的に安くなります。輸入品を使用する製品やサービスの価格も下がるので、物価上昇を抑える効果が期待できます。特にエネルギーや原材料の輸入依存度が高い国では、通貨高によるインフレ抑制効果は大きくなります。

FXトレードへの応用

 GDPの絶対値は、その統計値が算出された時点の経済規模を示すだけで、経済の現状や将来の動向までは教えてくれません。一方でGDP成長率は、経済がどの程度の速度で拡大、または縮小しているかを示してくれます。

GDP成長率発表時のトレードシナリオ

 GDP成長率が市場予想を上回ると、その国の経済は「強い」と判断され、通貨が買われるケースが多く、逆に予想を下回ると通貨は売られケースが多くなります。トレーダする際は、GDP成長率と市場予想との比較に注目しましょう。

リスク管理とポジションの取り方

 なお、GDP成長率の発表時は市場のボラティリティが上がるので、適切なリスク管理が求められます。損失を最小限に抑えるためのストップロス設定、ポジションサイズの調整が重要です。また、発表までポジションを持たず、指標内容を確認した上でトレードするのも、リスクを管理する一つの方法です。

 GDPの発表時は、相場が大きく動くのでトレーダーには大きなチャンスがあります。GDPの基礎知識とGDP成長率の重要性を理解することが非常に重要です。指標発表の前には、どのように相場が動いた場合にどのように行動するか、GDPの基礎知識を踏まえて、具体的なシナリオを準備しておくことようにしましょう。これにより、発表時の不確実な状況でも冷静に対応し、リスクを管理しながら利益を追求することができるでしょう。

(本文ここまで)

岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。