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執筆：外為どっとコム総合研究所　小野　直人
執筆日時　2024年8月30日　13時54分

通貨強弱はポンド＞ユーロ、ユーロは調整気味の推移か

ユーロ/円・ポンド/円、レンジ相場が継続

米ドル/円が143.444円の安値を付けにいく局面で、ユーロ/円は160.500円、ポンド/円は189.498円まで水準を下げました。その後は、米ドル安の一服と株高を受けた円安の流れに挟まれ、ユーロ/円は161.00円、ポンド/円は191.00円を挟んだもみ合いが続き、明確な方向性は定まりませんでした。ただし、後半にドイツのインフレ鈍化が重しとなり、ユーロ/円は160.021円まで低下する場面もありました。（各レート水準は執筆時点のもの）

FXのライブ解説、ドル円短期反発余地あり、NZドル・南アフリカランドに注目 (2024年8月29日)

※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。

ユーロの調整幅拡大なら、ポンドも上値が重いか

ECBは7月に英中銀は8月にFRBに先駆けて緩和に舵を切り始めました。そして、今度はFRBも緩和に踏み切ると見られています。米英欧が揃って緩和方向を向く中で、各地域の利下げペースの行方が通貨の強弱に影響してくるでしょう。金利市場の指標となるOIS（オーバーナイトインデックススワップ）を基にした年内の利下げ回数は、1回の利下げ幅を0.25％としたときに、ECBが2.7回、英中銀が1.7回、FRBが4.2回となっています。各中銀の年内の政策会合は残り3回ですので、英国を除けば、ほぼすべての会合で利下げが実施される（FRBについては、何れかの会合で0.5％の大幅な利下げが想定されています）との見方が優勢です。

足許の各地域のファンダメンタルズと照らせば、英国や米国は少し織り込み過ぎと感じるほか、ユーロ圏に関しては現時点で容認できると考えます。この点を踏まえれば、ドル安の影響で底堅い推移をしているユーロには割高観を感じます。こうした流れが、今後修正されてくるようなら、これまで堅調だった欧州通貨の上昇が一服してくる可能性はあります。経済の回復でポンドはユーロよりも優位である点は変わりませんが、ユーロの調整に伴ってこちらも上値が重くなる可能性はあります。

ポンド/円高を期待（テクニカル分析）

ユーロ/円は、7月11日高値（175.423円）からの下落幅の半値戻しとなる164.906円を前に戻りの勢いが緩み、その後は低下中の21日移動平均線に絡むように上値を切り下げており、上値の重さが意識されやすい状況と感じます。今度は、直近の上昇幅の61.8％押しとなる158.012円を下回れば、8月5日安値154.388円割れを試す危険もありそうです。

また、ポンド/円は方向性の見定めづらい動きが続いているものの、レジスタンスだった21日線を上回ってきた点で、状況はユーロよりも明るいように見受けられます。21日線を支えに192.00円を超えられれば、194.00円を超えて上値を広げる期待はあります。一方、下方向は8月19日安値の188.229円が下値目途と考えています。

【ユーロ/円チャート　日足】

EUR/JPY日足チャート
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：EUR/JPY：158.500-165.500

【ポンド/円チャート　日足】

GBP/JPY日足チャート
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ：GBP/JPY：188.500-195.500

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一言コメント

英国がTPP（環太平洋経済連携協定）に新規加盟する議定書を12月までに発効することが決まりました。英国のモノとサービスの貿易に占めるTPP参加国の割合は7%ほどで、英経済成長への影響は0.08％程度との見積もありますが、英国からTPP加盟国へ輸出される99％以上の商品の関税がなくなることで、今後の好影響が期待されます。