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ドル/円の8月見通し「円高圧力は次第に後退する公算」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 7月の推移
・7月の各市場
・7月のドル/円ポジション動向
・8月の日・米注目イベント
・ドル/円 8月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 7月の推移

7月のドル/円相場は149.609~161.949円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約6.7%下落(ドル安・円高)した。6月のドル高・円安地合いを引き継いで3日には1986年以来38年ぶりの高値となる161.95円前後まで上値を伸ばした。しかしその後は5日の冴えない米6月雇用統計や11日の米6月消費者物価指数(CPI)を受けてドルが失速。CPIの発表直後には日本政府・日銀による円買い介入と見られる動きも加わりドル安・円高に転じた。

なお、政府・日銀は翌12日にも小規模な円買い介入を実施したと見られる。その後も17日にトランプ前米大統領がドル高に苦言を呈したことや日本政府要人から円安けん制発言が相次いだことでドル安・円高基調が加速。こうした中で、円キャリー取引の解消に伴う円買い戻しが断続的に入ったと見られ、25日には一時152円台を割り込んだ。

30日には155円台に持ち直す場面もあったが、日銀が利上げを検討するとの観測報道が相次ぐと再び下落。31日に日銀が15bp(0.15%ポイント)の利上げと月4000億円の国債買い入れ減額を決めると、乱高下しつつも下落基調を強め、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が9月の利下げを示唆すると149.61円前後まで下落して3月19日以来の安値を付けた。

始値 高値 安値 終値
160.802 161.949 149.609 150.036


出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

3日
米6月ISM非製造業景況指数は48.8と市場予想(52.7)を下回り、コロナ禍だった2020年5月以来の低水準となった。その後に公表されたFOMC議事録では、「インフレ率はまだ高いものの、この数カ月間は鈍化傾向に緩やかな進展があったとの認識で一致」したことがわかった。一方で、「インフレ率が予想より長く2%を上回るリスクがある」と指摘する参加者も複数いたことも明らかになった。その上で、参加者全員が「新たなデータが持続的に2%目標に向かうという自信を与えるまでは利下げが適切だと判断しないとの認識を共有」したとした。

5日
米6月雇用統計は非農業部門雇用者数20.6万人増、失業率4.1%、平均時給前年比+3.9%だった。非農業部門雇用者数は市場予想(19.0万人増)を上回ったが、4月および5月分が合計11.1万人下方修正されたため「3カ月平均増加幅」は17.7万人となり、2021年1月以来の低水準となった。失業率は予想の4.0%を上回り2021年11月以来の水準に悪化した。平均時給は予想通り前月(+4.1%)から鈍化した。

11日
米6月CPIは前年比+3.0%と市場予想(+3.1%)を下回り前月(+3.3%)から伸びが鈍化。食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年比+3.3%に鈍化した(予想、前月ともに+3.4%)。直後に、日本政府・日銀による市場介入と見られるドル売り・円買いが入り、161円台から157円台へと下落した。

17日
トランプ前米大統領は「FRBは11月の大統領選挙の前に金利を引き下げるべきではない」などと発言。また、為替については「現在は大幅なドル高・円安、ドル高・元安となっており、われわれは大きな通貨問題を抱えている」との見解を示した。また、河野デジタル相が円の価値を高めエネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日本銀行に求めた、とする報道も伝わった。

22日
自民党の茂木幹事長は、日銀に対し「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」とし、円安の是正策として「金融政策の方向性をはっきり、ぶれずに示すことだ」と異例の言及を行った。

26日
米6月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)は前年比+2.5%と予想通りに前月(+2.6%)から伸びが鈍化。食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは前年比+2.6%と予想(+2.5%)を上回り前月と同じ伸び率だった。市場は9月の利下げ開始を妨げる内容ではなかったと受け止めた。

31日
日銀は国債買い入れの減額を決定。「原則として毎四半期4000億円程度ずつ減額し、2026年1-3月に3兆円程度とする」と、概ね市場の想定に沿った計画を発表した。また、前日の複数の観測報道通りに政策金利を従来の「0~0.1%程度」から「0.25%程度」へと引き上げた。声明で「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の『展望レポート』で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」と表明した。植田日銀総裁は、その後の会見で、「円安による想定以上の物価押し上げは、重要なリスクと認識している」と発言。今後については「経済・物価見通しに沿って動けば、引き続き金利を上げていく」「0.5%という政策金利水準を特に意識しているわけではない」と発言した。

FOMCは予想通りに政策金利を5.25-5.50%に据え置き、声明の「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信がさらに強まるまで、目標誘導レンジの引き下げが適切になるとは予想していない」との文言も維持した。ただ、前回「委員会はインフレのリスクを引き続き大いに注視している 」としていた一文を「委員会は2つの責務(物価安定と雇用最大化)の両面に対するリスクを注視している」に修正。パウエルFRB議長もその後の会見で「労働市場が冷え込むにつれてインフレが予想外に加速するリスクは低下したが、労働市場の下振れリスクは、今や現実のものとなっている」としてインフレへの警戒を緩めた一方で、雇用下振れを警戒する姿勢を示した。その上で「9月に利下げが検討される可能性がある」との認識を示した。

7月の各市場

7月のドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

8月の日・米注目イベント

ドル/円 8月の見通し

 7月のドル/円相場は筆者にとって想定外の大幅安となった。「為替介入では円安トレンドは変えられない」「日銀の小幅な利上げでは円高を止められない」との見方を示してきたが、結果的に介入と利上げの組み合わせによる円高の動きを過小評価していたと言わざるを得ないだろう。とはいえ、7月中旬以降の急激な円高は、円キャリー取引の解消に伴う円買いが主導したものであり、8月も一方的な円高が進むとは見ていない。IMM(国際通貨先物市場)の円売り越しは、7月9日時点で2007年6月以来の規模に膨らんでいたが、23日時点では約4割減少。31日の日銀金融政策決定会合を経て、足元ではさらに大きく減少しているものと推測される。現状では円売り越しから円買い越しに転じるほどの大掛かりなポジション転換が起きることは想定しにくく、この先は次第に円高圧力が後退していくと見ている。

 一方、ドルについては「9月利下げの確度」が焦点となりそうだ。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、7月9日の議会証言で利下げの開始時期について明言を避けたが、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見では「9月に利下げが検討される可能性がある」と発言した。その上で、インフレ上昇のリスクよりも雇用悪化のリスクを注視する姿勢を示した。2日に発表される米7月雇用統計は「9月利下げの確度」を測る大きな手掛かりとなるだろう。もっとも、米金利先物市場はすでに9月の利下げを100%織り込んでいる上に、年内残り3回のFOMCで2.8回程度の利下げ(合計70bp)を織り込んでいる。もはや、利下げ観測がドルを押し下げる余地は大きくないだろう。むしろ、7月雇用統計が米雇用情勢の底堅さを示すようなら、ドルが反発する余地があると言えそうだ。

 8月のドル/円相場は、日銀の追加利上げ観測やFRBの利下げ観測などを背景に下押し圧力がかかりやすいと見られるものの、上記の点から下値余地は限られそうだ。下値のメドは3月安値の146円台半ばと見ており、次の心理的節目である145.00円を割り込むことなく推移すると予想する。一方で、反発余地はそれなりに大きいと見られ、155円前後までは自律的に値を戻す可能性もあると見ている。
(予想レンジ:146.500~155.000円)

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kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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