このレポートでは、メキシコペソとアメリカ経済や日本円との為替レートの動き、メキシコペソの見通し、そしてその影響を受ける可能性がある要因について詳しく解説します。
執筆：株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
X(Twitter)： https://twitter.com/KandaTakuya
「テスラ・ショック」で再びペソ売り
メキシコペソ売り圧力が再び高まっている。メキシコ大統領選・議会選後に強まった財政懸念などを背景とするペソ安は一巡しつつあったが、先週は米電気自動車（EV）大手テスラがメキシコ工場への投資を一時停止したことを明らかにしたため売りが再開した。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者（CEO）は23日、メキシコ工場の進捗について「（11月の大統領）選挙後に状況を見極める必要がある」と発言。米大統領選の共和党候補・トランプ前大統領によるメキシコ製自動車の輸入に高関税をかけるとの発言をメキシコ投資一時停止の理由に挙げた。仮にトランプ氏が当選し、高関税が政策として実行されれば「メキシコへの多額の投資は意味をなさない」との認識を示した。これをきっかけにペソは再び下落しており、翌々日25日には対円で年初来安値となる8.185円前後まで下落。対ドルでも同日に18.5880ペソ前後まで下落して約1カ月ぶりの安値を付けた。
米大統領選の行方がペソの関心事に
なお、米大統領選はバイデン大統領の撤退によって足元で混戦模様となっている。バイデン大統領の代わりに民主党候補としてトランプ氏に挑むと見られるハリス副大統領が支持率を伸ばしている模様で、21日以降に実施された6つの世論調査のうち2つはハリス氏がトランプ氏を上回ったとされる。トランプ氏が米大統領に返り咲くかどうかはペソ相場にとっても大きな関心事となるだけに、選挙戦の行方が注目されよう。米民主党は今週8月1日にもハリス氏を正式に大統領候補者として指名する見通しで、ハリス氏とトランプ氏のテレビ討論会は9月前半に行われると見られる。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員神田 卓也（かんだ・たくや）
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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