執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年7月12日 13時00分
157円半ばのサポート力確認で165円路線へ回帰目線も、米景気失速に注意
米ドル/円、米インフレ低下と介入観測で暴落
週明け利食い売りが優勢となり、米ドル/円は160.259円まで売りが先行したものの、堅調な株価動向を受けた投資家のリスク許容度改善や、パウエルFRB議長の議会証言の内容が思ったほどハト派に傾かなかったため、米ドル/円は161.808円までレンジ上限を広げました。しかし、インフレ減速の進展を示唆した米消費者物価指数を受けて、米ドル安・円高が進む中、政府・日銀による円買い介入と思しき動きから157.419円まで暴落しました。その後も何度か157円台~159円台を行き来するなど荒い展開となりました。(各レート水準は執筆時点のもの)
介入相場でFXのライブ解説、弱い米CPI後、まさかの実弾介入!(2024年7月11日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米貯蓄率上昇で消費に手控え感
来週は米株価動向と日銀への思惑が相場の変動要因になるか。米インフレ減速を受けて、年内利下げ開始へまた一歩近づいた感があり、米株式市場には追い風が吹くとの期待が広がっています。為替市場では、これまで米利下げ時期の後ずれ感に伴った米ドル/円中心の円安から、株高を背景としたクロス円中心の円安へ移っていくかもしれません。ただ、そのためには株式市場が堅調な動きを続けることが要となり、これを判断するのに16日の米小売売上高が着目されそうです。その小売売上高は5月にリバウンドしたものの、勢いは限定的で雇用の過熱感後退で米国民が消費に対し慎重になり始めた様子が窺えます。
また、最近になって消費の際におけるカード利用者が増加していることも、市場では不安視されています。一般的にはカード利用の増加は消費拡大と捉えられ好感されますが、貯蓄を切り崩したために消費者が止む無くカード決済を利用しているとの指摘もあり、消費の先細りが懸念されています。さらには、最近は貯蓄率の持ち直しも見られており、これらを踏まえると消費を抑えて貯蓄へ回す動きが優勢のように感じます。消費の弱さが続くようだと、米景気失速リスクから株価に調整圧力が加わり、クロス円主導で円が買い戻される危険はあります。また、本格化する米企業決算も株価に影響を及ぼすため、こちらにも気を配りたいです。
出所:米FED発表のデータを基に外為どっとコム総研が作成
一方、日銀の7月会合が近づく中で日銀への関心が高まる危険もあります。市場では国債買い入れ減額計画の公表以外に追加利上げも行うとの見方は3割程度に留まっています。観測記事などから、7月会合のタカ派へのイメージが醸成された場合には円買い戻しがもう一段進むかもしれません。とはいえ、新NISAに関連した円売りフローがこの先も続く見通しのほか、トランプ相場への期待など円相場がトレンド転換したかはまだ判断が付きません。今回の急落で上値が重くなったことは間違いありませんので、これまでの下値支持線が機能し再び165円を目指す展開に持ち込めるのか、先ずは見極めることが先決と考えます。
下値支持線での底堅さ見極め(テクニカル分析)
米ドル/円は昨年末の安値140.255円を起点とする下値支持線付近でいったん下げ止まったチャート形状を見れば、トレンドが転換したとは言い切れません。同支持線のサポート力が確認できるのなら、同ライン付近を丁寧に買い場と見ています。ただ、同チャネルラインを下回ったときは、100日移動平均線(154.779円、11日時点)まで目線が下がりそうですので、157円後半までは押し目買いで対応し、157円前半まで下がったら、今度は戻り売り目線へ切り替えたいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:154.500-161.500
7/15 週のイベント:
一言コメント
プロ野球も気が付けば全試合(143試合)のうち半分を消化しており、月日が経つのは早いといまさらながら感じます。今年中にやるべきことを、もう一度整理しておかないといけませんね。
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