中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
FX個人投資家のリラ取引が増加
FX個人投資家がトルコリラ/円の取引を再び増やし始めている。一般社団法人金融先物取引業協会の集計によると5月の店頭FXにおける取引額は1504.3億円と4月に比べて約13%増えた。増加は4カ月連続で、今年最低だった1月の467.2億円から3倍以上に膨らんだ。2021年には月間平均で8720億円の取引が行われていたことを考えると本格的な回復とは言えないが、足元で持ち直しつつあることが見て取れる。
利上げと緊縮策で信頼回復
トルコリラ/円の取引が増えている背景としては、トルコ中銀がインフレ抑制に向けて政策金利を50.00%まで引き上げたことが大きい。同国のインフレ率は6月に鈍化を始めており、中銀の引き締め政策によってインフレ高進による通貨安のリスクは低下しつつある。中銀の金融引き締めと同時進行で財務省が緊縮財政を進めており、その結果として格付け会社による同国信用格付けの引き上げが相次いだことも投資家心理の改善につながったと考えられる。
超高金利に着目したキャリー取引復活の兆し
そうした中で、日本との金利差が依然として著しく開いていることから、個人投資家は「キャリー取引」の対象としてトルコリラを物色し始めたようだ。高金利通貨とされるメキシコペソや南アフリカランドに比べてもトルコの金利は圧倒的に高く、トルコリラは通貨安さえ回避できれば高いパフォーマンスが見込める超高金利通貨とも言える。トルコ金融当局の正統的な政策運営が今後も続くことが前提条件となるが、個人投資家のトルコリラ選好の動きがさらに強まってもおかしくないだろう。それだけに、金利を下げればインフレは低下するとの独自理論を振りかざして、かつて中銀に利下げを迫った実績があるエルドアン大統領の言動には注意が必要となりそうだ。
店頭FXトルコリラ/円取引高の推移
※金融先物取引業協会のデータを基に外為どっとコム総研作成
トルコリラ/円(TRY/JPY) 日足チャート
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神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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