執筆：外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は107.35円前後、ニュージーランド（NZ）ドル/円は97.91円前後で週初を迎えました。前週の27日に行われた米大統領選候補者による第1回テレビ討論会でバイデン大統領が高齢による不安を払拭できず、トランプ氏が優勢との見方が強まりました。市場はトランプ氏の政策は米国のインフレを再燃させドル高になると見ているため、週初から米ドル/円がじりじりと上昇。クロス円の豪ドル/円やNZドル/円もこの流れにつれて上昇しました。3日に発表された豪5月小売売上高が市場予想を大幅に上回る結果となったことも支援材料となり、豪ドル/円は1991年以来33年ぶりとなる108.56円前後まで上昇しました。NZドル/円も株高などを支えに38年ぶりとなる98.74円前後まで上昇しました（執筆時）。
強い小売売上高ながら先行きは不透明
3日に発表された豪5月小売売上高は前年比+0.6%と市場予想（+0.3%）を上回る結果となりました。この結果を受けて市場ではRBAが8月にも追加利上げを実施するとの見方が強まりつつあります。ただし、この豪5月小売売上高の好結果は会計年度末を前に開催されたセールイベントによるところが大きいようです。小売売上高の内訳を見ると衣料品、履物、個人用アクセサリーの小売業が前月から大きく売上高を伸ばしていることがわかります（表1）。そのため、今回のような小売の伸びが今後も続くとは限りません。
一方で、豪州では7月1日から所得減税が施行されます。もともと2018年の前政権時代（自由党・国民党）に決定されたもので、2018年、2020年。2024年の3回にわたり低・中所得者を対象に段階的に税率を引き下げるというものです。現在のアルバニージー政権（労働党）は、高インフレ、高金利下での生活費高騰への対策として、低・中所得者への税率をさらに引き下げる法案に改定しています（一方で、高所得者への税率を引き上げてバランスをとっています）。低・中所得者への減税が7月以降の個人消費の拡大に繋がるようであれば、豪州のインフレ加速への懸念が高まることから、RBAの利上げ実施の可能性はさらに高まりそうです。今後も消費者物価指数とともに、小売売上高の動向に注目していきましょう。
【表1．豪小売売上高の内訳（前月比）】
RBNZは据え置き予想
来週は10日（水）にNZ準備銀行（RBNZ）が政策金利を発表します。NZの経済状況を見ると、1-3月期の国内総生産（GDP）は前期比+0.3%となり昨年後半に陥ったリセッションからは脱しています。1-3月期CPIは前年比+4.0%で前期（+4.7%）から鈍化を示しています。ただ、RBNZのインフレ目標レンジ（1-3%）にはまだ少し距離があります。RBNZのオア総裁は「（インフレ率）2%という数字はインフレにおける費用と効果の適切なバランスを引き続き保っている」、「インフレ期待が2%の水準に固定されるためには、まだ取り組みが必要だ」との見解を示しています。またRBNZのチーフエコノミストのコンウェイ氏は短期的なインフレ上昇への警戒感を示すとともに「インフレが妥当な期間内に目標に戻るという確信を与えるには、一定期間の引き締め政策が必要である」と語っています。
NZのCPIやGDPなどの主要な経済指標は四半期毎の発表なので、最新の経済情報がない中での今回のRBNZはインフレ再燃への警戒が残ることから、市場予想通り政策金利を5.50%で据え置くことになりそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は33年ぶり高値水準まで上昇してきています。上値は1991年高値の109.54円前後や心理的節目となる110円前後が目途となりそうです。その上の水準ではあまり目途が見当たりません。一方で下値ですが、日足一目均衡表・転換線と同基準線がサポートとなりそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表】
予想レンジ：AUD/JPY：106.50-110.50、NZD/JPY：97.00-100.00
7/8週のイベント:
07/09 (火) 09:30 豪 7月ウエストパック消費者信頼感指数
07/09 (火) 10:30 豪 6月NAB企業景況感指数
07/10 (水) 10:30 中国 6月消費者物価指数（CPI）
07/10 (水) 10:30 中国 6月生産者物価指数（PPI）
07/10 (水) 11:00 ニュージーランド準備銀行（RBNZ）政策金利
07/12 (金) 時間未定 中国 6月貿易収支
一言コメント：
先日高速道路を運転していると、私の横を凄いスピードでバイクが追い越していきました。すると私のすぐ後ろを走っていた乗用車の屋根に赤色灯が出てきて追いかけていきました。私が少し前に追い抜いたのは覆面パトカーでした（法定速度を守っていたので私は問題なし）。スピードの出し過ぎには気を付けましょう。
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員中村 勉（なかむら・つとむ）
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー（株）へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から（株）外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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