執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年6月28日 12時45分
フランス政情不安でユーロは伸び悩み、ポンドは対円で215円も視野に
ユーロ/円は市場最高値更新
フランスの政情不安は燻ったままでしたが、事態が大きく悪化しなかったことから、専ら円安が目立つ格好になり、ユーロ/円は史上最高値となる172.382円まで上伸し、ポンド/円も203.578円までレンジ上限を広げました。(各レート水準は執筆時点のもの)
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※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
仏格下げへの警戒継続
フランス国民議会選挙を巡っては、23日に公表された世論調査によると、極右国民連合(RN)の支持率は35.5%と政権奪取が現実味を増しています。また、2位は左派連合の29.5%となっており、マクロン大統領率いる再生(RE)への支持率は19.9%に留まっています。このままいけば、1位と2位が入れ替わったとしても、現政権より政府の借り入れが膨らむことは間違いなく、欧州ソブリン債危機の再燃への投資家の警戒はなくなっていません。また、フランスではRNに対する抗議デモも各地で行われており、国民連合が勝利すれば、反ルペンへの動きが強まりフランス国内の混乱が加速する危険もあります。こうした状況を考えると、積極的にユーロを買い進める地合いではないでしょう。
来週はラガルドECB総裁の発言が続きますが、フランスの政情不安からユーロに対してネガティブなセンチメントが醸成されやすい中で、連続利下げに対し踏み込んだ発言がなされれば、ユーロの調整幅が広がるかもしれません。
ユーロ/円は上昇一服となる危険も。上昇チャネルに沿って下値を切り上げており、テクニカル的には買いが優位な状況は変わっていません。しかし、173円後半へ切り上がるチャネルの上限に接近していることもあり、ここからの上昇幅が限られる可能性はあります。状況次第ですが、チャネル到達付近で伸び悩みから上値を切り下げ始めるようなら、短期的には売りで対処すべきではないかと考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:169.000-174.000
政権交代も市場に安堵感
スナク英首相は、2030年までに年172億ポンド、日本円で3兆4000億円余りの大型減税を行うことを公約に掲げているにも拘わらず、保守党への支持率は伸びていません。これにはブレクジットを巡る英国民の心情が関係しているのかもしれません。スナク首相は「EUと新たな貿易協定を結ぶには、バックドア(裏口)による自由な移動を認めるしかない」と述べた一方、スターマー氏は「我々はEUに戻らない。単一市場や関税同盟にも再加入しないし人の移動の自由も受け入れない」としています。英国民の中には、ようやくEUから離脱したのに、敢えてEUにすり寄るような事態は避けたいとの思いがあるのではないでしょうか。こうした心情的な面もあり、労働党が政権を奪取する可能性は高まっています。もっとも、政権が後退してもスターマー氏は厳格な財政規律を重視するとしており、労働党政権樹立が即ポンド売りにもつながりづらい状況で、英選挙での波乱は少なそうです。ただし、大型減税を掲げる保守党が粘りを見せるようなら、財政規律が脅かされポンド安につながる危険はあり、注意は怠れません。
ポンド/円は、200.00円前後のもみ合いレベルを放れて、203円台まで上値を広げています。次の節目は2008年7月高値の215.860円ぐらいしか見当たりません。さすがに短時間でこのレベルへ到達するとは考えにくいですが、直近のチャート形状を見るとそうしたレベルも視野に入ってきます。丁寧に押し目を拾っていくことになるのでしょうが、オシレーター系指標の多くが買われ過ぎを示すため、ストップを近めに設定して短期回転で乗り切りたいと考えています。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:199.000-207.000
7/1 週のイベント:
一言コメント
枝豆のおいしい季節になりましたね。そろそろ路地物が出回る頃ですので、週末に頂きたいと思いますが、それには天候も回復してくれるとありがいたのですが・・・。
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