総括
FX「AMLO大統領と中銀総裁発言で反発。米国も警告」メキシコペソ見通し
予想レンジ 8.3-8.8
(ポイント)
*選挙後の一連の混乱よりメキシコの経済の実情も理解したい(末尾、バモスメヒコの項)
*基本情報は悪くはないので、逆噴射的な政策は回避するだろう
*そもそ財政支出拡大のための政策は選挙対策
*成長を阻害する独善的な政策は回避されると予想する
*何故、憲法改正案が市場から嫌われるのか
*これからの焦点、6月27日の政策金利決定など
*今後の大きなイベントは
*財政赤字拡大、景気減速、利下げ議論では選挙前から下落
*ニアショアリングによる景気拡大基調は変わっていないが、1Qの景気減速が不安
*ただ2Q以降は再び景気回復か
*4Qには米大統領選。トランプ不安はある
*政府は混乱を沈静化する発言を行なった
*メキシコの格付けはジャンク債の手前だ
*中銀は6月利下げ議論開始示唆も、5月前半消費者物価は高止まり
*移民と郷里送金でメキシコは米国に大きく依存
*ペソは年間首位から一時10位へ後退
*米墨インフレ格差、金利差、景況感格差の指標でデコボコな動き
*トランプ大統領候補の有罪判決はメキシコにどう影響するか
*中銀四半期報告書ではインフレ予想を引き上げ
*IMFに下方修正されたGDPが重し
*フィッチ、メキシコの2024年の成長予測を2.2%に下方修正
(トリプル安状態は続くのか、要人の安定化発言続く)
大統領選挙・総選挙後の混乱は続く。6月は13日で対円で7.78%安、対ドルで8.26%安。ボルサ株価指数は5.26%安、10年国債は10.52%で選挙前の10.15%から売られ利回りは10.62%まで上昇したが昨日は低下。ただ選挙後はまだトリプル安状態が続いている。
*AMLO大統領=ペソは強い経済のため堅調に推移する
*中銀総裁=過度な動きには介入する可能性を示唆
*財務省=連邦税収は2024年の最初の5か月で過去最高となった
*米国務省=メキシコの司法改革について「透明性」の重要性を強調
(ジャンク債になっては元も子もない。良識ある政策へ向う)
次期政権で憲法改正に伴い総合福祉政策に基づく補助金や奨学金への支出拡大で財政赤字が増加し、格下げの懸念も出てくる。ジャンク債格付となれば、金利の上昇やメキシコへの投資減少に繋がり経済成長にも支障をきたす。AMLO大統領時代にもインフラ整備で赤字が拡大していた。
電力庁(CFE)の権限強化や国営企業の維持はUSMCAの精神にも反する。聡明な次期大統領が理解していないわけでもないので、おそらく格下げにつながらない修正があるだろう。
そもそも人気取りの財政拡大政策(年金額引き上げなど)は選挙対策だったので、選挙大勝で政策も調整があるだろう。
米国主導のニアショアリングはメキシコ経済の安定成長や雇用改善に繋がっている。それに反する左派的な政策を撮り続ければ、対米関係の悪化にも繋がるので市場が危惧する程の独善策は取られないだろう。
(何故、憲法改正案が市場から嫌われたのか)
市場から嫌われる憲法改正案は今年の2月にAMLO大統領が、18の憲法改正案を含む20の改正案を国会に提出したことに始まる。国家警備隊の軍への配属、選挙制度改革、正規労働者の年金制度改革や電力庁(CFE)の権限強化などが含まれる。AMLO政権下で進めてきた総合福祉政策に基づく補助金や奨学金などを憲法で保障する改正もあり、一度に行政府が提出した内容としては例を見ない広範囲な内容となっている。
大統領は、過去30年続いた新自由主義経済政策(ネオリベラリズム)で失われた国民の権利を取り戻す、人道主義、正義、誠実さ、民主主義の理想と原則に根差した改革と称した。
野党や有識者からは、確定給付型年金などの理想を実現する財政的根拠に乏しく、独立自治規制機関の廃止や国営企業の権限強化、司法制度改革などにより、市場競争環境が悪化し、行政府への権限集中が起こることで、国としての競争力が低下すると指摘されている。65歳以上の全高齢者に支給する高齢者一律年金だけで2024年の歳出全体の7.2%を占め、2024年度は過去に例を見ないGDP比4.9%の大幅な赤字予算が組まれている。
(これからの焦点、6月27日の政策金利決定など)
5月消費者物価は前年比4.69%で前月の4.65%から若干上昇、予想の4.79%を下回った。コアは4.21%で前月の4.37%、予想の4.31%をいずれも下回った。
4月鉱工業生産は前年比5.1%増で、前月の3%減を、予想の4.4%を上回った。
今後は6月24日の6月前半の消費は物価を経て6月27日の政策金利決定となる。その他、6月は20日に4月小売売上、21日に4月経済活動指数の発表がある。1Qは景気減速していただけに、2Qの動向を注目したい。
テクニカル分析
漸く、反発。6月3日-13日の下降ラインも上抜くか
日足、ボリバン2σ下限に沿って下落。昨日6月13日は11日-12日の下降ラインを上抜いて反発。6月12日-13日の上昇ラインがサポート。6月3日-13日の下降ラインも上抜くか。5月29日-6月3日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。雲の下。
週足、急落も十字線で一服。一時ボリバン3σ下限まで下落。12月4日週-6月10日週の上昇ラインがサポート。5月27日-6月3日の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、5か月連続陽線だったが、その上昇を打ち消した6月。ただボリバン中位で反発。22年12月-23年3月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、23年で3年連続陽線。今年もここまで陽線だが上ヒゲが長くなってきた。14年-22年の下降ラインを上抜く。22年-23年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
メキシコの基本情報と予定
(基本情報)
*成長率(世銀) 2024年予想2.3%(1月の2.6%から下方修正)、2023年3.2%
*CPI 4.69%(5月)目標は3%±1%
*格付け フィッチのメキシコの格付けは「BBB-」でジャンク債の1歩手前、S&Pは「BBB」、ムーディーズは「Baa2」でジャンク債の2歩手前、見通しはいずれも「安定的」
*財政赤字 対GDP比率が22年と23年の4.3%から5.9%に拡大する見通し
*貿易収支 黒字も赤字もあり一定しない
*経常収支 黒字も赤字もあり一定しない
*対米貿易 輸出の80%超、輸入の40%超を占める
*米国への移民 約1千万人
*米国からの郷里送金 2022年に611億ドルで世界2位
*ニアショアリングで海外からの工場進出が続く
*貿易においてUSMCAでの関税免除を生かしている
(主な予定)
2024年 6月20日 政策金利、9月メキシコ議会 10月新大統領就任 11月米大統領選挙
2025年 1月米大統領就任
2026年 USMCA改定
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