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【特別寄稿】2024年後半のユーロ・ポンドは?ECB利下げ、フランス解散総選挙の余波は… 松崎美子氏

アメリカに先立ち、利下げを実施したECB。この先の利下げ見通しは?また欧州議会選挙の余波で決まったフランス解散総選挙が招くユーロ安とは?ユーロ/ポンド市場を見ながら、マーケットインパクトを分析します。

レポート入稿日時:2024年6月12日

執筆:松崎美子氏

全会一致ではなかったECBの利下げ

6月6日に開催された欧州中銀(以下、ECB)理事会では、事前予想通り25bps利下げし、預金金利は3.75%となった。前回4月理事会での声明文には6月利下げを強く示唆する文章が載っており、利下げは既成事実化していた。
しかし、いざ蓋を開けると1人だけ『据え置き票』を入れた理事がいたことが判明。そして理事会翌日には某報道社が、「タカ派理事達の半数ほどが、最近の経済指標と利下げの整合性が取れない事に懸念を抱いており、6月利下げという事前の『お約束』がなければ、6月の決定は違っていたかもしれない」と報じた。

今回のECB理事会のまとめ

本題に入る前に、今回の発表をまとめてみよう。

① 3つ全ての政策金利を25bpsカットした
② ECB誕生以来、初めてFRBより先に「利下げ」に動いた
③ リセッションやXXX危機ではないのに、利下げに動いた
④ 金融政策の決定は、データ次第で、会合ごとに決定する
⑤ ECBはここからの金融政策の道筋を示すことは、しない
⑥ 政策金利は必要な限り(長期に渡り)、十分に引き締め気味の水準に設定される
  ことを確実とする
⑦ 今回の決定は、1名の据え置き票があったが、それ以外の理事は全会一致での決定
⑧ ECBの現在の金利水準は、「中立金利」から、かなりかけ離れたレベルである
⑨ Dialling back phaseか否かについては、言及を避けた

一般的には『利下げ=通貨安』となるが、今回は「利下げが完全に織り込まれていた」「利下げに反対する理事がいた」「最近の経済指標はインフレ再燃を予想させる内容が続いていた」「7月の連続利下げの可能性が消えた」ことなどが重なり、『Hawkish Cut(強気の利下げ)』となり、ユーロは上昇した。

今後のECB利下げについて

全会一致での決定ではないことを受け、金利市場では年末までの利下げ幅予想は36bpsまで縮小している。
もし6月7日に発表された米・雇用統計が軟調に終わっていれば、9月に米欧同時利下げというシナリオも考えられた。しかしその希望も消え、今後の利下げのタイミングは、(よほど景気が冷え込まない限り)アメリカの動向を読みながらとなるかもしれない。

マクロ経済予想

データ参照先:URL

 

私の目を引いたのは、1年後のインフレ見通しの数字(赤丸)だ。前回3月は2%で、インフレ目標まで下がるという安心感を得たことを覚えている。今回の予想は0.2%高い2.2%。つまり1年後もまだユーロ圏インフレ率は目標を上回るレベルであり、利下げを急ぐ理由がなくなった

これは、ECBがマクロ経済予想を立てる時のベースとなる数字である。
赤線は3ヶ月物金利水準。今回の予想は3月より上昇しているのが分かる。しかしその下のピンク線を引いた長期金利は、ほぼ変わらない。
その下の黒線は、原油価格。3月と比較すると今回はかなり高めの設定で、インフレ見通しが引き上げられた要因の1つとなる。
最後の緑線は、ユーロ実効レート。3月より6月は高く設定されていた。実効レートが高いということは、インフレ見通しを下げる効果があるが、2024年と25年ともに引き上げられている。これはおそらく実効レートが強くなったインフレ下落幅よりも、原油価格引き上げによるインフレ押し上げ幅の方が大きかったと考えられる。

フランス解散総選挙と長期金利差

6月6~9日に実施された欧州議会選挙で、フランスのマクロン大統領が所属する政党が、極右:国民連合に敗れた。大統領は9日にテレビ演説をし、解散総選挙を発表。一回目投票日は6月30日、決選投票は7月7日となった。
この決定はマクロン大統領の側近以外知らされていなかったようで、同じ党の議員からもブーイングが起きたほどである。今回のレポートはあくまでもECB理事会についてのものであるため詳しくは書かないが、大統領が弱者という立場に立っての早期議会選挙呼びかけという異例の決定であり、解散から投票日まで最大40日まで許される中、わざわざ20日間という短期勝負に出たのは、国民連合に選挙準備の時間を与えないためとも言われている。
今回のマクロン大統領の『押し』は、国民連合が与党となれば、経済・EU政策などは支離滅裂となり、フランスは落ちるところまで落ち、世界の笑いものになるという点であろう。それと同時に、反欧州・プーチン支持の歴史を持つ国民連合の『存立そのものがリスク』という現実をフランスの有権者に突きつけることで、世論調査で劣勢となっている自分の政党に票を呼び込むことができると考えているのかもしれない。
書きたいことはたくさんあるがフランス総選挙に関してはこれくらにしておこう。
最後になるが、英国の総選挙とは違い、フランスでは『万が一の例外』が起きるリスクは大きく、7月7日の第二回投票結果が出るまでは落ち着かない状態が続く。そして、もし国民連合が与党となれば、2027年次期大統領選まで、マクロン大統領と極右の首相との政治が続くことになる。恐怖でしかない。

年後半のユーロとポンド見通し

今後のユーロとポンドの動きは、ユーロ/ポンドに大きな影響を受けると考えている。フランス総選挙の発表と同時にユーロ売り・ポンド買いとなったが、フランス政局の先行き不透明感を受けフランス国債の売りが出ており、ベンチマークのドイツ国債との金利差が拡大中。これはユーロにとってネガティブな材料である。

出典:ドイツ連銀

フランス国債庁

最初にユーロ/ポンドの週足を見てみよう。黄色のハイライトが通る重要サポート:0.8470~0.8500が綺麗に下抜けした。次のターゲットは、(0.8500が上抜けしない限り) 0.82~0.83。その後は0.8060台を考えている。
ユーロ/ポンドが下落する(ユーロ安/ポンド高)ということは、クロス円取引ではユーロ/円の下落幅がポンド/円より大きくなり、上昇する時はユーロ/円よりポンド/円の方が大きく上昇する事を意味する。この点をしっかり頭に叩き込んで欲しい。言い換えれば、売るならユーロ/円、買うならポンド/円となる可能性が高い。

ポンドについては英中銀が発表しているポンド実効レートのチャートは欠かせない。
現在ちょうど2015年からの50%戻しのレベルに張り付いている。私は昨年秋からずっと、このレベルが上抜けする可能性に賭けてポンド買いを繰り返している。

出典:英中銀

はっきりと上抜けを確認するには時間はかかるが、2015年の50%レベルがサポートになれば、ポンド上昇幅は相当大きくなるはずだ。
これが最後のチャートだが、ポンド/ドル週足に200SMAを載せたものである。1.2450レベルが週足で下抜けしない限り、200SMAが通る1.2850台。そこが上に抜ければ、1.3140台を目指す動きを期待したい。

【2024年6月6日に開催された松崎美子氏出演セミナー】

 

f:id:gaitamesk:20191106165135p:plain 元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。

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