執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年5月10日 15時36分
ユーロ/円は底堅さ維持も、ポンド/円は不安材料
介入けん制でユーロ/円・ポンド/円は反発
本邦の円買い介入への警戒後退が円の上値を重くし、週明けからクロス円は上昇しました。4月の日銀会合(25-26日)における主な意見で「長期国債買い入れ、何れかの時点で削減方向示すのが良い」「円安背景とした物価上昇の上振れ続くなら、(金利の)正常化ペース速まる可能性」との意見に反応し、ユーロ/円は167円前半、ポンド/円は194円半ばで上値が抑えられる局面もありましたが、その後も買い優勢の流れは変わらず。ユーロ/円は167.841円まで上昇し、ポンド/円は利下げに一歩近づく内容となった金融政策委員会を受けても底堅さを失わずに194.985円まで上昇幅を広げました。(各レート水準は執筆時点のもの)
FXのライブ解説、介入効果終了と政府・日銀の絵にかいたタカ派演出が見透かされ円安 (2024年5月9日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
6月利下げ織り込み済で、新たな材料待ち
6月のECB理事会での0.25%利下げ観測は9割超の状態を維持しており、同月にもECBは利下げに踏み切る見通しです。ただ、オーストリア中銀総裁からは「9月・12月ならまだしも、7月に追加利下げを実施する妥当性はない」との認識が示されるなど、利下げを織り込み過ぎているマーケットをけん制する発言も聞かれています。6月の妥結賃金のデータは残っていますが、6月利下げは理事会内でもほぼ織り込まれた様子です。その上で、その後の金利のパスについてはデータ次第と言った具合でしょうか。
米国との利下げ時期のズレはユーロの上値抑制材料として意識される一方、市場の利下げ織り込みがほぼ十分な域に達しているため、下値も限定されやすく、結果的に新たな材料待ちの中で、方向性の見定めづらい展開になりそうです。もっとも、対円では円安けん制が十分に機能していないため、ユーロ/円は底堅い値動きが続きそうです。
ユーロ/円は上昇チャネル中を下限から上限に向かって、21日移動平均線(9日時点で165.747円)を支えに下値を切り上げる格好となっており、底堅さが意識されます。また、オシレーター系のスローストキャスティクスやRSIは過熱感も感じられず、まだ上昇余力は残っていそうな雰囲気です。瞬間的に期間21日のボリンジャーバンドの+3σ(170.75円:執筆時点)までの上振れがあっても不思議はなさそうです。かたや下方向は6日のNY時間後半の安値(165.626円)が付近にある165.50円が下値の目途になりそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:165.500-170.800
英賃金動向で利下げ期待増すか、ポンドの上値重そう
金融政策委員会後の会見で、ベイリー総裁は「状況が正しい方向に進んでいる」と語り、6月利下げの扉を閉ざしませんでした。実際に利下げが行われるかはデータ次第ですが、14日の労働力統計で賃金インフレがさらに低下し、失業率も悪化すれば、次回会合でのアクションを期待する投資家が増してポンドを圧迫する可能性はあります。特にインフレ関連指標である賃金動向では、英中銀が重視する週平均賃金(賞与除く)の前年比の伸びが5%を割り込んでくるかどうかがポイントになりそうです。ポンド/円は円が最弱通貨であることに変わりがないため下値は限定されそうですが、英国の利下げ観測が強まれば調整圧力が増して下落幅が広がる危険はあるでしょう。
出所:英中銀のデータを基に外為総研作成
ポンド/円は上昇トレンドライン付近で下げ渋り戻りを試すなど、底堅さが窺える部分はあります。しかし、ユーロ/円などと比較すると戻りが限定され、上昇の勢いが強まりづらい状況にあると感じます。上値を伸ばしたとしても、197.000円がいいところかもしれません。一方で下方向は、21日線(9日時点で193.377円)や50日線(同191.860円)が下値支持線となるのではないでしょうか。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:191.000-197.000
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一言コメント
イエレン米財務長官の発言に冷や水を浴びせられた本邦金融当局ですが、円安がさらに進めば、本邦経済を守るとの御旗のもとに介入を実施するでしょう。とはいえ、さすがにやり過ぎた感も持っているようで、何となくですが口先介入も迫力が感じられないと思うのは、私だけでしょうか。
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