本日のNY市場でのドル円は、155円台を中心にもみ合いとなりそうだ。先週末に発表された米雇用統計後に151.86円まで弱含んだドル円は、今週に入り連日ドル買いが優勢となり、6日安値152.78円を底に昨日9日に155.95円まで上昇した。引き続き円買い需要よりも、円売り需要の方が多いことで、為替介入がない限りは円が強含むのは難しい。ただし、本日は週末を迎えることもあり、敢えてドル円の上値を積極的に攻めに行くのも難しいだろう。
本日上値が攻めるのが難しいのは、これまで市場流動性が薄い時間に介入していることがあげられる。本邦当局の円買い介入には限りがあるとされていることで、介入を行うのは市場が薄く、出来るだけ少ない資金で大きな動きを狙っている。今年の介入は4月29日の東京市場が休場の時と、5月1日(日本時間では2日早朝)でNYも引ける間近と、両日ともに流動性が敢えて悪い時間帯を狙って介入が行われた。市場参加者の中では、13日月曜の早朝の薄い中で円安が少しでも傾いていた場合に、介入が行われるリスクもあるでは、との噂も出ている。円安地合いは継続されるだろうが、敢えて週末・週明けリスクの中で円売りを仕掛けにくいだろう。
ここ最近の介入が流動性の薄い時間帯に行われている要因としては、1つ目はこれまで以上に為替市場の規模が拡大していること。上述の2日間の介入額は、市場では8兆円から9兆円規模と予想されている。これまでの為替市場では、ここまでの規模の介入玉があれば介入の効果が大きかったのだが、市場規模拡大とともに効果が薄くなった。
2つ目は執拗な円買い介入には、米国当局者が難色を示していること。神田財務官は介入には限界があるということを「全く間違っている」と発言したが、理論上は保有米債を売り続ければ、まだまだ介入の限界に達することはない。しかしながら、米国にとって米債を売り、インフレを引き起こす可能性もあるドル売り介入を執拗に行うことを許すことはできないだろう。このような理由でごく限られた介入しか行えないのであれば、市場にインパクトを与えることが確実な流動性の悪い時間帯を狙うのかもしれない。
上述のように日柄的には本日は円安が急速に進むことは難しいだろうが、本邦のファンダメンタルズの弱さや、米国の介入に対する否定的な見解を見ると、週明けは再び円安相場が継続される可能性が高いと予想する。多くの実需勢もこれまでの度々行われた口先介入でドル買いの機会を逃したこともあり、下落局面では確実にドル円を拾うことが予想されることで下値も支えられそうだ。
なお、本日は。米国からは5月米ミシガン大学消費者態度指数・速報値が発表され、期待インフレ率が発表される。前月は同指標での市場の反応は鈍かったが、今週は重要な米経済指標の発表が少なかったことで、新たな指標結果の発表に飢えているNY勢が通常よりも過敏に指標で反応する可能性もあるので注意をしたい。
・想定レンジ上限
ドル円は、5月1日NY時間引け間近に行われた介入後の戻り高値156.28円。その上は1日介入前の水準157.50円近辺。
・想定レンジ下限
ドル円は、これまでの本日安値155.27円。その下は8日安値154.55円。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
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