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初心者でも大丈夫!CFDで銀投資

 
以下の取材記事は金融ライターK氏が執筆したものです。その内容について当社が 保証するものではありません。

ここ数年「銀」の価格が上昇しています。「銀」と言われると、シルバージュエリーや  銀貨、アンティークな銀食器を思い浮かべる人が多いかもしれません。投資対象としての銀の歴史は古く、希少性の高さから「金」と同じように、安全性の高い「現物資産」として扱われてきました。銀投資は「現物」のみならず、「投資信託」「ETF(上場投信)」「商品先物」、そして「CFD」など、いろいろな方法があります。ここでは銀の歴史を踏まえ、同じ貴金属の「金」との比較を交えながら、投資対象としての「銀」の特徴とCFDで投資することのメリット、注意点について考えてみます。

「銀のスプーン」は富の象徴

 古代から貴重な宝飾品や貨幣として流通してきた「銀」。今では「金」よりも安価で手頃な「現物資産」とされていますが、昔は天然に産出される金(自然金)が多いのに対して、天然に産出される銀(自然銀)が少なかったことから、鉱石からの抽出・精錬方法が確立し、高純度の銀が大量生産できるようになるまで、「金よりも銀の価値が高い」という時代がありました。  

 皆さんは「銀のスプーンをくわえて生まれた」という言葉をご存知でしょうか。中世ヨーロッパでは、生まれながらに「銀のスプーン」を使うことができるのは裕福な家庭の子息だけで、銀食器は「富の象徴」であり、代々受け継がれる資産でした。「食べ物に困らない」「裕福で幸せな人生を送ってほしい」そういう願いを込めて、「銀スプーン」は出産祝いの「定番」となりました。

かつて世界の1/3 は日本産

 かつて日本も世界有数の銀産出国だったことを、みなさんはご存知でしょうか?島根県の石見銀山はその中核を担う最大の銀山で、2007年に世界遺産に登録されました。そのほかにも兵庫県の生野銀山、秋田県の院内銀山などが有名です。16世紀に新しい精錬技術が海外から伝わると、日本の銀の生産量は飛躍的に増加しました。当時、世界最大の産出国だった中国の生産量が減少すると、入れ替わるように日本の銀がヨーロッパやアジア各国の市場を席巻するようになります。最盛期には、世界で流通する銀の1/3は、日本から輸出されたものでした。

 しかし、日本が世界一だった時代は長く続きません。スペインの「新大陸征服」により、現在のボリビアやメキシコで世界有数の銀山が発見され、17世紀にはスペイン銀貨がヨーロッパのみならず、中国との貿易の決済で大量にアジアに流入し、世界の銀市場を支配するようになります。その後19世紀に入り、銀の精錬技術はさらに向上、生産コストの低下にともない銀価格も下落、ヨーロッパの国々は銀本位制から金本位制に切り替えます。結局、通貨基準は銀から金へと移行しました。

広い汎用性がもたらす旺盛な需要

長い歴史の中で、このように「通貨基準」の地位を金に譲った銀ですが、(1)「熱伝導・電気伝導率が高い」(2)「展延性が大きく加工がしやすい」(3)「金属で最高の反射率」といった銀特有の特性と、金よりも安価で生産量も多かったことから、現在、宝飾品のみならず、パソコンやスマートフォンなどの電子部品、太陽光発電のソーラーパネルなど、さまざまな分野で幅広く利用されています。

 米国にあるシルバーインスティテュート(※1)によれば、2022年の世界の銀の総需要は38,643トンでした。そのうちの約45%の17,309トンは工業用で利用されています。なお、2018年の銀需要は30,658トンありましたので、5年間で7,985トンほど需要が増えています。

銀の需要(2018年〜2022年)

単位:トン

  2018 2019 2020 2021 2022
工業用 15,900 15,853 15,201 16,427 17,309
写真 977 956 862 862 4,365
ジュエリー 6,316 6,263 4,680 5,645 7,280
銀食器 2,086 1,905 969 1,267 2,286
投資 5,149 5,816 6,368 8,522 10,356
ヘッジ需要 230 110 557
需要合計 30,658 30,793 28,054 32,833 38,643

シルバーインスティテュートの「World Silver Survey 2023」で公表されたデータからライター作成

※1:シルバーインスティテュートは銀生産者、精製業者、製造業者、販売者などで構成される1971年設立の銀の国際的な非営利業界団体。本部は米国ワシントンD.C.にある。1990年から「World Silver Survey」というリポートを発行。

 中でも注目すべきは「投資」の需要でしょう。2018年の5,149トンから、2022年は10,356トンと約2倍になりました。カテゴリー別にみたときに、「投資」だけは毎年増え続けています。

深刻な供給不足

 ただ、高まる銀の需要に対して供給が追いついていません。2021年以降は供給不足が続いています。2022年は過去最大の7,393トンという供給不足になりました。コロナ禍からの世界的な経済回復は続き、脱炭素社会を目指した再生可能エネルギーへの取り組みで、銀需要は今後さらに高まることが予想されます。こうした需給バランスのひっ迫は当面の間、続くとみられています。

シルバーインスティテュートの「World Silver Survey 2023」で公表されたデータからライター作成

「銀」は「金」よりも割安?!

 さて「投資対象」としての銀はどのような状況なのでしょうか。気になるのは銀価格の動向です。銀と金は同じ貴金属。似たような値動きを示すと言われています。2023年12月に銀価格は1g=約114円でした。2001年1月は約20円だったので20年間で価格は5倍になりました。

大手貴金属会社の国内販売価格からライター作成

 同じ貴金属の金価格も、この20年間で上昇しています。2001年1月に1g=1,049円だった金価格は、2023年12月に約9倍の9,486円になりました。銀の5倍に対して金は9倍なので、金は銀よりも大きく値上がりしたことになります。2001年の価格を基準にすれば、現在の銀は金よりも「割安」ということになります。

「金銀比価(GSR)」は経済や景気動向の重要指標

 これを端的に示すのが「金銀比価(※2)」という指標です。英語では「GSR(Gold Silver Ratio)」といいます。GSRは金貨と銀貨の価値を決めるための指標として、大昔から使われてきました。また、金市場や銀市場のみならず、金融市場全体の動向を判断するための重要な指標として、現在も利用されています。なお、2001年1月のGSRは約50。2023年12月のGSRは約83で、やはり数値が拡大しています。

(※2)金銀比価(GSR)=金価格÷銀価格で計算。同一重量(1オンスや1グラム)での価値の比率。2023年の日本国内で販売されている1gあたりの金と銀比価(GSR)は9,486円÷114円=83.2

 どうしてGSRの数値は拡大したのか?投資の世界には「有事の金」という言葉があります。戦争が起きたり、世界恐慌や金融危機で通貨の信用は損なわれたりすると、金のように希少性が高い安全な「現物資産」の需要は高まります。金価格は高騰し、GSRの上昇要因になります。  一方の銀は先述した通り需要の半分近くが工業用です。こうした景気減速や経済活動の低迷は需要を減少させ、価格は下落します。これもGSRの上昇要因になります。

 当然、景気が回復し、経済活動が好調な時期は、安全資産としての金需要は減少し、生産活動に必要な銀の需要が高まります。つまりGSR低下の要因になります。

 こうした特徴は、金と銀の需要をカテゴリー別で比較すると、さらに理解しやすくなると思います。金は24%が工業用で、70%はジュエリーや直接投資です。一方で銀は45%が工業用、ジュエリーや直接投資は46%です。金と銀の価格動向の特徴は、需要内容の違いが大きく影響しています。

シルバーインスティテュートの「World Silver Survey 2023」とワールドゴールドカウンシルの「Historical demand and supply」からライター作成

 GSRが80を超えると「経済や金融市場が危険な領域に突入した」という判断になります。2020年に起きた「コロナショック」で世界経済が低迷すると、銀価格が下落、GSRは100を超えました。GSRは市場のリスクオン・オフを見極める上で重要な指標です。銀投資をする人は常にチェックするようにしましょう。

CFDで銀投資する場合のメリットと注意点

 さて、最後にCFDを使って銀投資すると、どのようなメリットがあり、どのような点に注意をすればいいのかを簡単に説明しましょう。

メリット

1)レバレッジ活用
 銀CFDではレバレッジが利用できるので、少額資金で大きな利益を獲得できる可能性があります。

2)「売り」ポジションで始められる
 CFDは「買い」ポジションだけでなく、「売り」ポジションからも始められます。現物、投資信託やETFは銀価格が上昇したときに利益が獲得できますが、CFDは銀価格が下落しても利益を獲得することができます。

3)保管料や保険料がかからない
 CFDは実際に銀の現物を売買するわけではありません。現物を受け渡しする手間や保管料、保険料などのコストが発生しません。

4)ポートフォリオの多様化とリスクヘッジ
 CFDを利用すると投資資金が少ない人でも、「銀」を資産に組み込めるようになります。株や債券などとは動き方が異なるので、リスクヘッジに利用できます。

注意点

1)ボラティリティが高い
 銀は金と比べて市場規模が小さく、「値動きが激しい」という特徴があります。ハイリスク・ハイリターンになりがちなので、レバレッジをかけ過ぎないようにしましょう。銀CFDは短期売買が可能ですが、銀は工業製品用の需要も高く、需給バランスの変化で価格が大きく変動しますので気をつけましょう。

2)銀は「ドル建て」
 最近の歴史的な円安は銀価格のみならず、輸入製品をはじめとする、さまざまな「モノ」の価格を上昇させています。銀は「ドル建て」取引が基本です。「円安」は有利に働きますが、「円高」になると資産価値は減ります。ドル/円相場の動向は、常にチェックするようにしましょう。

3)インフレと長期金利
 インフレになって貨幣の価値が下がると現物資産である銀価格は上昇する傾向にあります。また、長期金利が上がると、金利収入が得られない銀を資産で保有するメリットは少なくなります。そうすると銀が売られて価格は下落傾向になります。米ドルの通貨価値と米国の長期金利の動向には注意しましょう。

4)オーバーナイトコスト(金利調整額)の発生
 銀CFDでは次の日にポジションを持ち越すと、「買い」ポジションの場合、基本的には金利を支払うことになります。上昇トレンドで「買い」ポジションを持ち続けると、金利調整額を払い続けることになります。逆に「売り」ポジションであれば、金利が獲得できます。  

 なお、CFDもFX同様に売買時の価格差(スプレッド)が手数料ですが、スプレッド幅が変動します。取引に関するコストは、売買する前に十分に理解しておくようにしましょう。

 

ライターK
大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。

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