(写真=PIXTA)
株式市場全体の値動きを数値化した株価指数は、市場の方向性、経済や景気動向を判断する重要指標として利用されているだけでなく、指数連動の投資信託、ETF、CFDなど、インデックス投資の金融商品としても、個人投資家から高い人気を集めています。
インデックス投資の対象とされている株価指数は、「日経平均株価(日経225)」や「NYダウ」のような日米の株式市場のものだけでなく、上海や香港のようなアジアの株式市場、英国やドイツのようなヨーロッパの主要株式市場のものもあり、種類はさまざまです。そこで今回はヨーロッパの株価指数にフォーカスして、CFDで投資する場合の特徴やメリット、デメリットについてご紹介します。
市場動向を示す株価指数
株価指数とは、上場している銘柄の株価を一定の条件と計算式で数値化したものです。企業の株価は市場動向の影響を受けやすい傾向があります。株価指数は株式市場全体の値動きや業種別の動向を示していることから、多くの株式投資家に投資判断の重要な材料として利用されています。
株価指数の計算方法はいろいろ
株価指数を算出するための条件や計算式は株価指数によって異なります。国、取引所、鉱業やハイテクといった業種別などの区分で算出されています。すべての株価指数が株価の平均値を表しているわけではないということです。
例えば、日経225のように東京証券取引所のプライム市場に上場している約2000社の中から、日本経済新聞社が「日本を代表する銘柄」として選んだ225社の株価合計を銘柄数で割った平均値のものもあれば、東証株価指数(TOPIX)のように1968年1月4日の時価総額を基準指数(100ポイント)として、プライム市場に上場するすべての企業を対象に算出時の時価総額÷基準時の時価総額×100で算出するようなものもあります。
簡単にいうと、日経225は株価が高い銘柄ほどウェイトが高くなり(株価平均型)、TOPIXは時価総額が大きい銘柄ほどウェイトが高くなる(時価総額加重平均型)特徴があります。このように株価指数は、国、取引所、業種、銘柄、そして計算方式から、それぞれの特徴をよく理解したうえで利用しなければなりません。
ヨーロッパの代表的な株価指数
それではヨーロッパを代表する主要株価指数について簡単に説明しましょう。
1)FTSE100(FTSE100種総合株価指数)
ロンドン証券取引所(LSE)に上場している時価総額の大きい上位100社を対象に、1983年12月の終値を基準値(1,000ポイント)として算出された時価総額加重型の株価指数。130年以上の歴史を持つ英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」とロンドン証券取引所グループとの合弁会社「FTSE」が公表しています。英国の経済や景気を示す重要な指標とされています。
構成銘柄にはアストラゼネカ(医薬品)、BP PLC(石油・ガス)、プルデンシャル(保険)、インターコンチネンタルホテルズグループ(ホテル)、ユニリーバ(家庭用消費財)など、英国を代表するグローバル企業が多く、海外での売上や営業利益が企業業績に大きな影響を持つことから、ポンド/ドルなど為替レートの影響を受けやすい特徴を持っています。
2)DAX(ドイツ株価指数)
フランクフルト証券取引所に上場しているドイツ企業の主要な40社を対象にしており、1987年12月の終値を基準値(1,000ポイント)として算出されている時価総額加重型の指数です。
ドイツは世界有数の工業先進国で、EUの中で最も経済規模が大きな国です。2023年には名目GDPが4兆4,561億ドルとなり、日本の4兆2,106億ドルを抜いて、米国、中国に次ぐ世界第3位になりました。DAXにはメルセデスベンツ(自動車)、BMW(自動車)、アディダス(スポーツ用品)、バイエル(医薬品)、DHL(物流)、SAP(情報通信)など日本でもよく知られているドイツの代表的な企業が名を連ねています。そのためDAXはドイツ経済の状況が色濃く反映された株価指数でしょう。
3)CAC40(フランス株価指数40)
フランスのユーロネクスト・パリに上場する企業の中から、時価総額の大きな上位40社で構成された株価指数。1987年12月の終値を基準値(1,000ポイント)としています。指数全体に占める1銘柄のウェイトは15%を上限とする時価総額加重平均型の株価指数です。 構成銘柄はアクサ(保険)、ロレアル(化粧品)、BNPパリバ(銀行・証券)、ルノー(自動車)、ミシュラン(タイヤ製造)、ルイ・ヴィトン(高級服飾・皮革・貴金属)、エルメス(高級服飾・貴金属)、ダノン(食品)などフランスの有名企業が並びます。
4)ユーロ・ストックス50
ドイツ取引所の子会社で株価指数の算出やポートフォリオ分析を行う金融サービス会社「STOXX(ストックス)」が算出するユーロ圏の優良企業50社で構成される株価指数です。
ユーロ・ストックス50はアディダス、メルセデスベンツ、ルイ・ヴィトン、ロレアルといったドイツやフランスの有名企業だけでなく、オランダの金融大手INGグループ(銀行)、バドワイザーやヒューガルデン、コロナビールのブランドを持つベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(アルコール飲料)、フィンランドのエレベータやエスカレータ製造メーカーであるコネ、このほかにもスペインやイタリアの優良企業で構成される時価総額加重平均型の指数です。
なお、ユーロを通貨として使っているEMU(欧州経済通貨同盟)の国々の企業であることが前提なので、EUに加盟していない英国の企業は含まれていません。ユーロ・ストックス50はヨーロッパ全体を代表する株価指数として、ETFや投資信託、先物取引、CFDなど、数多くの金融商品が参照する原資産として利用されています。
ヨーロッパの株価指数に注目すべき理由
海外の株価指数に連動した金融商品は、国際分散投資の手段として非常に有効です。世界のGDPに占める各国の割合を比較した円グラフを見てみると、EU 17%、英国3%なので、合計20%になります。これは18%で世界第2位の中国を抜き、25%の米国に次ぐ規模になります。
世界銀行(World Bank)「WDI(World Development Indicators)」のデータをもとにライター作成
GDPはある一定期間に生み出されたモノとサービスの総額を示しています。個人消費が高まり、企業による経済活動が活発になれば、GDPは増加するので、株価とGDPの相関関係は高いとされています。
国際通貨基金(IMF)は、先進国の実質GDP成長率について、ユーロ圏は2023年の0.5%から2025年に1.7%、英国も2023年の0.5%から2025年に1.6%の上昇と予測しています。対照的に日本は、2023年の1.9%から2025年の0.8%へと低下が予測されています。
実質GDP成長率の予測
国と地域 | 2023年(推計) | 2024年(予測) | 2025年(予測) |
世界 | 3.1 | 3.1 | 3.2 |
米国 | 2.5 | 2.1 | 1.7 |
ユーロ圏(EU) | 0.5 | 0.9 | 1.7 |
英国 | 0.5 | 0.6 | 1.6 |
日本 | 1.9 | 0.9 | 0.8 |
国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し(WEO)」2024年1月改訂版よりライター作成
このように地域で考えると、ヨーロッパは経済規模や成長性で米国と肩を並べます。最近、日本から米国の個別株や株価指数に投資する人が増えていますが、それと同様にヨーロッパの株価指数も投資対象として十分に期待できるのではないでしょうか。日本と米国だけでなく、ヨーロッパにまで投資対象地域を増やすことで、さらにリスクヘッジの効いた分散投資が可能になります。
株価指数CFDのメリット
ヨーロッパの代表的な株価指数に対する投資は、ETF、投資信託、CFDなど、さまざまな方法で可能です。ただ、それぞれの投資方法で特徴やメリット・デメリットがあります。
株価指数への投資方法
項目 | 株価指数CFD | 投資信託 | ETF |
ポジション | 売/買の両方 | 買のみ | 買のみ |
レバレッジ | 〇〇倍 | 1倍(なし) | 1倍(なし) |
取引単位(※1) | あり | 1口 | 1口 |
必要最低資金(※2) | あり | なし | なし |
追証&ロスカット | あり | なし | なし |
取引時間・回数(※3) | ほぼ24時間に何度でも可能 | 基本1日1回 | 取引時間中に何度でも可能 |
売買手数料(※4) | なし | あり | あり |
スプレッド(※5) | あり | あり | あり |
管理手数料(※6) | なし | あり | あり |
オーバーナイト金利 | あり | なし | なし |
分配金・配当金 | あり | あり | あり |
※1 取引単位は投資対象となる株価指数や取引に利用するCFD会社、証券会社で異なる。
※2 必要最低資金(保証金)は投資対象となる株価指数や取引に利用するCFD会社、証券会社で異なる。
※3 取引時間帯・回数はCFD会社、証券会社で異なる場合がある。投資信託は購入日に売却(反対売買)ができない。
※4 ノーロード(手数料無料)の投資信託やETFもある。選択する金融商品や取引する証券会社で費用は異なる。
※5 スプレッド(為替手数料)は投資対象となる株価指数や取引するCFD会社、証券会社で異なる。
※6 投資信託・ETFの信託報酬料は選択した金融商品や証券会社によって異なる。
株価指数CFDと投資信託やETFとの違いは、(1)CFDが「売り」「買い」、いずれのポジションからでも始められる点と、(2)レバレッジを効かせることで少額資金で多額の利益を狙うことができる点でしょう。
ETFも上場していますから、取引所オープンしている時間帯なら何度も売買することが可能ですが、常に買ったものを売って利益を確定することになり、CFDのように先に売ったものを買い戻すことで利益を獲得する「空売り」ができません。つまり、株価指数が上昇する局面でしか、 ETFは利益が獲得できないわけです。これに対してCFDは指数が上がっても下がっても利益が獲得できます。 また、CFDはレバレッジにより投資効率の高い運用が可能ですが、分配金・配当金にもレバレッジが適用されます。これは投資信託やETFにはないメリットです。
株価指数CFDの注意点
最後に株価指数CFDの注意点を列挙します。
・レバレッジをかけすぎない
レバレッジを使うと少額で大きな利益を狙えますが、失敗したときの損失額も大きくなります。損失額が大きくなると、口座維持のために追加の資金(追証)が必要になるので、レバレッジをかけすぎないようにしましょう。
オーバーナイト金利が発生
株価指数CFDでは投資家がCFD会社からお金を借りて「株価指数」を購入することになります。「借金」している以上、そのお金には「金利」が発生します。「買い」ポジションを翌日に持ち越した場合、CFD会社に借金している分の「利息」を支払います。これをオーバーナイト金利(※10)と呼びます。CFDは売買手数料や信託報酬が発生しませんが、投資信託やETFにはないCFD独特のコスト「オーバナイト金利」が発生するので、その点を考慮して取引する必要があります。
※10 ただし「売り」ポジションを翌日に持ち越したら、CFD会社に貸し付けている分の「利息」を受け取ることができる。
配当金・分配金を支払うことがある(権利調整額の発生)
株価指数CFDの「売り」ポジションを建てているときに、配当金・分配金が発生すると、その分に見合った配当金・分配金を支払うことになります。これもCFD特有の費用なので、注意してください。
為替リスクがある
ヨーロッパの株価指数CFDに投資すれば、ポンドやユーロでポジションを持つことになります。その際、為替変動リスクが発生します。例えば、1ポンド=150円で購入した10万ポンド分の株価指数は、1ポンド=160円になると10万円の為替差益が発生することになりますが、逆に1ポンド=140円まで円高・ポンド安になれば、それだけで10万円の損失が生じます。 ただ、比較表からも分かる通り、CFDは投資信託やETFよりも「短期売買」に優れています。ポンドやユーロで投資するヨーロッパの株価指数では、この特長が為替変動リスクを回避するうえでプラスに働くでしょう。
さて、今回はCFDでどのようなヨーロッパの株価指数に投資ができるのか、その場合、どのようなメリットがあり、どのような点に注意するべきなのかを考えてみました。株価指数は個別株のような細かい企業分析とは異なり、景気や経済指標のようなファンダメンタルズ分析が有効なので、投資初心者としても始めやすい金融商品ではないでしょうか。CFDのメリットや注意点をよく理解したうえで、リスクを十分にコントロールしながら、ヨーロッパの株価指数に投資してみましょう。
マネ育Ch編集者イチオシ!初心者からプロの方まで
ライターK
大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。
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