執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪ドルの主燃料は日米金融政策に対する市場の思惑
今週の振り返り
今週の豪ドル/円は96.80円前後、NZドル/円は90.35円前後で週初を迎えました。今週は米国の利下げを巡る過度な期待が後退したことで米ドルが外国為替相場の中心になりました。米ドルが全般的に買われたため、豪ドル、NZドルは対米ドルでは下落しました。ただ、日銀の早期マイナス金利解除への期待が後退していることで円が全般的に弱含んだため、豪ドル/円、NZドル/円は小幅上昇となりました。
豪州では18日に豪12月雇用統計が発表されました。結果は雇用者数増減は1.50万人増加の市場予想に反して6.51万人の減少となり、ネガティブサプライズとなりました。ただ、この日の東京時間は今週急ピッチで買われた米ドルに調整売りが入ったこともあり、豪12月雇用統計への反応は短期で終わりました。
豪ドルは日米の金融政策に対する思惑に注意
来週、豪州では豪ドル相場を大きく動かすような経済指標の発表は予定されていません。今週18日の豪12月雇用統計のネガティブサプライズさえほとんど材料視されなかったので、致し方無しといったところでしょうか。
来週は22-23日に日銀金融政策決定会合が開催されます。市場では、日銀が「1月1日に発生した能登半島地震による影響を見極めたいため、今回マイナス金利解除などの金融政策修正に動くことはない」との見方が大勢です。そのため、注目は声明文及び、植田日銀総裁の定例記者会見での発言内容になります。現時点ではまだ影響を見極める時期であるため、近い将来の政策修正を匂わせる発言などはないと市場は見ていますが、念のため注意が必要です。
前述しましたように、今週は米国の利下げ開始時期に対する市場の過度な期待の後退が外国為替市場に大きな影響を与えました。来週は25日に米10-12月期国内総生産(GDP)・速報値、26日に米12月個人消費物価指数(PCEデフレーター)が発表されます。市場が織り込む米国の3月利下げの可能性は現時点(19日午前)でほぼ半々といったところです。PCEデフレーターは米連邦準備制度理事会(FRB)が重視するインフレ関連の経済指標です。結果次第で米国3月利下げに対する市場の織り込みが大きく動き、長期金利や米株価指数が反応して豪ドル相場にも影響が出ることが考えられます。
中国人民銀行が据え置き予想
来週は22日に中国人民銀行(PBOC)が1年物/5年物の最優遇貸出金利の指標となるローンプライムレート(LPR)を公表します。このLPRは1年物が優良企業への貸出金利参考に、5年物が住宅ローン金利の目安となるものです。中国では消費者物価指数(CPI)が3カ月連続で前月比マイナスに落ち込むなど景気減速に対する警戒感が高まっており、PBOCは先日「様々な金融政策ツールを活用して経済全体を支える」と表明しました。これを市場はPBOCが利下げを実施する可能性もあると受け止めました。しかし、今週の15日にPBOCが発表した中期貸出制度(MLF)の金利は市場の0.10%利下げ予想に対して据え置きでした。このMLF金利はLPRの指針となるものです。市場は「MLFが据え置かれたため、LPRも据え置かれる」との見方が優勢となっています。景気減速への懸念が強い中で金利が据え置かれた場合は、中国と交易関係の強い豪ドルにとっても売り材料となりそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は雲の上で底堅い動きをしています。上値目途は引き続き98円台後半です。この水準は2022年(9/13 98.79円前後)、23年(11/15 98.58円前後)と2年連続で上値を抑えられているのでかなり意識されるでしょう。下値は雲下限(95円台後半~96円台前半)がまず意識されそうです。その下の水準では週足一目均衡表の基準線(95.19円前後)、そして200日移動平均線(MA)の位置する94円台後半が目途となりそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表と200MA】
予想レンジ:AUD/JPY:94.50-99.00、NZD/JPY:88.00-92.00
1/22 週のイベント:
01/22 (月) 10:15 中国 1年物/5年物 ローンプライムレート公表
01/23 (火) 09:30 豪 12月NAB企業景況感指数
01/24 (水) 06:45 NZ 10-12月期四半期消費者物価(CPI)
一言コメント:
今週末は関東でも大雪となる可能性があるようです。アメリカではNY州北西部で先週末冬の嵐に見舞われて、14日は外出制限が発令されたようです。そのため、同日に同州北西部の都市バッファローで予定されていたNFL(アメリカンフットボール)の試合は翌日に延期となりました。試合は翌日無事に開催されましたが、試合開始時の体感気温はマイナス15度前後だったようです。試合をする選手も大変でですが、観客も大変です。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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