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最新動画は【外為マーケットビュー】で公開しています。
動画配信期間:2023/12/1~2023/12/15
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
目次
0:00 ドル円の振り返り
1:17 ウォラーFRB理事の利下げに対する発言
5:17 パウエルFRB議長の講演に注目
6:14 注目を集める「ビル・アックマン氏」
7:40 米ベージュブックを点検
9:35 ドル円の見通しと足元のトレード戦略
11:41 【PR】口座開設特別キャンペーン
要約
ドル円の振り返り
ドル円が非常に難解なマーケットになってきております。
【ドル/円(USD/JPY) 30分足チャート】※2023年11月17日06:30頃
最新の為替チャート|ドル/円(USDJPY)|30分足」はこちら
特に11月14日の米CPIを起点に調整が始まりました。その後、上げ下げがあったんですが、米感謝祭前に大きく調整が入りました。一旦戻しはしたんですが、150円から上は結構取引があるため、どうしても150円がレジスタンスになってしまい、149.70-75円などの149円台後半では売り場になってしまったという感じです。しばらくは高値でもみ合いを続けたんですが、今週に入ってまた下がる展開になっています。
ウォラーFRB理事の利下げに対する発言
特にウォラーFRB理事の発言がきっかけで、ドル円の下落が加速しました。
【ドル/円(USD/JPY) 30分足チャート】※2023年11月17日06:30頃
最新の為替チャート|ドル/円(USDJPY)|30分足」はこちら
ウォラーさんが何を言ったかってことなんですが、結構余計なことまで言ったんじゃないかな、まずいんじゃないかな、と個人的には思うんですが。
ウォラーFRB理事は最初、「金融政策が好位置にあるとの確信を強めている」「このままいけばいいんじゃない」みたいな話だけだったんですが、途中でウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオスさんの質問を答える形で、「経済成長の鈍化がなくても、インフレ率がこのまま数カ月だんだん下がっていくのを見たら、利下げできるんじゃないか」「経済成長は鈍化しなくても利下げできるのではないか」みたいなことをおっしゃられました。初めて「利下げ」っていう言葉が出てきたので、これでマーケットはびっくりして金利は急低下、ドル売りということになりました。ただ、これは多分示し合わせて、何かやってやろうと思ったんでしょうね。
また、ウォラー理事のことをタカ派と言う方がいますが、ちょっとその解釈は正しくないと思います。ウォラーさんは確かに金融引き締め局面において、一番の引き締め派だったブラード総裁と共にFRBの利上げ路線を引っ張ってたわけです。オピニオンリーダーでした。特にブラードさんなんかは、パウエルFRB議長がちょっとハト派的なことを言ったその数日後に「いや、もっと金利は上がらなくちゃいけない」と議長の言葉を打ち消すようなことまでやってらっしゃいました。反感買われたんじゃないかと思うんですけど。そして、ウォラーさんもセントルイス連銀でブラードさんの下でエコノミストをやっていたんです。ですから、彼らの考え方は非常に似ています。
ブラードさんとウォラーさんの考え方は、非常に経済理論に忠実で早い、ということです。タカ派だったという訳ではなく、早目に変化を感じて、早くその方向への発言をしてしまうという傾向があるんだと思います。ブラードさんは「ずっとタカ派」と最近は言われてますけど、その前は「最もハト派の人」って言われてました。
ただ、今FRBの立場としては、たとえ景気後退がすぐそこまで迫ってるかもしれないというのが一部感じられたとしても「いやいや、まだまだ利下げなんか先ですよ」と言わざるを得ない立場です。インフレがしっかり沈静化するまで、そのスタンスは変えられないはずなんです。ですから、パウエルFRB議長はFOMC後の会見で「利下げに対する話は全くなかった」「議論は全くなかった」と、そうおっしゃってました。それなのに、ウォラーさんが言ってしまったことで、もともと元来ハト派の人達、デイリー総裁や、あえて言えばウィリアム総裁もそうですけども、「利下げしないといけないかな」と思ってても、立場上そう言えない。ウォラーさんのスタンドプレーに対して、心の中で「くそ~」みたいなこと思ってらっしゃるんじゃないかなと思うんですよね。ですから、ウォラー発言を否定する発言をずっと続けないといけないですよね。
パウエルFRB議長の講演に注目
そこで本日のポイントはパウエルFRB議長の講演です。
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講演っていうよりはディスカッションの形で、話す相手がいるので質問が投げかけられます。ウォラーさんの発言についてどう思うかと直接言われなくても、「早期利下げに対してあなたはどう思ってますか」っていう質問が必ず来ると思うので、パウエルさんは必ずそれを否定すると思います。その時にマーケットは、ちょっとタカ派反応してしまうかもしれないですね。
ただ、そうは言っても、アメリカ経済の一種のピーク感があって、インフレは沈静化の方向に行くっていうのは恐らくコンセンサスがあるんだと思います。一部には「もしかしたら、リセッションが近いんじゃないか」と、恐れている人もいるかもしれません。
注目を集める「ビル・アックマン氏」
ビル・アックマンさんは、「1~3月にも米利下げするんじゃないか」と。3月って言ったらすぐそこですから、早いですよね。これはないとは思うんですが、ビル・アックマンさんは元々アクティビストなので、マクロの話はあんまりする人じゃありませんでした。しかし、「これから先ウクライナにおける戦争とか地政学的リスクが高まり、それからサプライチェーンもいろんな整理がされないといけない。色々なことがあって中立金利も高まってるだろう。だから金利は上昇しないといけない。10年金利は5.5%までいくんじゃないか。だから、株のポジションをヘッジするために、トレジャリーボンドのショートをした」と、8月にツイートされて、これが上手くハマったんです。これで皆ビル・アックマンに注目するようになりました。そして、また利食いが華やかでした。米金利が5%前後のところで、「アメリカ経済のスローダウンの兆候が見えている、金利は下がるんだ」と言って、一気に利食った。そのビル・アックマンが利食ったところが10年債5%のピークのところ近辺だったので、そこからまたフォロワーが増えてます。この人がオピニオンリーダーになってしまっているってとこなんだと思います。
米ベージュブックを点検
ビル・アックマンの言うとおりに、本当にその経済が悪いのかどうかは、ベージュブックを見てみましょう。
9月では「ほとんどの地区で7月と8月の経済成長は穏やかであった。観光に対する個人消費が予想以上に好調で…」と、ぶらぶらっと書いてあります。「消費者が貯蓄を使い果たし、支出を支えるためにより多くの借入に頼ってる可能性を示唆する報告を取り上げた」みたいなことも書いてありますが、景気は結構いいよみたいなことが9月には書いてあります。
10月は「大半の地区で9月の経済報告以来、経済活動にほとんど変化はない。」9月良かったけども、10月も変化ないよ、と。「個人消費は、特に一般小売店の自動車ディーラーにおいて、何とかまちまちであった」とか、ぶらぶら書いてあるんですけども、何となくOKだよ、みたいな書き方をされてます。
問題は11月なんです。「4地区が小幅なプラス、2地区が横ばいから小幅なマイナス、6地区が小幅なマイナスと回答した。」これは大きいですよね。マイナスだっていう地区が6地区出てきたと。不動産ローンは減少したとか、オフィス部門は引き続き低調とか、労働需要は引き続き緩和している、っていう表現を取っております。かなり減速が見えてきたっていう表現です。
ドル円の見通しと足元のトレード戦略
そんなこともあって、米経済は下方向に入りつつあるんだと思います。ただ、ウォラーさんは先走りすぎたので、その否定が入るとドルがリバウンドする局面もあるかもしれません。
ここから先は本当に経済がどうなるか、一つ一つの経済市況を確かめてのことになると思いますので、もう、数字次第。数字が出た瞬間に良ければ買い、悪ければ売り、そういうドタバタの相場になると思います。指標についていけばいいという単純な相場なのかもしれないんですが、方向感が多分なくなると思います。
来週の予定を見てますと、次はやっぱり米雇用統計が一番大きいですかね。
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その間にもいろいろな統計があります。最近反応しないですが米ADPとか、米新規失業保険申請件数、これは最近よく反応します。こういった、個々の指標で良ければ買い、悪ければ売りという、ボールが行く方向に皆がワァっと行く子供のサッカーのような相場になると思います。気をつけて年末を行かれるのがいいと思います。
相場観としては、僕はいずれ円安にまた行くとは思っていて、146円で反発したのは意外と浅かったなと思ってます。またここから先で深くなる可能性もありますが、要はポジション調整なので、ロングの人がある程度投げたところでおしまいですね。ファンダメンタルズ的には、アメリカが恐らく金利を下げる局面にいつかは入るんですが、それがアックマンの言うように1~3月なのか、それとも6月なのか。多くのFRBメンバーは来年一回しか切り下げないって言っております。ずっと先なのかどうなのか、その辺で変わってくるんだと思っています。米大統領選挙もありますから、来年は本当に難しい年になるかなというふうに思っております。
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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