主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
作成日時 :2023年6月19日9時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼16日(金)の為替相場
(1):日銀 ハト派スタンス維持で円全面安
(2):植田日銀総裁の会見を受けて円安進行
(3):FRB高官 相次いで追加利上げを支持
(4):米経済指標を受けて 一時ドルが弱含む場面も
(5):ECB高官 追加利上げを示唆
(6):ドル/円 昨年11月22日以来の高値を付ける
▼外為注文情報/ ▼本日の見通し/ ▼ドル/円の見通し:一段高が期待できるチャートフェース/ ▼注目の経済指標/ ▼注目のイベント
16日(金)の為替相場
期間:16日(金)午前6時10分~17日(土)午前5時55分 ※チャートは30分足(日本時間表示) 出所:外為どっとコム
(1):日銀 ハト派スタンス維持で円全面安
日銀は大方の予想通りに金融政策の現状維持を決定。長期金利の許容変動幅を±0.5%程度に据え置き、マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)の買い入れなどの措置も維持した。声明では「内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していく」とあらためて表明。予想通りの決定ではあったが、欧米中銀の多くがインフレ抑制の引き締めスタンスを維持する中で日銀だけがハト派スタンスを維持したことから円が全面的に下落した。
(2):植田日銀総裁の会見を受けて円安進行
植田日銀総裁は定例会見で、物価目標2%の安定的な達成について「なお時間がかかる」として、物価は「年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく」との見通しを繰り返した。ただ、足元の物価の動きに関しては「下がり方が(想定していたよりも)やや遅い」との認識を示した。イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正については「(市場との丁寧な対話を心がけるものの)ある程度のサプライズはやむを得ない」と述べた。他方、後手に回ってインフレが行き過ぎてしまうリスクは「ゼロではない」としながらも、修正を急いで物価目標を達成できなくなった場合の方が「(政策)対応が難しい」と述べて慎重に判断する姿勢を強調した。総裁の発言トーンはハト派寄りと受け止められ円安が一段と進行。
(3):FRB高官 相次いで追加利上げを支持
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は「コアインフレ率は変わっておらず、押し下げるためにおそらく幾分かの追加引き締めが必要になるだろう」と発言。その後、米リッチモンド連銀のバーキン総裁は「需要減速によってインフレが比較的早くその目標に戻るという妥当性の高いシナリオに確信を得たいと、私は依然考えている」「今後入手するデータがそのシナリオを支えるものでなければ、追加措置を講じることに異存はない」と述べた。
(4):米経済指標を受けて 一時ドルが弱含む場面も
米6月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値は63.9と予想(60.0)を上回り、前回の59.2から上昇した。消費者の1年先の期待インフレ率は3.3%と前月の4.2%から大きく低下。5-10年の期待インフレ率は3.0%だった(前月3.1%)。インフレ期待の低下でドルが弱含む場面もあったが、FRB高官らの発言で7月の利上げ観測が高まる中、下値は限定的だった。
(5):ECB高官 追加利上げを示唆
欧州中銀(ECB)のラガルド総裁は「7月に利上げを継続する公算が非常に大きい」と、前日の理事会後の会見で示した見通しを繰り返した。「7月以降はデータ次第のアプローチに従う」とも述べた。これより前には、ドイツ連銀のナーゲル総裁が「夏休み以後も利上げを続ける必要があるだろう」と発言。ベルギー中銀のウンシュ総裁も「コアインフレ率が5%前後に維持されている場合は、9月あるいはそれより先も利上げが必要となる可能性がある」との見解を示した。
(6):ドル/円 昨年11月22日以来の高値を付ける
米長期金利の上昇を背景にドル/円は141.92円前後まで上伸して昨年11月22日以来の高値を付けた。クロス円はドル買いによるストレートドルの反落でやや伸び悩んだが、日銀の大規模緩和維持を受けた円売りの勢いが勝り続伸した。ユーロ/円は2008年9月以来の155.25円前後まで、ポンド/円は2015年12月以来の182.04円前後までそれぞれ上伸。豪ドル/円は昨年9月以来の高値となる97.58円前後まで上昇した。
16日(金)の株・債券・商品市場
ドル/円 外為注文情報(FX板情報・オーダー状況)
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人気通貨ペア 本日の予想レンジ
ドル/円の見通し:一段高が期待できるチャートフェース
16日のドル/円は大幅に続伸して年初来高値を更新した。日銀が大規模金融緩和の継続を決めたことで円売りが強まると141円台へと上昇。NY市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の高官が追加利上げに前向きな見解を示したことでドル買いが優勢となり、昨年11月22日以来の141.92円前後まで上値を伸ばした。日足はほぼ高値引けの「陽線坊主」で、しかも前日15日の長い上ヒゲを大きく超える大陽線。一段高が期待できるチャートフェースと言えそうだ。
昨年10月高値151.94円前後から今年1月安値127.23円前後への下落幅に対する61.8%戻しの142.50円前後を突破できるかが本日の見どころとなろう。
ただし、本日は米国が休場につき、NY市場では積極的な取引は手控えられる公算が大きい。アジア市場から欧州市場にかけての動きがカギとなりそうだ。念のため、本邦政府筋による円安けん制にも注意が必要だろう。
注目の経済指標:特になし
特になし
注目のイベント:ECB高官発言
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※発表時刻は予告なく変更される場合があります。また、予定一覧は信憑性の高いと思われる情報を元にまとめておりますが、内容の正確性を保証するものではございませんので、事前にご留意くださいますようお願いいたします。
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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