執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
RBAが利上げ継続するか否かは豪雇用統計次第
先週の振り返り
先週の豪ドル/円は92.36円前後、NZドル/円は84.66円前後で週初を迎えました。
6日には豪準備銀行(RBA)が利上げを実施。市場参加者の3割程度しか利上げを織り込めていなかったことのほかに、声明の内容が「RBAがタカ派に傾いた」との印象を与えたことから、豪ドル円は93円台まで上値を伸ばしました。ただ、中国の貿易収支が悪化していたことや、中国の景気減速懸念が根強いことなどが、同国と交易関係の強い豪ドルの上値を抑える要因となりました。
他方でNZドルは、先日(5月24日)NZ準備銀行(RBNZ)が開催した金融政策会合で次回以降の金利据え置きを示唆していたことで対豪ドルでの売り圧力が強まった結果、対円で上値を伸ばすに至りませんでした。
RBA継続利上げへの第一関門 豪雇用統計
15日に豪5月雇用統計が発表されます。前回(4月分)の予想と結果は図1の通りです。
【図1 豪4月雇用統計 予想と結果】
4月は雇用者数が予想外の減少に転じました。その原因は正規雇用者数の減少でした。ただし、豪4月雇用統計は集計週がイースター休暇と被っていたため、その影響が結果に反映されている可能性も考えられます。また労働時間が通常よりも減ったと回答した人の割合が、2015年(今年同様に雇用統計集計週とイースター休暇が重なった)に比べると減少していることが分かっています。これらのことを考慮すると、豪州の労働市場のひっ迫は見た目ほど、緩和されていない可能性が考えられます。
仮に5月豪雇用統計が4月の減少分を補って余りあるほどの反発を見せた場合、労働市場のひっ迫がインフレ高止まりを下支えするとの見方から、RBAが7月にも追加利上げを実施する可能性が高まりそうです。
一方で、予想外に雇用者数が減少していた場合ですが、個人的には5月分の結果が悪かったとしても、RBAの政策決定にそれほど影響を与えないと考えています。
【豪雇用者数と失業率の推移】 上はパンデミック前からの豪州の雇用者数と失業率の推移です。雇用者数は先月若干減少しましたが、月次統計の観測を開始して以来の最高水準です。また、失業率は2022年1月以降4%以下の水準で推移しており、これは過去最低水準となっています。雇用者数が多少悪化していても、RBAが慌てて金融政策の方向性を変えるといったことはないでしょう。
NZのGDPに注意!
15日にはニュージーランド(NZ)の1-3月期国内総生産(GDP)が発表されます。NZのGDPは昨年10-12月期に前期比-0.6%とマイナス成長を記録しました。今回発表される1-3月期GDPの市場予想は-0.1%となっており、仮に予想通りのマイナス成長となれば2期連続のマイナス成長となり定義的にはテクニカルリセッション入りとなります。一方で、RBAやカナダ中銀が利上げを再開したことで、世界的にインフレの粘着性が再確認され、米国やユーロ圏などの主要国の金融引き締めが長期化するとの見方が優勢となっています。その中で、RBNZは次回の金融政策会合から金利を据え置くことを示唆しました。金融政策面では主要国との差が縮まる可能性が高く(NZの政策金利は5.50%)、さらに景気後退となれば、NZドルに売り圧力がかかってきそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円の週足・一目均衡表を見ると、6/9の終値が92.09円前後よりも上の水準であれば、①転換線が基準線の上、②遅行線がローソク足の上、③ローソク足が雲を上抜け、となり「三役好転」の買いシグナルが点灯します。(ローソク足が雲を上抜けたというよりは、雲が切り下がった結果ローソク足が上抜けてしまったということが気になりますが…)雲上限をサポートに買いで入るのも一考かもしれません。
目先の上値目途は94円前後となります。この水準は昨年11月後半に上値目途として意識されたほかにも、昨年高値(9/13 98.79円前後)から今年安値(3/24 86.06円前後)を繋いだフィボナッチリトレースメント61.8%戻し(92.93円前後)などがあります。ここをしっかりと上抜けた場合は、昨年10/21高値の95.73円前後が次の目途となりそうです。
一方で下値目途ですが、前述した週足一目均衡表・雲(92.09円前後)となりそうです。同水準は先週の安値(6/6 92.12円前後)もあります。下抜けた場合は日足一目均衡表・基準線が意識されそうです。
【豪ドル/円 週足・一目均衡表】
予想レンジ:AUD/JPY:91.00-95.50、NZD/JPY:82.50-86.50
6/12 週のイベント:
06/12 (月) 豪 国王誕生日で祝日休場
06/13 (火) 09:30 豪 6月ウエストパック消費者信頼感指数
06/13 (火) 10:30 豪 5月NAB企業景況感指数
06/14 (水) 07:45 NZ 1-3月期四半期経常収支
06/15 (木) 07:45 NZ 1-3月期四半期国内総生産(GDP)
06/15 (木) 10:30 豪 5月新規雇用者数
06/15 (木) 10:30 豪 5月失業率
06/15 (木) 11:00 中国 5月小売売上高
06/15 (木) 11:00 中国 5月鉱工業生産
一言コメント:
関東は6月8日に梅雨入りとなりました。先週末、今週末と図ったかのように週末に雨が降ります。週末の雨は困ります。サッカーの練習は中止になり、子供をどこかに連れて行こうにも屋内の施設は人がいっぱい。BBQも出来ません… 車でちょっと行ったところに良いスーパーが出来たんです。BBQしたいな~
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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