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人民元見通し「3つの景気回復期待から人民元と中国株は底堅くなる」FXレポート 2023/1/17

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本では情報の少ない人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第19回は「3つの景気回復期待から底堅い人民元と中国株」といたしまして、中国の経済活動と相場見通しをお伝えいたします。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.景気回復への期待が人民元を支える
3.人民元は対ドル、対円ともに買い先行で臨みたい

1.人民元相場の定点観測

まずは簡単に直近の人民元の動きを振り返っていきます。

人民元 対ドル 対円レート

Investing.comよりデータ取得、筆者作成

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(2022年12月20日)と比べて2,647 Pips下落し1ドル=6.7184人民元となりました。

この間、米ドルが緩やかな下落局面に入ったこと、中国がWithコロナへ移行したことを理由にドル安、人民元高へと大きく振れました。特に2023年に入ってからその勢いが強く、節目の6.60を目指す展開となっています。

一方、CNH/JPYは前回の寄稿時と比べて0.43円下落し、1人民元=19.04円となっています。

年末の強烈な日本円買戻しを受けて一時は18.70円台へと低下しましたが、年が明けると投資家のリスクを取る動きが積極的になる中で、円売り・人民元買いが強まり一時は19.60円台まで上昇する激しい相場展開となりました。その後は日銀の政策修正が意識される中で再び19.00円台まで下落している状況です。

2.景気回復への期待が人民元を支える

ここまでお伝えした通り、人民元は対円では下落しているものの、対ドルでは上昇しています。また中国株や香港株は底堅い動きを見せています。

出所:Investing.com

CSI300とハンセン指数の先物価格の推移

 

こうした力強いリバウンドの背景には、中国の潜在的な経済活動の強さがベースとなっていることに加え、景気回復への3つの期待が含まれていると考えています。

1つはゼロコロナ政策の転換です。中国の習近平国家主席が、2023年の年頭所感において、「いま防疫対策は新段階に入っている」と強調し、ゼロコロナ政策を明確に転換する姿勢を示しました。氏から直接の言葉が出たことで確固とした方針であると判断します。現在は感染拡大が続いていますが、これは免疫の獲得が遅れていることに起因していると思われるため、じきに克服し、結果として経済押し上げの要因になるとみています。

2つ目は不動産規制の緩和観測です。これは、明確にそうした方針が打ち出された訳ではなく、現状は憶測の域をでない話ではあります。背景には2022年11月に中国人民銀行および、中国銀行保険監督管理委員会より、「不動産市場の健全な発展に資する金融支援通知」が公表されており、不動産会社の再建支援を積極的に行う方針や不動産ディベロッパーに対する融資の期限延長措置が合理的な範囲内で許容されると示されたことがあります。したがって市場の規制緩和観測はこうした動きのさらなる強化を見込んだものと言えます。

3つ目は財政拡大方針です。これは2022年末の中央経済工作会議(毎年末に行われる重要な経済会議)において示された方針であり、党内部での決定事項でもあります。

中国は一党独裁体制であり、反対野党の制約がなく、財政支出の方針を自由に決定できる点が他の先進国と大きく異なります。日本や米国では野党の反対もあるため、思い切った財政政策を打つことが困難で、逆説的に金融政策に注目が集まりますが、中国においては財政政策が効果的に行われやすい政治体制であり、特に注目されています。また国家財政が日本と比べて健全であり、財政支出拡大の余地が大きいことも中国の強みです。

こうした期待が人民元や中国株の底堅さに繋がっています。

 

3.人民元は対ドル、対円ともに買い先行で臨みたい

ここから1ヵ月程度の時間軸に対して、USD/CNHはドル安、人民元高方向で見ており、一度6.60を試す展開を想定しています。

USD/CNH日足チャート 出所:Investing.com

USD/CNH日足チャート 出所:Investing.com

6.60は2022年5~8月にもみ合った水準であり、この辺りでドル買い・人民元売りポジションを持ち、スワップポイントを得ながら運用していた投資家の建値ストップが発生しやすいレベルと言えます。したがって短期のトレーダーとしては、1度はこの地点を試しストップを巻き込むトレードを実施するのではないかと見ています。そして、その後の展開はアメリカの金融引締めや中国の景況感などに左右される展開を想定しています。

次に対CNH/JPYですが日本円も強く、人民元も強いので方向感が出にくい状況にあります。

CNH/JPY 日足チャート/外貨ネクストネオ

CNH/JPY 日足チャート/外貨ネクストネオ

ただし、どちらかと言えば目線は上です。中国経済のファンダメンタルズや日本と中国の金利差を考慮すれば、基本的には上で見ておいた方が無難だと思っています。

その場合に撤退ラインとしては2つ用意します。1つ目が18.80円、18.50円です。

前者は痛みを小さく抑えるものの反発の余地を残した地点で、後者はドル/円が完全に崩れている状況になっているはずで明確な撤退ラインと言えます。

目先のCNH/JPYの動きは日銀の政策修正次第になると思います。今、投資家の間で最も注目が集まっていますので、対円の取引を行う場合には日銀の動きを見ながら、円売りの余地がありそうだと判断した時に、CNH/JPYで買っていくとUSD/JPYで買うよりも利益が大きくなりそうだと見ています。

以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

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【「なっとく 豪ドル見通し」はこちら】

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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