執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
- ▼8月29日週のユーロ/円とポンド/円は明暗が分かれる
- ▼ECBは0.75%利上げに踏み込むのか
- ▼新党首決定がポンド売りの契機となる可能性
- ▼ユーロ/円、チャネル上限に差し掛かる
- ▼ポンドは対ドルの値動きを警戒
- 9/5 週のイベント
- 一言コメント
執筆日時 2022年9月2日 15時00分
事実でポンド売り再開も、対ドルでの下落進行に警戒。ECBの利上げにユーロの反応は?
8月29日週のユーロ/円とポンド/円は明暗が分かれる
インフレ高進からECBが0.75%の利上げに踏み切るとの観測がユーロを下支えして、ユーロ/円は140.002円(執筆時点)までレンジ上限を拡大しました。かたやポンド円は、手に負えなくなりつつある物価高や政局不安などが嫌気され、160.901円まで下げました。ただ、話題の中心は米ドルだったため、クロス円であるユーロ/円もポンド/円も値幅は限定的でした。
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FXライブ/為替予想【実践リアルトレード】米ISM Live, ドル円の意外な上昇ドライバー、主要通貨ポイント整理 ドル/円、豪ドル/円、ユーロ/円、ポンド/円ポイント徹底解説(2022年9月1日)- YouTube
ECBは0.75%利上げに踏み込むのか
来週のユーロは、8日のECB理事会、9日のEUエネルギー担当相臨時会合の結果に一喜一憂しそうです。まずはECB理事会です。8月消費者物価指数(HICP、速報値)が前年比で9.1%と、域内のインフレが加速していることを示しました。これを受け理事会では、0.75%利上げを本格的に議論すべきとの声が高まっています。理事会の中で意見は分かれていますが、大幅利上げ支持が3分の1まで広がっており、0.75%もあり得そうです。最低でも0.5%利上げは固いでしょう。また、現状のインフレ高進を踏まえれば引き締めは今後も続くため、その次の理事会(10月27日)に向けた利上げ織り込みも早速始まることになりそうです。この点ではラガルドECB総裁が会見で次回以降の利上げについて、どのようなメッセージを市場に送るのか注目されます。金利の先高観はユーロの下値をある程度支えると考えます。
しかし、ロシアからのガス供給不安、イタリアの政治的混乱などネガティブな話題が多いのも事実で、ユーロがどこまで持ち直すかは未知数です。これまで、イタリアとドイツの国債利回り差とユーロは逆相関関係にありますが、利上げによってユーロ圏の市場分断化リスクが強まれば、ユーロを圧迫する危険はあります。利上げ後のイタリア国債とドイツ国債の動向は注意したいです。また、9日のエネルギー担当相会合も注目が集まります。EUは、ロシアが天然ガス供給を顕著に制限した場合の対策を検討しています。会合を通じて、エネルギー価格抑制策への期待感が広がるようなら、ユーロが買い戻される展開もありそうです。
図表1.独伊10年債利回り差とユーロの推移 出所:外為どっとコム総合研究所
新党首決定がポンド売りの契機となる可能性
9月5日にようやく次期保守党党首が決まり、英国の政治が動き出すところまで来ました。調査会社ユーガブの最新調査によれば、トラス氏への支持率は66%と、スナク氏の34%を大きく上回っていまして、トラス氏優勢の情勢に変化はないようです。同氏は減税を軸に英経済を立て直す目論見ですが、減税は英国の財政健全化を遅らせるほか、減税によりインフレが加速する危険もあって、同氏の政策に懐疑的な見方も強いです。また、イングランド銀行(中銀)の責務変更に乗り出す構えも見せています。通常なら「噂で買って事実で売る」の格言がこうしたときの定番なのですが、今回はトラス氏勝利が英経済の混乱を誘起し、新たなポンド安の契機となる危険もありそうで警戒が必要と考えます。高インフレが継続する中で成長鈍化懸念は強く、ポンドのトレンドは下向きのままでしょう。
ユーロ/円、チャネル上限に差し掛かる
6月28日高値(144.273円)を起点とする下降チャネル上限を越えてきて、今度は8月2日安値(133.394円)を起点とする上昇チャネルに遷移したように見えます。チャネル上限が来週にも通過する140.800-141.200円付近までレンジを広げるかもしれません。ユーロ/米ドルが未だ下落トレンドを継続しているため、ユーロ/円の上値も限定されると考えますが、超短期的には上目線になりそうです。下方向は、日足一目均衡表・雲上限の138.843円付近が最初の押し目買いポイントと考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:138.000-141.000
ポンドは対ドルの値動きを警戒
ポンド/米ドルは、2020年3月に示現した1985年以来の安値となる1.14088ドルにじりじりと接近しています。このテクニカルな節目を下抜けると、目立ったサポートレベルが見当たらないため、下落幅がきつくなるかもしれません。このときは、ポンド/円も159.443円(8月2日安値)まで急落しても不思議はありません。一方で、ポンド/円は164.000円回復にかなり距離があるように感じます。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:159.000-164.000
9/5 週のイベント
9/5(月) - イギリス 英保守党党首選、決選投票の結果発表
9/5(月) 17:00 ユーロ 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/5(月) 17:30 イギリス 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/5(月) 18:00 ユーロ 7月小売売上高
9/6(火) 15:00 ドイツ 7月製造業新規受注
9/6(火) 17:30 イギリス 8月建設業購買担当者景気指数(PMI)
9/7(水) 15:00 ドイツ 7月鉱工業生産
9/7(水) 18:00 イギリス ベイリーBOE総裁ら議会証言
9/7(水) 18:00 ユーロ 4-6月期四半期域内総生産(GDP、確定値)
9/8(木) 21:15 ユーロ 欧州中央銀行(ECB)政策金利
9/8(木) 21:45 ユーロ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
9/9(金) - EUエネルギー担当相、臨時会合開催(ブリュッセル)
一言コメント
外為どっとコム総合研究所のTEAMハロンズ(@TeamHallons) が平日毎日21時よりライブ配信しています。番組では、注目材料の紹介、テクニカル分析でエントリーポイントや利食い・損切りポイントを解説し、実際にリアルトレードも行っています。ご興味のある方は、一度、こちらにアクセスしてみてください。
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