FXをするために専用アプリを立ち上げようとすると、最初に「両建あり」か「両建なし」かのいずれかを選択するように問われます。自分は「両建設定」でどちらを選ぶべきなのか、FXトレードの経験がある人なら、誰でも一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。それではFX初心者はどうするべきなの か。結論を言ってしまうと「両建を選んではいけない」ということになります。それでは「なぜ両建を選んではいけないのか」その理由を知っていますか。
目次
「両建」設定とは
まず「両建」について説明しましょう。「両建」は、同じ通貨ペアで「買いポジション」と「売りポジション」の両方を同時に保有することです。実際のトレード画面で説明してみましょう。
2022年5月9日20時(日本時間)の時点で、今、米ドル/円の買いポジションを20Lot。そして、売りポジションを10Lot持っています。
(外為どっとコム「外貨ネクストネオ」スマートフォン新アプリより作成)
「両建あり」を選ぶと、このように「売り」ポジションと「買い」ポジションを同時に保有することができます。
買いポジションの平均レートよりも相場が円安になれば、右側に表示されている「買いポジション」はプラスになり、左側に表示されている「売りポジション」のマイナスはさらに大きくなります。もちろん、相場が円高に動けば、逆の結果になります。
30分後に見てみると、ドルが下落して、「円高・ドル安」が進んだため、左側の「売りポジション」がプラスになり、一方で右側の「買いポジション」のマイナスが拡大していました。
両建ては理論上、決裁したのと同じ
もし仮に「両建あり」を選び、同一通貨ペアの「売り」と「買い」で、同じ数量のポジションを保有すると、理論的には「決済」をしているのと同じような状態になるので、下図のように、理論上は「評価損益」が均衡することになります。
実際にはどのようになるのでしょうか。6月16日の米ドル/円相場で確認してみましょう。
午前10時に「売り」と「買い」の両方のポジションを10lot(1万通貨)ずつ、135円で持ってみました。
その後相場は上昇し、135円17銭に到達します。「売り」ポジションはマイナス1,720円となり、「買い」ポジションはプラス1,700円となっています。損益額で20円の差があるのは、0.2というスプレッドの差分です。
午後に入ると相場は下落してきます。
ご覧のようにエントリーした135円付近まで、約15銭ほど下落してきました。すると、「売り」ポジションはマイナス270円となり、「買い」ポジションはプラス250円と金額が変化しましたが、評価損益の差分20円は変わっていません。つまり、トータルの損益はマイナス20円のままということになります。
そのため、損失拡大を防ぐ目的で、一時的に「両建あり」を選択し、両方のポジションを持つFXトレーダーもいます。
これは「両建」が可能なFXだからこそできるのですが、ご覧の通り、同額レート、同ロット数でポジションを持っても、同時に決済すると、必ずスプレッド分だけ損をすることになります。
そもそも「両建」は為替相場が動くと、「売り」と「買い」のポジションの損益が逆に動いてしまうわけです。確かに評価損益を固定化することはできるかもしれませんが、同時に両方のポジションを持つ「両建」のようなやり方で、本当にメリットがあるのでしょうか。
「両建あり」で取引してはいけない3つの理由
ここで、FX初心者が「両建あり」で取引してはいけない理由を3つあげます。
(1)「両建の両損」
投資の世界には「両建の両損」という格言があります。
例えば、相場の動きを読み違えて、高値で「買い」ポジションを建ててしまい、その失敗をカバーするために、急いで「両建あり」に設定を切り替えて、「売り」ポジションを建てたら、安値でつかんでしまった。FXをされている方なら、恐らく一度はこうした経験をしているのではないかと思います。
もちろん、逆のパターンもあるでしょう。ただ、結局、両方のポジションで損が膨らみ、身動きが取れず、大きな損切りをせざるを得なくなります。これが「両建の両損」と言われるものです。
そもそも、最初のエントリーの時点で相場の読みを誤っていたのです。そして間違った判断のまま、ミスをカバーしようとして、さらにミスを重ねてしまったのです。そういう場合はずるずると続けずに「損切り」でリセットして、もう一度、相場を冷静に分析し、次のエントリーで損失を取り戻すべきではないでしょうか。
(2)取引コストが2倍に
「両建あり」にして「売り」と「買い」の両方でポジションを持つと、当然のことですが、FXの実質的コストであるスプレッドは2倍かかります。また、FX会社によって、それぞれのポジションに保証金がかかるところと、外為どっとコムのように「MAX方式」と呼ばれ、同じ通貨ペアの売りポジションと買ポジションの合計を比較して、高いほうのみの保証金で取引ができるところがありますが、「売り」と「買い」の両方のポジションで保証金が必要になると、口座維持率が低くなってしまうので、余力がないと強制ロスカットの可能性が高まります。自分が利用しているFX会社がどちらのタイプか、両建で取引する前に必ず確認してください。
(3)「売り」「買い」のスワップポイントの差額で損失発生
スワップポイントの金額は「売り」と「買い」の両方で発生します。ただ、一般的にスワップポイントが「売り」と「買い」で同額ではないため、その差額分のコストを毎日払う必要があります。
まとめ
さて、今回はFX初心者が「両建あり」を選んではいけない理由を3つあげて説明してみました。このように両建でポジションを持っても、コストやリスクが増えるだけです。
むしろ、両建にはせずに、損が出た場合は、早めの損切りで大きな損が出ないようにリスクを抑え、相場をしっかりと読んで、上がるなら「買い」、下がるなら「売り」でポジションを持ち、利益が獲得できるようにすることが、FX初心者にとっては、トレードが上達する1番の近道でしょう。
マネ育PickUp編集部K氏:大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。 その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携 わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。
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