執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
Twitter:@gaitamesk_naka
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目次
- ▼今週の振り返り
- ▼強すぎた豪雇用統計、RBAはどうする?
- ▼相場のメインドライバーが変わる可能性も
- ▼ニュージーランドのCPIに注目!
- ▼NZ貿易収支は赤字転でも気にするな?
- ▼テクニカル的には…
- ▼7/18 週のイベント
- ▼一言コメント
豪ドル/円は利上げ幅拡大の可能性浮上!相場のメインドライバーが変わる?
今週の振り返り
11日は中国・上海で新型コロナ対策の規制が再導入されたことへの警戒感が強まり、市場はリスクオフの米ドル買い、円買いが強まる動きとなりました。12日には豪ドル/円は91.97円前後、NZドル/円は83.60円前後まで下落しました。13日にはNZ準備銀行(RBNZ)が0.50%の利上げを実施。インフレ抑制に対して強い姿勢を示しました。同じく13日に発表された米6月消費者物価指数(CPI)が予想を上回る結果となり、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での1.00%利上げの可能性が浮上。米ドル/円が一時139円台に乗せるなど円売りが強まった結果、豪ドル/円、NZドル/円は買い戻されることとなりました。また市場予想を上回る強い豪雇用統計の結果も豪ドル/円が上昇する一因となりました。
強すぎた豪雇用統計、RBAはどうする?
豪州の6月雇用統計は図1の通り、予想以上の結果となりました。
【図1 豪6月雇用統計結果】
労働参加率は5月に記録した史上最高値である66.7%をさらに上回る66.8%、失業率は史上最低(一番良い)となる3.5%をそれぞれ記録。雇用者数に関しても、正規・非常勤共に大幅増となりました。この結果を受けて豪ドル円は94.26円前後まで上値を伸ばしました。豪準備銀行(RBA)は7月5日の理事会の声明で今後の利上げ幅に関して「雇用やインフレのデータ、見通しの評価次第」と示していました。豪国内のインフレに関しては7月27日の第2四半期CPIを待たねばなりませんが、強い労働市場を見る限りでは「豪経済は利上げに耐えられる」との思惑から8月2日のRBA理事会では0.75%利上げの可能性を市場も徐々に織り込み始めました。
相場のメインドライバーが変わる可能性も
豪ドル/円相場に対する基本的な考えは、「欧州の経済減速懸念や中国・上海のロックダウン懸念など、資源国通貨の豪ドルにとっては上値を抑える材料があることから豪ドル/円は上値を伸ばしにくい」です。ただ、①13日の強い米CPIの結果を受けて米国では利上げ幅拡大の可能性が出てきた、②カナダ中銀は1%の利上げを実施した、③強い豪雇用統計を背景にRBAも利上げ幅拡大の可能性が出てきた。こういった材料から、日銀と他の主要国中央銀行の「金融政策の方向性の違い」に再びスポットライトが当たる可能性があるのではないかと考えています。その場合は円独歩安となりそうです。
ニュージーランドのCPIに注目!
7月13日にRBNZは市場予想通り0.50%の利上げを実施し、政策金利を2.50%としました。RBNZは声明文で、「CPIが中銀目標(1~3%)内に確実に戻るように断固として取り組む」、「引き続き利上げを継続することは適切」など示しました。来週は18日(月)にNZ4-6月期CPIの発表が発表されます。下の図2は欧米とNZのCPIの推移です。NZのCPIは四半期毎の発表となりますので、発表のない月は前月と同じ値としてあります。このグラフを見ると2021年末まではNZのインフレ率は英欧とほぼ同じだったこと、2022年に入って英欧のインフレ率がNZを上回ったことがわかります。この時期からロシアのウクライナ侵攻が始まり、原油をはじめとしたエネルギー価格が上昇しました。そして欧州では天然ガスの供給不足懸念でエネルギー価格が上昇しています。NZ同様に大幅利上げを行っている米国や英国のCPIにピークアウトの兆しが出ていないことで、NZのCPIも上伸していることが予想されます。また前述した通り、欧州のインフレ率の方が高いことが予想されるため、NZのCPIは7~8%台前半と予想しています。いずれにしても、CPIが上伸していればRBNZの大幅利上げが継続との思惑が強まります。ただし、NZは資源国通貨であるため、世界経済の減速懸念が強まれば売られやすい通貨になります。引き続き欧米の経済指標に注目です。
【図2主要国のCPI推移】
NZ貿易収支は赤字転でも気にするな?
21日にはNZの6月貿易収支が発表されます。NZの貿易収支は主力輸出品目となる乳製品の出来が大きく影響します。乳製品の原料となる生乳が、例年夏頃はほとんど取れなくなります。これは乳牛の食事となる牧草が豊富な時期が現地の春から秋にかけて生育することが理由です。NZが南半球に位置することで、北半球に位置する日本とは季節性が逆になります。そういったことからNZの貿易収支は例年6月頃から減少し、9月前後に底を打つことが多くなっています。今年は4月よりも5月の貿易黒字が減少していたことから、既に輸出はピークを越えたことが予想されています。例え、貿易赤字に転じていたとしても、季節性のことなのでNZドル相場に大きな影響を与えることはないとみています。
テクニカル的には
豪ドル/円は週足一目の転換線を終値でなかなか下抜けることが出来ません。来週もこの水準から下で買うことも一考かと思います。日足の一目均衡表を見ると、来週は雲下限が92.088円前後に位置しています。すでに①転換線が基準線の下、②遅行線がローソク足の下を達成しています。終値で雲下限を下抜けると、売りサインと解される三役逆転が点灯します。その場合は、7月上旬に下値を支えた91.50円前後や、節目となる90.00円。週足一目均衡表・基準線の88.62円付近が目途となりそうです。上値は6/20週と、6/27週の高値が94円台後半~95円台前半なので95円前後とみています。この水準を上抜けると年初来高値である96.88円前後を試してきそうです。
【豪ドル/円 日足チャート・一目均衡表】
予想レンジ:
AUD/JPY:88.50-95.00、NZD/JPY:82.00-88.00
7/18 週のイベント:
07/18 (月) 07:45 NZ 4-6月期四半期消費者物価(CPI)
07/19 (火) 10:30 豪 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
07/21 (木) 07:45 NZ 6月貿易収支
一言コメント:
東京はこのところ梅雨が戻ってきたかのような空模様です。今年は梅雨が短く、急に暑くなったのでへばりかけていたのですが、まさに恵みの雨でした。 ただ、曇りが何日も続くと気持ちも晴れませんね。人間にも太陽光が必要だと思いました。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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