高金利通貨である南アフリカ ランドについて、中長期にわたり買いポジションを保有する視点で、現在を分析します。
執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
Twitter:@gaitamesk_naka
目次
南アフリカ ランド/円 上昇・下落のパワーバランス
南アフリカ ランド/円をトレードするうえで重要となる経済指標やイベントを個別に点検します。
5月19日のSARB(南ア準備銀行)金融政策会合で市場予想通り0.50%の利上げを実施し政策金利を4.75%へ。今後も利上げ継続予想。次回は7月21日発表予定。
4月の南アフリカ・貿易収支は155億ランドと前月より大幅減。4月は中国の複数主要都市でのロックダウンの影響が大きかったようだ。3月分は459億ランドから472億ランドに上方修正。ウクライナ情勢の悪化で金やプラチナ、パラジウムと言った南アフリカ産出資源の価格上昇が支え。
4月の南アフリカ・消費者物価指数は前年比+5.9%と前月の同+5.9%からインフレは高止まり。南アフリカ中銀の目標値(3%~6%)のほぼ上限での推移。
2021年11月から3カ月連続で前月比プラスとなっていたが、2022年2月分では前月比-2.0%と勢いに陰り。5月18日に発表された3月分は洪水の影響などもあり-0.3%と2カ月連続で減少となった。
5月20日に格付け会社ムーディーズは良好な交易条件と財政支出抑制への道筋を評価して南アフリカの見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げた。
①国営電力会社エスコムによる、計画停電は続いている。引き続き電力不足が国内経済回復の足枷となる。
②失業率は2022年1Qで34.5%と前期(35.3%)からは改善したが、依然として高水準。南アフリカ経済の足枷。
③東部沿岸で60年振りの豪雨による被害で停電、断水。4月18日にラマポーザ大統領は国家的災害事態宣言を発出(期間は3カ月の予定)。今後の経済回復に遅れが生じる可能性。
④外国為替市場では、日銀の金融緩和継続に対して、他の主要国は金融引き締めを開始していることを再度材料視している。それによって円安圧力がかかりやすい状態。
パワーバランス まとめ
インフレの上昇を抑えるためにSARBは4会合連続で利上げを行ったが、インフレは目標(3~6%)のほぼ上限で高止まりしている。そのため、市場はSARBの追加利上げを予想している。高失業率は引き続き悩みの種。格付け会社による見通し引き上げは投資を呼び込むにあたりポジティブ材料。ただ、洪水被害が経済の回復を妨げる可能性がある。
南アフリカ ランド/円、いまが買いどき?
SARBは5月19日に利上げを行ったものの、インフレは高止まりが続いており、市場は追加利上げを予想している。電力不足が国内経済の足枷となっており、洪水による被害や経済回復の遅れは未知数。しかし、格付け会社が財政見通しを引き上げるなど国としての信用は改善中。米国の経済減速が予想ほどではない可能性が浮上していること、4月に減速した中国経済に回復の兆しが見られていることは南アランドにとって好材料。日銀が金融緩和継続を表明していることで円安圧力がかかりやすい。
経済指標予定
9日 18:00 1-3月期経常収支
15日 20:00 4月小売売上高
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当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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