【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月のポンド/円ポジション動向
・5月の英国注目イベント
・ポンド/円 5月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月の豪ドル/円ポジション動向
・5月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 5月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 4月の推移
4月のポンド/円相場は159.582~168.424円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.1%上昇した(ポンド高・円安)。
ポンドは対ドルでは4.3%下落しており、ポンド/円の上昇は円安が主導したものであった事がわかる。ポンドは、ウクライナ紛争が長期化する中、英中銀(BOE)の利上げペースダウン観測や、英国経済のスタグフレーション(不況下の物価高)を巡る懸念が売り材料となった。一方で円は日銀の緩和維持姿勢と円安容認姿勢が売り材料だった。世界的なインフレ高進で各国の中銀が引き締めスタンスを強化する中、日銀のハト派姿勢がより際立つ格好となり、ポンド以上に円が下落した。
出所:外為どっとコム
11日
英2月鉱工業生産は前月比-0.6%と予想(+0.3%)に反して落ち込んだ。英2月国内総生産(GDP)も前月比+0.1%と予想(+0.2%)を下回る伸びにとどまった。英2月貿易収支は205.94億ポンドの赤字となり、赤字額は予想(167.00億ポンド)を超えて膨らんだ。ポンドはドルやユーロに対して下落したが、それ以上に円売りの勢いが強かったためポンド/円はむしろ強含んだ。
12日
英3月雇用統計は、失業率が4.3%に低下し、失業保険申請件数は4.69万件減(前回4.4%、5.80万件減)となった。12-2月の国際労働機関(ILO)基準失業率は予想通りの3.8%。12-2月の週平均賃金も予想通りの前年比+5.4%であった。
13日
英3月消費者物価指数(CPI)は前年比+7.0%と予想(+6.7%)を上回り前月(+6.2%)から伸びが加速。1992年3月以来、30年ぶりの高水準となった。食品、エネルギー、酒類、たばこ価格を除いたコアCPIも前年比+5.7%へ加速した(予想+5.3%)。ドル高・円安が進む中、ポンドは英CPIに大きな反応を示さず、対円では上昇したが対ドルでは下落した。
19日
国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しで英経済成長率の予測を2022年3.7%、2023年1.2%にそれぞれ下方修正した(従来4.7%、2.3%)。ウクライナ紛争の影響で、英国やドイツの成長率は米国やカナダに比べると修正幅が大きかった。
22日
英3月小売売上高は前月比-1.4%と予想(-0.3%)を下回る落ち込みとなった。自動車燃料を除いた売上高も前月比-1.1%(予想-0.4%)であった。これを受けてポンドは下落。なお、その後に発表された英4月製造業PMI・速報値は55.3と予想(54.0)を上回った一方、同サービス業PMI・速報値は58.3と予想(60.0)を下回った。
27日
ロシアがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止したことを受けて欧州経済への打撃が懸念され、ポンドが下落。なお、ロシア国営ガスプロムは、ポーランドとブルガリアが天然ガス代金のルーブル支払いを拒否したとして供給停止を発表した。ポンドは対ドルで下落したものの、日銀の金融政策発表を翌日に控えて円売りが優勢だったため対円では強含んだ。
4月の各市場
4月のポンド/円ポジション動向
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5月の英国注目イベント
ポンド/円 5月の見通し
英中銀(BOE)は5月5日の金融政策委員会(MPC)で政策金利を1.00%に引き上げた。ただ、同時に発表した金融政策報告書で2023年の経済成長がマイナスに陥るとの予測を発表。ベイリー総裁も「非常に急激な経済成長の減速」に警戒感を示した。今後については、スタグフレーション(不況下の物価高)への警戒感からBOEの利上げペースが鈍るとの観測が広がり、ポンドは下落した。ウクライナ情勢の早期好転が見込みづらい中、5月のポンド/円相場は上値の重い展開となりそうだ。
週足チャート上では、13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線がいずれも右上がりで推移する「パーフェクトオーダー」を示現しているため大崩れはないと見るが、6日時点で159円台前半に位置する13週移動平均線を下抜ければ、156円台を通る26週移動平均線の付近まで下値余地が広がりそうだ。
他方、日銀は大規模緩和を堅持する姿勢を強めている事から、円安主導でポンド/円相場が強含む展開も想定されるが、4月第3週に示現した長い「上ヒゲ」が上値の重さを示唆している。「上ヒゲ」にあたる165円台以上では戻り売りが出やすいと考えられる。
(予想レンジ:156.500~165.500円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 4月の推移
4月の豪ドル/円相場は90.429~95.738円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.7%の小幅な上昇(豪ドル高・円安)となった。
豪中銀(RBA)の利上げ期待の高まりと、日銀が大規模金融緩和を維持するとの観測から豪ドル高・円安の動きが先行。94円台では上値の重さも見られたが、RBA議事録が公表された19日に一気に95円台まで上昇し、20日には2015年6月以来の高値となる95.74円前後まで上値を伸ばした。その後、中国のロックダウン(都市封鎖)を巡る懸念などから世界経済の先行きに不透明感が生じる中、世界的な株安の影響で27日には90.43円前後まで下落して約1カ月ぶりの安値を付けたが、RBAの利上げ前倒し観測(5月利上げ期待)が高まると反発。日銀が原則として毎営業日の「指値オペ」実施を発表した28日には93円台後半へと持ち直した。
ただ、29日には再び世界的に株価が下落する中で91円台へと反落するなど、月末にかけて乱高下した。
出所:外為どっとコム
5日
RBAは予想通りに政策金利を0.10%に据え置くと発表。ただ、声明文から「きわめて景気支援的な金融環境を維持することを約束する」との文言や「インフレに影響を与えるさまざまな要因がどのように進展するかを監視しており、辛抱強く待つ準備ができている」との文言を削除した。市場は、RBAが利上げの地ならしを始めたと受け止め、豪ドル買いが活発化した。なお、RBAは「今後数カ月の間に、インフレと賃金に関する重要な追加データが利用可能になる」として、利上げの前に4月末の1-3月期消費者物価指数(CPI)および5月の1-3月期賃金指数の結果を確認する考えを示唆した。
6日
中国3月財新サービス業PMIは42.0と2020年2月以来の水準に低下。市場予想(49.7)を下回った。1日に発表された製造業PMIも節目の50.0を割り込んでおり、中国国内での新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナでの戦争の影響から経済活動が弱まったと見られる。
7日
豪2月貿易収支は74.57億豪ドルの黒字となり、黒字額は予想(116.50億豪ドル)を下回った。輸入が予想以上に増加した事で黒字が縮小した。貿易収支に対する豪ドルの反応は限定的だった。ただ、中国・上海で前日の新型コロナ感染者が過去最多を更新し、市内の一部でロックダウンが続いている事や、国際エネルギー機関(IEA)が前日に加盟国の石油備蓄放出を発表し、原油価格が下落した事から豪ドルの上値は重かった。
14日
豪3月雇用統計は、新規雇用者数が1.79万人増で市場予想(3.00万人増)を下回った。失業率は前月から横ばいの4.0%となり市場予想の3.9%より弱い結果となった。RBAの早期利上げ期待がやや後退すると豪ドルは下落した。
19日
RBAは4月理事会の議事録を公表。インフレと賃金の伸び加速で2010年以来となる利上げ時期の見通しが早まったとの認識が示された。市場はRBAがタカ派スタンスを強めたと受け止め豪ドル/円は強含んだ。
26日
米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な引き締めや中国の景気悪化懸念に対する警戒感が根強く、米国株が引けにかけて下げ幅を拡大。NYダウ平均が800ドル超下落する中、リスク回避の豪ドル売り・円買いが加速した。
27日
豪1-3月期CPIは前年比+5.1%へ加速(予想+4.6%、前回+3.5%)。RBAが重視する基調インフレ率は+3.45%となり、前期の+2.55%から加速した。RBAの目標レンジである2-3%の上限を超えたことから市場では5月RBA理事会での利上げ期待が浮上。豪ドル買いが優勢となった。
29日
米3月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)が約40年ぶりの高い伸びとなった事を受けて米長期金利が上昇した一方、米国株が大幅に下落。豪ドル安・米ドル高に振れた影響で豪ドル/円は下落した。
4月の各市場
4月の豪ドル/円ポジション動向
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5月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 5月の見通し
豪中銀(RBA)は5月3日の理事会で政策金利を0.10%から0.35%に引き上げた。市場は0.25%への利上げを見込んでいたため豪ドルは上昇。RBAが「今後、金利をさらに引き上げる必要がある」として追加利上げを示唆した事も豪ドルの押し上げに繋がった。なお、市場はRBAが次回6月7日の理事会で25bp(0.25%ポイント)の追加利上げに動く事を100%織り込んだ上に、50bp利上げの確率を40%前後と見込んでいる。追加利上げの織り込みを巡っては5月18日に発表される豪1-3月期賃金指数の結果が注目されよう。10-12月期の前年比+2.3%を上回る伸びとなるのは必至と見られるが、仮に3.0%超の大幅な伸びとなれば6月の50bp利上げが現実味を帯びる事になりそうだ。
ただ、21日に行われる豪総選挙は豪ドルにとって不透明要因だろう。モリソン首相率いる与党・自由党は支持率で野党・労働党にリードを許しており、9年ぶりの政権交代も視野に入っている。「親米」路線の自由党に対し、労働党は中国寄りと見られている事から、仮に労働党政権が誕生すれば市場の不安を誘う可能性もある。5月の豪ドル相場を見る上では、経済情勢だけにとどまらず政治情勢への目配りも必要となりそうだ。
(予想レンジ:88.250~96.250円)
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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