総括
FX「物価高についての当局発言や、リパトリ玉に注意」
ドル円=113-117、ユーロ円=129-134 、ユーロドル=1.12-1.17
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨6位(4位)、株価9位(11位)、物価高についての当局発言や、リパトリ玉に注意」
主要通貨では米国の金融引き締め表明に続き、英が実際に利上げ、ユーロ圏も利上げを否定せずで、先週の円はポンドとユーロにも抜かれることとなった。ただ米国の金融引き締めについては、すでに織り込まれつつあるので反応は少なく、先週のドル円の週足は僅かに円高となった。英、ユーロ圏はまだ金融引き締めに新鮮味があり円安に反応した。ただ昨年のような円独歩安の流れにはなっていない。
成長率で言えば、日本の2022年は2021年に比べて成長率が上昇する世界でも数少ない国の一つだ。政府も経済見通しを上方修正している。だからこそ増税の話も出始めたのだろう。財務相は円安も円高もメリットもデメリットもあると市場には反応されない慎重な発言を繰り返しているが、105円当たりでは何も言及しなかったが115円ではコメントらしきものをするのは、やはり円相場を気にしていたり、どこから
圧力があるのだろう。日本の物価も上がり始めている。50円近いガソリン税をゼロに近づければ一気にインフレは片付き国民の不満は収まるが、それが出来ないワケがあるのだろう。
さて日本企業の決算は良さそうだ。良ければある程度はリパトリの円買いにも繋がる。まだ貿易収支は小幅だが赤字が続くので急速に円高には繋がらないが、米国も日本も半導体工場を建設し始めた。これが稼働すればサプライチェーン問題も改善し自動車の輸出が伸び貿易黒字に転じるだろう。
*米ドル「通貨5位(2位)、株価(NYダウ)6位(7位)、先週は米国指標のドタバタがあったがドルは弱かった。短期金利が上昇すれば株・債券の清算にも繋がる」
米国の経済指標は速報値でも、確定値でもブレるので油断できないのだが、先週もまさにその通りだった。日欧の経済指標はあまりブレることはないので指標発表前に緊張することはない。1月ADP雇用統計は予想20.7万人増のところ、30.1万人減、1月非農業部門雇用者数は予想15万人増が46.7万人増、12月分は19.9万人増が51万人増となった。何が出てくるかわからない。発表する官庁が市場エンターテナーかもしれない。ただ先週を通じてドルは安く12通貨中11位、円が10位で、ドル円は動かなかった。年初来でもドルは5位で金融引き締めと言われながら弱くも強くもない。ポンドが積極的な利上げ、ECBも利上げを否定せずで、金融引き締めは米国だけではないからだ。同じ金融政策をとれば貿易黒字のあるほうが勝つのだろう。
世界的に株式市場は年明け以降、大荒れの展開となっているが、投資意欲を妨げるには至っていない。株式ファンドへの資金流入は増え続けてている一方、債券や現金は敬遠されていることがデータで示されている。株式ファンドへの資金流入は2月2日までの1週間に218億ドルで、年初来の流入総額は1060億ドルになったと、BOAが指摘した。一方、債券ファンドは週間ベースの資金流出が2021年3月以来の多額となり、現金の保有も減少した。ファンドだけのことなので全体は語れないが資金のローテーションは起きている。米債で起きていることの一部がドル売りにもなるのだろう。年内7回連続で利上げをする予想も出ているが、そうなればFF金利も2%となり長期運用の調達利回りが運用利回りを超えてしまうことにもなりポジションを清算しドル売りにも繋がるのだろう。今週は需給の基本の貿易収支と金融政策に影響する消費者物価の発表がある。
*ユーロ「通貨2位(10位)、株価10位(6位)DAX)、うっぷんを晴らす急騰。持続力はあるか」
先週のユーロドルはウクライナ緊張下やコロナ感染拡大での暗いムードを打ち破る急騰となった。先週はボリバン2σ下限から一気に上限へと上昇した。
ECBは政策金利を予想通り据え置いくと同時にインフレリスクが増大していることを認め、年内に利上げに動く可能性を排除せず、ハト派スタンスからの転換が鮮明となった。ラガルド総裁はECBが政策行動を急がないと述べながらも、これまでに示してきた年内利上げの「公算は極めて小さい」という発言を繰り返すことも避けた。また、一定の少数派から債券買い入れ規模縮小の加速を望む声が出ていたことが分かった。インフレが大幅に鈍化しない限り3月の理事会で決定される可能性が高いという。 1月のユーロ圏消費者物価が、前年比上昇率が5.1%となり、過去最大だった12月(5%)を上回った。
エネルギー価格高騰が引き続き押し上げ要因だが、食品価格も急上昇。サービスと工業製品も高止まりしている。物価上昇率5.1%は、目標としている2%の2倍以上。
金融市場が織り込むECBの利上げ確率が上昇。6月に0.1%、12月までに0.5%の利上げが実施される確率は80%以上となった。 またユーロ圏の企業が今年3%以上の賃上げを予想しているとの調査結果も明らかとなった。物価が上昇していることに加え、建設やソフトウエアエンジニアリングの分野などで人手が不足していることが背景。
貿易黒字がありながら低迷してきたユーロが蘇った。これが続くには感染拡大の抑制とウクライナ危機の緩和であろう。(なお、クノット・オランダ中銀総裁は最初の利上げは22年4Qとした=2月6日)。
*ポンド「通貨4位(7位)、株価5位(4位)、底堅い。追加利上げ観測と資源高」
底堅い。先週は対円で154円台から155円台、対ドルでは1.33台から1.35台へ上昇。終盤、ユーロの急騰と強い米雇用統計でやや弱含んだが、年初来では前週の7位から4位へと浮上した。先週は利上げを行ったが、3月に追加利上げ観測が高まった。2月の金融政策委員9人のうち5人の賛成多数で政策金利を0.25%から0.5%に引き上げると決定したが、残り4人は0.5%の利上げを主張したことがわかったからだ。
中銀は、現在の労働市場のタイト度合いと国内コスト・物価圧力の高まりが持続していることからみて、政策委員会の全委員は今回の利上げは妥当と判断した。中銀が2回連続で利上げを実施するのは2004年以来初めてとなる。今回の決定を受け、政策金利は年末までに1.5%に引き上げられるとの見方が市場で出ている。ただベイリー中銀総裁は、多くの家計が収入を圧迫されていることから、インフレ高進と成長鈍化の間にはトレードオフがあるはずであり、投資家は長期にわたる連続した利上げに着手したと考えるべきではないと述べた。
また原油を中心とする資源高は英国企業に恩恵を与え経済にもメリットがある。FT株価指数は今年数少ないプラス圏市場だ。
もう一つの話題のジョンソン首相のコロナ禍でのパーティー出席に関しての引責辞任問題は日増しに高まっている。ただこれまでもEU離脱問題で何度も首相が交代したが、それで経済が大きく変転することはなかったように今回も掲示自体には影を落とさないだろう。
*豪ドル「通貨11位(11位)、株価8位(10位)、けっしてファンダメンタルズは悪くはないが、ブームの利上げに乗れず小康」
豪ドルは年初から冴えない動きだ。12通貨中で11位。ただ内容はそれほど悪くはない。2020年は最強通貨であったし、2021年も8位であったが円よりも5%以上強かった。コロナ発生起源問題で対中関係は悪化しているが、対中貿易は縮小していない。豪全体の貿易も、2021年通年の貿易収支は1,220億400万豪ドルの黒字となり、2020年の黒字額(735億9,300万豪ドル)を大きく上回った。財の輸出は前年比25.6%増、財の輸入は12.7%増であった。22年の成長見通しは4%。インフレは21年4Qの消費者物価コアインフレ率が前年比2.6%と、23末まで2.5%に到達しないとしていた中銀の想定を上回った。これを受けて中銀は現在、コアインフレ率が2Qに3.25%のピークに達し、24年半ばまでに2.75%に低下すると予想している。失業率も4.2%と予想以上に改善しており、中銀は今年末までに1970年代以来の低水準となる3.75%に低下するとみている。ただ、賃金上昇率は来年半ばまでに3%と緩やかな伸びにとどまる見通しで、これが利上げを急がない要因となり、世界の利上げムードからやや離れ投機資金が流入していない。ただ実需は貿易収支など黒字でありしっかりしている。貿易黒字がありながら低迷していたユーロが先週、利上げ見通しが出ただけで急騰したような展開も賃金如何では見られるかもしれない。
*NZドル「通貨最下位(最下位)、株価12位(13位)、年初来最弱通貨。入国規制緩和で景気浮揚狙う」
年初来、最弱である。豪経済がオミクロン感染や賃金の伸び悩みで利上げが出来ない状況で弱含みしていることに連動している。人的交流、貿易関係の強い豪の低迷はNZにも影響してくる。NZの貿易も久しく赤字が続き需給的に支えがない。そうなると信頼感の厚かったアーダーン首相の支持率も低下してくるようになった。歯車がかみ合わない状態だ。
そこからの脱出策としてNZ政府は、新型コロナウイルスの水際対策として実施している入国規制について、ワクチン接種の完了を条件に今月末から段階的に緩和すると発表した。当初は1月から緩和する計画だったが、変異株「オミクロン株」の世界的な流行を受けて先送りしていた。アーダーン首相は、オミクロン株に対処するための3回目の接種が国内で進んだと説明。「われわれの地域がしっかりと防御できたため、世界と再びつながる重要なことに取り掛からなければならない」と強調した
さて21年4Qの失業率は3.2%と、1986年の集計開始以来の低水準に改善した。ただ、賃金の伸びは予想に届かなかった。民間部門の賃金上昇率を示す労働コスト指数(LCI)は0.7%上昇と、予想の0.9%上昇ほど伸びなかった。一方、21年4Qの消費者物価は前年比5.9%上昇し、予想の5.7%を上回り、約30年ぶり高水準を記録した。これを受けて中銀が来月の金融政策会合で追加引き締めを行うとの観測が一段と高まってきた。
テクニカル分析
*ドル円「2月2日の下ヒゲから雲に沿って上昇」
日足、1月28日、29日の長い上ヒゲで下落も雲に入らず、また2月2日の下ヒゲで反発。連続陽線で先週を終える。1月28日-2月4日の下降ラインが上値抵抗。2月3日-4日の上昇ラインがサポート。
5日線、20日線下向き。
週足、ボリバン2σ上限から下落も20週線で反転。1月3日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。1月24日週-1月31日週の上昇ラインがサポート。雲の上。ボリバン上位。
月足、ボリバン2σ上限から下落も20か月線から反転で陽転。10月-12月の上昇ラインがサポート。雲の上。
年足、2021年は6年ぶり陽線。2022年は僅かに陽転。15年-20年の下降ラインを上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。15年-21年の下降ラインを上抜く。
*ユーロドル「6連続陽線でボリバン2σ下限から2σ上限へ」
日足、6連続陽線でボリバン2σ下限から2σ上限へ。1月13日、14日、2月4日と1.148がトリプルトップ。2月3日-4日の上昇ラインがサポート。雲上。5日線、20日線上向く。
週足、ボリバン下限から中位越え。21年8月30日週-9月6日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン中位は1.1429。
月足、2月はボリバン下限から上昇、一時雲の上に出る。20年3月-22年1月の上昇ラインがサポート。21年1月-5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。20年‐21年の上昇ラインを下抜いている。17年-20年の上昇ラインがサポート。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「ボリバン下限から一気に2σ上限へ急騰」
日足、ボリバン下限から一気に2σ上限へ。雲上。5日線、20日線上向く。2月3日-4日の上昇ラインがサポート。
週足、3週連続陰線から大陽線。雲の上へ。ボリバン下位から上位へ。1月24日週-31日週の上昇ラインがサポート。10月18日週-1月31日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、1月の陰線から2月第1週は陽転。ボリバン中位から反転。21年10月-11月の下降ラインを上抜く。21年12月-22年1月の上昇ラインがサポート。
年足、2年連続陽線。今年は陰線スタート。20年-21年の上昇ラインを下抜く。14年-21年の下降ラインが上値抵抗。12年-20年の上昇ラインがサポート。
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