以下の取材記事は個人の経験や考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。
今回は、ソニーフィナンシャルグループ 金融市場調査部 シニアアナリストの石川 久美子氏にインタビューいたしました。 中編ではアナリストして情報を配信するうえで、大切にしていることや、直近の為替相場をどう捉えているのか伺いました。
▼目次
1.外為どっとコム総研から、次の一歩へ
2.為替相場が「面白い」局面に入ってきた
3.金融業界で生き残るためには柔軟性がカギ
1.外為どっとコム総研から、次の一歩へ
編集部:- これまでの、相場の向き合い方がガラリと変わったことで戸惑うことなどはなかったですか?
石川:- 最初のころはマーケットの見通しを組み立てる時に、相場の空気感を数字で言語化できず、議論で上席のエコノミストを説得できなかったのは辛かったですね~
編集部:- 同じ金融業界でも、また畑違いの世界になりますので、慣れるまではなかなかペースがつかめなかったでしょうね。
ただ、逆にFX業界での経験値が役に立ったってこともありましたか?
石川:- はい、あります。
経験がものを言うといいますか、例えば長く「そうである」基と言われてきた教科書的なロジックと相場が逆方向に動いても、実際にマーケットに携わってきたからそこ、すんなりと違和感なく受け入れることは出来ました。
2.為替相場が「面白い」局面に入ってきた
編集部:- どのような相場状況でも冷静に受け入れる!それがアナリストとしてのあるべき姿なんでしょうね。
せっかくなので、最近の為替相場や行く末をどう見ているのか少し伺ってもよろしいですか?
石川:- もちろんです。金融政策が転換局面ですし、今は面白いところに入ってきたと感じています。
編集部:- 昨年にドル/円は2017年来の高値をつけました。ポンドなんかも大きく動きましたもんね~
石川:- そうですね。2021年はテーパリングを見据え、ドル高・円安が進みましたが、日本が緩和的な政策を続ける一方、アメリカは利上げに向かっていますし、2022年もその傾向は続くと思います。
米国のインフレが過度に加速するとの懸念はありますが、基本的にはそれは制御され、緩やかながらもドルの上昇基調は続くと見ています。
編集部:- 懸念材料はあるものの、長期目線で見るとドルはまだまだ強そうと見ているということですね。
石川:- はい。だから、ユーロ/ドルなんかは軟調に推移するでしょうね。
ユーロにおいては現時点では緩和的な姿勢を維持していることも下押し要因になります。ただし、ECBのスタンスがタカ派に傾き始める場合はユーロ高に転じる可能性があるため、注意が必要です。
編集部:- あと、豪ドルなんかはどうでしょう?外為どっとコムのお客様は豪ドル好きな方が結構いらっしゃるので一言コメントを下さい。
石川:- グイグイ来ますね(笑)
豪ドルやNZドル、カナダドルといった先進国の資源国通貨は例えば今のようなコロナ禍の不安が残り、手放しのリスクオンとなれない市場において、国際商品価格が上昇している際に上昇が見込める通貨です。
各通貨とも金融政策次第といったところですが、豪ドルは現時点で中銀のスタンスが非常にハト派に傾いているだけに、利上げが視野に入ってからの伸びしろが大きそうです。
編集部:- そうなるとおススメはやっぱり豪ドル?
石川:- でも、私はここ数年カナダ推しなんです。日本の個人投資家さんの人気はイマイチなんですよね。
編集部:- なぜそんなにカナダ推しなんですか?
石川:- カナダはエネルギー資源国で世界有数の産油国です。さらに、最大貿易相手国がアメリカなので、米景気回復の局面では一緒に上昇していくであろうと希望が持てるはずです。日本人に注目されないのは本当に勿体ない!
編集部:- たしかに、FXでカナダを積極的に買おうという方は少ないかと(タジタジ) でも、そう言われてみれば、確かに将来的に有望な通貨にも思えます。
石川:- そうでしょう!?
3.金融業界で生き残るためには柔軟性がカギ
編集部:- 石川さんを頼って、相場見通しに対する質問や相談など他にもたくさん受けていらっしゃるかと思いますが、情報を配信するにあたって、大切にしていることはありますか?
石川:- 私たちのチームが発信した情報を受け取る方々は、本当に様々な立場の方達です。それぞれ、ほしい分析の角度や種類が違ってきますので、「どんな方々に向かって情報を出しているのか、どのような投資期間で分析しているのか」という点について、できるだけ明確化することを大事にしています。
編集部:- ターゲット層が多種多様であれば、配信情報の絞り込みって難しくないですか?
石川:- そうですね。例えば、FXのような短期トレードをしたい人、中期的に外貨預金で積み立てたい人、外貨建て生命保険の保有者など、求めている見通しの期間が全然違います。
編集部:- たしかに、中長期での運用を検討している方に日々の値動きのレポートは需要が少なさそうです。
石川:- そうです。逆にFXなどの短期トレードをしたい人であれば、日々のイベントや値動きなど短いスパンの情報のほうがより有益な情報だったりもします。
そのため、それぞれの方たちがどんなニーズを持って問いを投げかけているのかを、そこもしっかり分析して、適切な情報を送り出せるように心がけています。
編集部:- まずは、相手を知る事から始めるってことですね。
他にも意識されていることはありますか?
石川:- 「思いこまないこと」「自分の考えを大事にし過ぎないこと」は常に意識しています。
編集部:- つまり、柔軟性ってことですかね?
石川:- はい。相場は柔軟に対応する人でないと生き残れないと思っています。
そもそも、全ての情報を収集して、検証するなんて無理な話で、自分がカバーしていない分野から矢を受けることもある。つまり、それって、何が起こるかわからない中にいるということなんです。
編集部:- たしかに、100%の情報を揃えて、分析・検証なんて難しいですね。
石川:- それならば、手元にある情報を駆使して、その情報から読み解けるのはこれ、もし違う情報が入って来た場合には、執着せずにマルっと差し替えるくらいのフットワークの軽さが必要です。
隕石が降ってきて気候が変動した時、適応できなかった恐竜が絶滅し、適応できた生物が今まで生きている。柔軟に環境の変化に適応できることが、金融業界で長く生き抜くコツかと思います。
編集部:- なるほど、今の環境にいかにうまく適応できるかがカギなんですね。
(後編に続く)
PickUp編集部より
中編では、為替相場の見通しに始まり、石川氏の一押しの通貨、相場見通しを発信するにあたって大切にしていることなどについてお話いただきました。後編ではオフの日の過ごし方のほか、個人投資家へのメッセージについても伺います。皆様のトレードスタイルの確立にお役に立てれば幸いです。
投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ
ソニーフィナンシャルグループ 金融市場調査部 シニアアナリスト
石川久美子(いしかわ・くみこ) 氏
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。
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