読む前にチェック!最新FX為替情報

読む前にチェック!
最新FX為替情報
CFD銘柄を追加!

スプレッド
始値比
  • H
  • L
FX/為替レート一覧 FX/為替チャート一覧 株価指数/商品CFDレート一覧 株価指数/商品CFDチャート一覧

【豪ドル】GDPの7%に達する巨額の貿易黒字と85.1%のワクチン接種率を背景に底堅い展開を想定「なっとく 豪ドル見通し」戸田裕大

なっとく豪ドル見通しタイトル

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。またオーストラリアと中国の関係、豪ドルと人民元の関係についても折を見て触れていきたいと考えています。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第6回目は「【豪ドル】GDPの7%に達する巨額の貿易黒字と85.1%のワクチン接種率を背景に底堅い展開を想定」です。

目次

1.現在の豪ドル相場の確認
2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り
3.今後の注目材料
4.相場の見通し

1.現在の豪ドル相場の確認

まずは現在の豪ドル相場を確認していきましょう。

<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>
作成時点のAUD/USDレート:0.7250

豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足

AUD/USD相場は10月末まで堅調に推移していましたが、11月2日のRBA(オーストラリア中央銀行)金融政策決定会合でゲームチェンジとなり、そこから下落トレンドに入りました。堅調な貿易収支や過去最低水準の失業率を背景に、市場では早期の利上げ観測が高まっていましたがRBAはこれを否定、米早期利上げ観測が高まる中で米ドル買いが強まり、豪ドルは売られました。

<豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足>
作成時点のAUD/JPYレート:82.75

豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足

AUD/JPYはドル円が114円を挟んで方向感なく推移しているため、AUD/USDの下落に連れて動きました。直近は上値が重い展開が続いています。

2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り

市場の注目がテーパリングや利上げなど特に米国の金融政策に集まる中で、その比較対象となるRBA金融政策に注目しておくことは重要です。ファンダメンタルズ分析の王道とも呼べる金融政策を一緒にみていきましょう

直近では11月2日にRBA金融政策決定会合が行われました。前回10月5日からの変更点を以下に記しました。

① 2021年10月5日に発表のRBA金融政策
・銀行間の翌日物貸出レート0.10%(短期政策金利)
・2024年4月満期の国債利回りが0.10%になるよう調整(目先3年までの金利低下を促す、通称「YCC(イールド・カーブ・コントロール)」)
・少なくとも2022年2月中旬まで週に40億豪ドルの国債買い入れを実施(量的緩和の継続)

② 現行(2021年11月2日に発表された)のRBA金融政策
・YCCの終了
・その他は変更なし

変更点はYCCの終了です。

ただし10月28日の債券市場で既にRBAがYCCを放棄していたので、今回のRBA決定会合でYCCが終了することは市場のコンセンサスになっていました。そのため会合の焦点は「早期の金融緩和縮小」や「利上げ時期の前倒し」でした。

またRBAの前に発表されたコアインフレも2.1%に達していたので、いよいよ早期利上げの観測が高まっていました。RBA(豪中銀)はコアインフレが2-3%に達するのは2024年以降であるから利上げもそれ以降と言うスタンスでしたが、コアインフレも上昇しているのだから早期の利上げもあり得る?と豪ドル買いが進んでいたのです。

ところがふたを開けてみると、YCCを除いて今までと変わらない金融政策が示されたので、豪ドルの早期利上げを織り込んだ買い方が投げ売り、徐々に市場の趨勢は売り優勢へと転じていきました。

なお後日に発表になったRBA金融政策決定会合の議事録に目を通したのですが、スタンスには変化の兆しも見られています。例えば会合のメンバー間ではインフレのリスクが高まっていることについては共通の認識になっていました。

それから公然と他国の金融政策を考慮するとも記載されていました。米国と明言はしていませんが、おそらくは米国のことと思います。米国が利上げをするまでは、オーストラリアもなるべく利上げをしたくないのが本音だと思います。

3.今後の注目材料

今後の注目材料を四点お伝えします。

一点目はやはりFEDの金融政策です。豪ドルが相対的に売られるか買われるかは、米ドル次第のところもあるので、米国の金融政策には注意が必要です。先週はFRBクラリダ副議長と、ウォラー理事から早期のテーパリング完了を検討する旨の発言が伝わるなど、FED(米国の金融当局)はインフレ抑制に動いてきています。現在は来年6月のテーパリング完了を見込んでいますが、これが早まるかどうか要注目です。

二点目は12月2日(木)オーストラリアの10月貿易収支です。8月に過去最大の貿易黒字(+150億豪ドル)を記録し、9月は落ち着いたものの高水準(+120億豪ドル)を維持しています。大きな貿易黒字からは豪ドル高が連想されやすいです。高水準を維持出来るかどうか注目したいと思います。

<オーストラリアの貿易収支 単位:10億豪ドル>

オーストラリアの貿易収支


三点目は12月7日(火)のRBA金融政策決定会合です。これは月一のビッグ・イベントですので、豪ドルを取引する方は必ず抑えておきましょう。いきなりの利上げ発表はまずないと思いますので、今月は量的緩和の縮小時期に注目が集まると思います。とは言え量的緩和も一旦は来年の2月まで継続が基本路線、長期間の継続が予定されているわけではないので、よほどインフレ圧力が高まった場合にのみ、緩和の縮小が検討されるのかも知れません。

四点目は12月16日(木)の11月オーストラリア雇用統計です。RBA議事録をみても雇用や賃金の上昇と金融政策を結び付けていることが伝わっています。そのため、雇用情勢についても欠かさずに見ていく必要があると考えます。

なお、オーストラリアのワクチン接種(二回)率は11月22日執筆現在で85.1%を記録しています。オーストラリアは当初よりワクチン接種(二回)率80%を閾値に定め、これを超えてから徐々にwithコロナへと移行することを表明しています。したがって、今後の経済活動はより活発になってくると思います。この点も豪ドル買い材料と見ることが出来ます。

4.相場の見通し

AUD/USDについては米ドル次第のところもありますが、基本的には底堅い展開を想定しています。

1点目の理由としては先月に引き続いてオーストラリアの強い貿易収支を挙げたいと思います。単月で120~150億豪ドルの貿易黒字は大きく、これが1年間続くと、概ねオーストラリアのGDPの7~8%に相当します。オーストラリアの経済規模対比で巨額な貿易黒字が直接的に豪ドル買い圧力になると考えると、豪ドルが大きく崩れることは想定しづらいと考えます。

2点目は高いワクチン接種率です。特にオーストラリアのワクチン接種率85.1%は米国のワクチン接種率59.1%と比較しても高いですし、オーストラリアの新規感染者数増加は歯止めが掛かってきた一方で、米国の新規感染者数は増えていることも、相対的に豪ドル買いの材料になると考えます。

ただし、米国の経済指標は軒並み強く、早期テーパリングの完了や、早期の利上げも意識されていることから過度な豪ドルへの期待は避けた方が無難でしょう。あくまで豪ドルは底堅くなるのではないか?こういった感覚を持っています。

上値の目安として、まずは前回RBAの水準0.7550、それから2021年6月の水準である0.7600を挙げたいと思います。米ドルの調整局面で、この辺りまでなら戻りもあり得るだろうと言う見方です。

急速に米ドル買いが進む場合には相対的な豪ドル安が想定されます。ただ豪ドルそのものは底堅いと思いますので、下値メドは2021年8月の安値0.7100(現在より140ポイント下)を挙げたいと思います。感覚的な予測になりますが、オーストラリアの貿易黒字やワクチン接種率の改善などを考えると0.70割れを試しに行く展開にはならないと考えています。

AUD/JPYについては、ドル円次第のところが多分にありますが、こちらも底堅い展開を想定しています。

ドル円に大きめの調整が入るかどうかを見極めていく必要がありますが、81円~82円は1ヵ月というスパンで考えれば買っていけるのではないでしょうか。もし80円より下の水準になるようなら単なる調整ではなく何か大きな理由が発生しているかも知れませんので、その場合には注意が必要です。

豪ドルはここ3ヵ月、RBAの金融政策決定会合で流れが大きく変わっています。9月は豪ドル安、10月は豪ドル高、そして直近の11月は豪ドル安で、それらのきっかけは全てRBAの金融政策決定会合でした。

したがって何はともあれRBAの金融政策決定会合に注目し、そこで大勢を判断していくのが無難だと考えています。


本日はここまでとなります。

引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。

戸田裕大


<参考文献・ご留意事項>
Reserve Bank of Australia:Minutes of the Monetary Policy Meeting of the Reserve Bank Board
https://www.rba.gov.au/monetary-policy/rba-board-minutes/2021/2021-11-02.html

Australian Bureau of Statistics:Labour Force, Australia
https://www.abs.gov.au/statistics/labour/employment-and-unemployment/labour-force-australia/latest-release

The Sydney Morning Herald:The race to end the pandemic
https://www.smh.com.au/national/covid-19-global-vaccine-tracker-and-data-centre-20210128-p56xht.html

豪州政府:National Plan to transition Australia's National COVID-19 Response
https://www.australia.gov.au/national-plan

各種チャート:Investing.com

<最新著書のご紹介>

f:id:gaitamesk:20200929125737p:plain

なぜ米国は中国に対して、これほどまでに強硬な姿勢を貫くのか?

ポストコロナ時代の世界情勢を読み解くカギは米中の「通貨覇権争い」にあります。
本書は、「最先端の中国キャッシュレス事情」「デジタル人民元の狙い」「人民元の国際化」「香港の最新情勢」など 日本ではあまり報道されない米中対立の真相に迫る、ビジネスパーソン、投資家にとって必読の一冊です。

www.fusosha.co.jp

【インタビュー記事】

戸田裕大氏レポート

【「FX実力アップ教室」はこちら】

【「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
●免責事項
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。