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超長期のチャートを眺めてみよう「元大手邦銀ディーラーが教える FX実力アップ教室」戸田裕大

FX実力アップ教室 戸田裕大

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替ディーラーとして様々な失敗を経験してきた私が、どういった工夫をして少しずつ上達していったのか体験談をお伝えしていきます。新人ディーラー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策などを通じて、読者のみなさまの実力UPの参考にして頂きたいと考えています。

第2回目は「超長期のチャートを眺めてみよう」です。

 

私が、最初に裁量で(自己の意思により)取引したのはたしか2012年頃だったと思います。記憶はかなり曖昧ですが、買ったり負けたりを繰り返しながらも、やや損失優勢だったことを、いまでもよく覚えています。

さまざまな通貨がある中で、そもそもどの通貨ペアを取引したら良いのか、どれくらいの金額を取引したら良いのか、頭を悩ませていた気がします。

多くの仲間がドル円を取引していたので、私もドル円を取引しました。それから、取引金額はリスクに対する感度が低かったからか、相対的に大きかったような気がします。

当時は、まだ若手で、体力があったので、「夜晩(よるばん)」と呼ばれるナイトシフトで働いていることが多かったです。夜の7時くらいに出社して、朝の7時くらいまで働く、そんな日々でした。

アメリカの経済指標発表はだいたい夜の9時30分ですから、その前後から相場がよく動いていました。動くものが目の前にあると取引したくなるもので、勇み足で買ったり売ったりを繰り返していました。

いつもいつも、とにかく短いチャートを見ていた気がします。記憶にあるもので、秒足(1つのロウソクが1秒)というのをみていましたが、画面が横スクロールのシューティングゲームのように流れるものだなと思っていました。

為替部門の朝は早く、だいたい朝の7時にもなるとみんな出社しているものです。昨晩の取引報告を行うために、上司のもとにいくと、ドル円の超長期のチャート画面を見せながら色々と教えて頂きました。

たしか、ドル円の40年間(現在から遡れば50年間)のチャートだったと思います。1970年代の1ドル360円の固定相場時代から、今に至るまでのチャートを見せてくれました。

少しずつチャートの期間を短くしていって、それぞれ相場の特徴についても教えて頂きました。おそらくは、「ドル円は長期視点で円高傾向」にあることや、「相場には大きなテーマがある」ことを伝えたかったのではないかと思います。

ただ、当時の私は、上司の教えに対して、ピンときていませんでした。一日に何回も何回も売ったり買ったりを繰り返していましたから、「長いチャートをみてもなにか意味があるのか?」とそんな心境だったと思います。

現在、私は改心をしまして、超長期のチャートも抑えた上で、トレードを行っています。昔の自分に言い聞かせるつもりで、超長期のチャート分析のメリットをこの場をお借りしてお伝えしてみようと思います。

以下に直近30年間のドル円チャートを作成しました。

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ドル円は1990年の円安地点と2015年の円安地点とを緑のラインで結ぶと、あしもとまで、円高が続いていることが分かります。2021年は年初から円安が進んでいますけれども、長期では円高の流れの中の、円安であることが認識できます。ですからもしかすると上値は限定的なのかも知れません。

また2011年、史上最安値の75.57円と、2015年、つまり直近の最高値125.86の「半値戻しの水準に1ドル100円」があり、ここが心理的にも、レベル的にも意識されていることが分かります。2021年初は1ドル102円、つまり長期のサポートである1ドル100円付近で支えられる形で反転を開始しました。そこから円安が進行して現在の110円台まで歩みを進めていますので、長期チャートが重要なサポートとしても役に立ったと考えています。

また今後は緑のトレンドラインを上抜けることが出来るか?そしてその次は直近高値の125.86円を超えることが出来るかどうか?意識されます。より大きな視点に立ったチャートポイントは、なおさら意識されると思いませんか?

さらに詳しく説明すると、チャートだけでなく、ファンダメンタルズの相場のストーリーがついてきます。それが例えば2012年末から始まった強烈な円安である「アベノミクス相場」であったり、パンデミックからの急激な資産価格の回復を巻き起こした「ワクチン相場」であったりするわけです。

いかがでしたでしょうか?チャート一つを取ってみても短期だけをみることは、「木をみて森を見ず」状態だと言い切れると思います。

きっとその上司は、そのままでは君は勝つのは難しいのではないか?そんなことを私に伝えたかったのではないかと思います。

さて、私からですが、初級者が陥りやすい落とし穴の一つに「木をみて森を見ず」を挙げさせて頂きます。いきなり森を見るのは難しいと思いますが、ぜひ全体を俯瞰する意識を持って、相場と対峙してみてください。きっと少しずつ成長出来ると思います。

蛇足ですが、その上司は、その後も相場で勝ち続け、現在も為替トレーディング界隈では非常に有名な方です。それこそ現在は、時の政権も耳を傾けるほどの立場にある方ですので、貴重な金言だったと思っています。


本日はここまでとなります。

引き続き、みなさんのレベルアップに役立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。

戸田裕大

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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