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「ファンダメンタルズとの付き合い方」神田卓也調査部長 FX特別インタビュー(後編)

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以下の取材記事は個人の経験や考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については充分内容をご理解の上ご自身の判断にてお取り組みください。

今回は外為どっとコム総研の神田調査部長にインタビュー。前回の中編では「復習」の大切さや、外為どっとコム総研の組織についてお伺いしました。後編では外為総研が分析する個人投資家の動向や、ファンダメンタルズ分析についてお話していただきました。

▼目次

1.「外為白書」から読み解く個人投資家の動向
2.ファンダメンタルズ分析の重要性
3.今後のカギは「利上げ」

「外為白書」から読み解く個人投資家の動向

編集部
編集部:
外為どっとコム総研が毎年発刊している書籍「外為白書」についてお伺いします。 そもそも「外為白書」とはどのような本なのでしょうか。
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神田:
まずは1年間の為替市場の振り返りを行っていまして、それが書籍のメインですね。 各月ごとにドル/円・ユーロ/円・豪ドル/円・ポンド/円、4通貨ペアの12カ月分を振り返っています。 先ほども話しましたがやはり復習が大事です。 その時、何をテーマに市場が動いていたのか勉強することが大事だと思うので、書籍をそういう形で使ってもらえればと思っています。
編集部
編集部:
ページがパラっとめくればチャートと共に当時の市況や雰囲気がすぐに見返せるので、復習には最適ですね。
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神田:
その期間中で重要なトピックを取り上げた特集記事が載っています。 そして個人投資家のFX取引動向などもまとめています。 これもさきほど話した、個人投資家がどのようなトレードをしているかを市場参加者に伝えるという意味合いから、 重要だと思います。
編集部
編集部:
「外為白書」を通して個人投資家の動向を市場に伝えているんですね。
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神田:
特に、月に一回外為どっとコムのお客様へ行っているアンケートは、毎月欠かさず12年続いています。
編集部
編集部:
外為どっとコム総研の設立時から続いているんですよね。
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神田:
そうなんです。外為総研が始まった2009年6月から12年間のデータを見ていると、個人投資家の「変遷」が分かるので、特に興味深いと感じています。
編集部
編集部:
ズバリ、個人投資家に一体どのような変化がありましたか。
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神田:
ここ10年くらいで、FX取引が非常に上手になっているという印象を受けています。
編集部
編集部:
おお、頼もしいですね。どういった点が上達しているのでしょうか。
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神田:
10年ぐらい前は「外貨ロング」の方がほとんどでした。ドル/円ならドルが上昇することを期待して、買い注文を出すということです。 それこそ外貨預金と同じ感覚ですね。
編集部
編集部:
ドル円で売り注文を出す、ショートの方はほとんどいない、みたいなことですかか・・・。
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神田:
そうそう。 だた、ここ最近はドル売り、ネット(合算)でドルショートになるケースもちょくちょく出てきています。 10年前に比べ、今はしっかりドルを売っている人もいるなあという印象です。
編集部
編集部:
10年前の相場全体がドルロングのトレンドだったということではないんですか?
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神田:
当時、例えばドル/円は、あまり値動きがない時期でした。 動かないからこそ外貨を買っていたのかもしれないですね。 ただ、ジリジリと円高だったこともあります。当時は、FXは外貨を買う取引だと思っていた方が多かったんじゃないかな。
編集部
編集部:
そうだったんですね。
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神田:
あとは、アンケートに答えてくださる方が10年前は30代が多かったのに、 今では40代の方が多くなった。(笑)
編集部
編集部:
・・・10年分、年齢がスライドしたんですね。(笑)
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神田:
そうそう。 だから若い世代、新しい人たちに増えて欲しいと思っています。
編集部
編集部:
神田部長が思う、若い世代が増えてこない要因とかありますか?
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神田:
若い人の間でFXというと、胡散臭い、いわゆる投資詐欺みたいなイメージがここ7~8年で増えてきたって印象です。
編集部
編集部:
呼び出されて情報商材を買わされたとか、聞いたことがあります。
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神田:
そう、そういう書き込みを、SNSで見かけます。 例えば自動売買ツールを買わされた、というような話です。怪しいのはツールなのであって、FX取引ではないんですよね。 そのあたりをよく知らない方からすれば、すべでを「ひとくくり」にされてしまうのかもしれません。
編集部
編集部:
そうですね。
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神田:
私たちよりも昔の上の世代は、証券会社も怪しい業界だと言われていた時期があります。 「株屋」っていう言葉があったぐらい。
編集部
編集部:
株屋ですか。
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神田:
悪い業者は、お客様のお金を持ち逃げしたり、などがある業界だったらしいです。(笑)
編集部
編集部:
でも今はそんなイメージはないですもんね。
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神田:
バブルのおかげで証券会社がクローズアップされて、クリーンなイメージになったと思っています。 だからFX業界も、世間の評価を変えていくのは何十年単位でかかると思います。 クリーンなイメージ化は厳しい課題と思いますが、地道に努力を重ねていくしかないのかなと。

ファンダメンタルズ分析の重要性

編集部
編集部:
これから為替を勉強してFXトレーダーになりたいという方へ向けて、 まずはファンダメンタルズ分析の重要性についてお伺いします。
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神田:
これまで話した通り、為替は市場のテーマがその時々で変わるので値動きの予測が非常に難しい世界です。 机上の勉強だけで為替マーケット全体の動きはまず見えてこないので、 ただ勉強すればよいというものではありません。
編集部
編集部:
はい。
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神田:
しかし、相場がすべて見とおせないからと勉強しないと、全く見えないままですが、半分でも見える中で取引を行ったほうが、結果は多分大きく違ってくると思います。 だから少しでもマーケットが見えるようにすることが大事だと思います。
編集部
編集部:
そのためには予習より復習が大事だということですね。
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神田:
その通りです。予測ばかりしても仕方ないと思います。 わたしも以前、為替の予測というものは、外れるものだと考えておきなさいと教わりました。
編集部
編集部:
先輩からそう学んだんですね。
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神田:
それで、「予測が外れた時にどうするか」「損切りをどう行うか」「ロスカットになりえるということを常に考える」などを考えて、とにかくトレードをやってみることが大事なんじゃないかなと。
編集部
編集部:
分かりました。ちなみに神田部長はテクニカル分析をどのように捉えていますか?
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神田:
日々の値動きを知るのに重要なツールだと思います。 ファンダメンタルズとテクニカル、どちらが重要だと議論するつもりは全くなく、 取引するうえでは武器になるツールかと思います。 どちらか片方に重きを置きすぎてはいけないのかなと。
編集部
編集部:
バランスがまた難しそうですね。
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神田:
為替の世界では、基本的に「広く浅く」がいいと思います。
編集部
編集部:
深く分析するよりも、柔軟さがあったほうが良いということでしょうか。
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神田:
そうですね。 あと、取引する通貨ペアは一つに絞る事はありだと思います。 ただ一つの通貨ペアしか見ないのは、良くないとも思います。 例えばドル/円の値動きにユーロ/ドルが関係するケースだったり、 場合によってはドル/トルコリラが関係することだってあり得るわけです。
編集部
編集部:
やはり市場全体を俯瞰することが大事なんですね。 では、どの通貨を眺めておけばよいですか?
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神田:
ドル、円、ユーロ、ポンド、豪ドル、カナダドル。 この6つは一応抑えておいた方が良いと思います。

今後のカギは「利上げ」

編集部
編集部:
2021年現在、上下に動きながらも米株価が最高値を更新し続けています。これはバブルといえますか?
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神田:
正直、バブルかどうかは「破裂」してみないとわからないものです。「破裂」しないまま値上がりが続くのであれば、バブルでは無かったという評価になると思います。
編集部
編集部:
なるほど。
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神田:
過去、過熱気味の相場というのは何回もありましたけど必ず「破裂」したかと言うと、そうでもないんです。
編集部
編集部:
はい。
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神田:
例えば、新型コロナショックの前からずっとアメリカの株は上がり続けています。 そういう点から、どこがバブルだというのは、なかなか難しい定義になります。
編集部
編集部:
ではバブルが崩壊するときは、どんな時なんですか?
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神田:
バブル崩壊する時のきっかけは、大体一緒でして、 中央銀行による金融引き締めが引き金になるケースが非常に多いです。
編集部
編集部:
そうなんですね。
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神田:
最近では、アメリカでバブルが崩壊したのが2000年のITバブルです。 この時もやはり米連邦準備理事会(FRB)が利上げしたことでバブル崩壊につながりました。
編集部
編集部:
ITバブルが、利上げがきっかけで崩壊したことは知らなかったです。
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神田:
私が社会人になった時のバブル景気も似ています。 1989年まで一気に株価が上がって、同じ年の5月に日本銀行が利上げを開始しました。
編集部
編集部:
それがきっかけで株価急落・・・。
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神田:
そうですね。 今は利上げという局面ではないと思うし、 テーパリングというのは量的緩和を少し絞るという話で、 これは引き締めではないですから、 今のような段階で、「バブル崩壊」というのはなかなか起きにくい。
編集部
編集部:
ただ、一時的な下落は当然起こり得ますよね。
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神田:
はい。だた大幅に下落、ということは考えにくいのかなと。 例えば台湾と中国で紛争が起きたとか、何か大きなショックがあれば おそらく一時的に急落すると思います。
編集部
編集部:
はい。
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神田:
でも、おそらく今の環境だったら下がったところで押し目買いが入ってまた持ち直していくという流れなんだろうなと思います。 利上げで金利が高くなっている時なら、 1回売った株を買い戻さずに、債券を買った方がいいや、という風になると株価が下がり続ける。
編集部
編集部:
やはり利上げがカギなんですね。
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神田:
ですから、今の局面ではまだバブルではないんだろうなと推測が成り立ちます。
編集部
編集部:
予想だにしない急激な利上げがあった場合には株価が急落する可能性はありますか?
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神田:
可能性としてはゼロではないけど、 過去1回の利上げだけでバブルが崩壊したというケースはないと思っています。
編集部
編集部:
そうなんですか?
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神田:
日本のバブルで言えば、1989年5月以降、1年で5~6回利上げしました。 利上げがきっかけで株価が下がり続けたという経緯がありました。 一度の利上げが、バブル崩壊のきっかけにはなるかもしれないけれども、 その後相場が完全に崩れるのは継続利上げの後なので、 やはりFRBにしても日銀にしても、そこは十分警戒していると思います。
編集部
編集部:
では最後に読者の方へメッセージをお願いします。
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神田:
今はネット社会になっていて、わからないことがあっても ちょっと検索すればすぐそのヒントが出てくる時代です。 ですので、わからないことを、わからないままにしないこと。 その癖をつけていけば良いと思います。 あとは、FX投資は実際にやってみないと、好きか嫌いか、自分に合うか合わないかは分からないと思うので、 いつまでも考え続けているよりは、トレードをトライしてみるのがいいんじゃないかなと思います。
編集部
編集部:
本日はありがとうございました。

PickUp編集部より

ファンダメンタルズについても気になったらすぐ調べる癖をつける、という最後のメッセージにすべてが集約されていると思います。また、FXなど新しいことに取り組む際にも、まず行動に移すことのハードルを低くする練習になる、と感じました。神田部長が中心に作成した書籍「外為白書2019-20 第11号」もぜひ手に取ってみてくださいね。
外為白書2019-20 第11号はこちら

神田卓也調査部長のTwitterはこちら

前編

中編

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投資の真髄がここにある!伝説のディーラー列伝 インタビュー記事まとめ

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kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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