長期投資・短期トレードの二刀流を使いこなす、元外銀ディーラーの野村雅道さんに、外貨の長期投資について解説をしていただきました。
長期投資はメキシコペソと南アランドが2トップ
メキシコペソと南アランドの長期投資は面白そうだ。
理由としては、通貨高の必須要因である貿易収支と経常収支が黒字となったため。
黒字国なのに金利が相対的に高い。通常、高金利国は貿易赤字ゆえに通貨が売られやすいが、そうでないのが2通貨ペアの魅力。
注意してほしいのは、「スワップポイントで儲けること」と「為替変動で儲けること」は、まったく時間軸が違うということ。
仮に金利差が5%であっても、1日分は0.0137%。1カ月で0.42%だ。
最近の為替は動かないと言われるが、それでも1日0.1%から1.0%超、1カ月では5.0%程度変動することもある。
つまり、金利差から来る利益を大きく上回る変動があるため利益にも損金にもなる。
「ガチホ」の目安は2年以上
それでも、長い投資経験から2年以上経つとスワップポイントが変動損益を上回ることがある。
5年~10年持つとさらにスワップポイントでの収益が上回ることがほとんどだ。
ただ、トルコリラだけは通貨の下落が大きく、5年ほどもってもスワップポイントの合計が為替差損をまかないきれていない。ただあと5年経てば今回の混乱を反省し金融政策が正常化し市場の信頼を得てリラ相場は安定するのではないか(景気は今も良いのだが、対米、対ギリシャなどの外交問題も気がかり)。
原則は「高金利は通貨安」、「低金利は通貨高」が経済理論である。
ただ高金利通貨が毎年毎年、金利益を上回る変動損を出すわけでない(最近のトルコを除けば)。
長く持てばスワップポイントでの収益が変動差損を上回る。
ただ手っ取り早くスワップポイントでの収益と為替変動が得られるのは稀だろう。
金利狙いの長期投資は、変動を気にしない覚悟が必要だ。
それが嫌なら変動変動狙いで常時売買すべきだ。
スワップポイントでの収益と為替変動での収益は別々で儲けたい。
円安という追い風
朗報は、21世紀になって円が弱いことだ。
20世紀の日本は膨大な貿易黒字を背景に円の独歩高が進んだ。
ただ21世紀になってからは黒字が中国へ移転し、円相場が安定あるいは円安に動いている。
金利狙いで外貨を買っても、かつてのような為替差損に見舞われないのではないか。
従ってどの通貨を選んでも為替変動に悩まされることはないのではないか。(トルコ以外では)
その他通貨の注目点
メキシコペソと南アランドに次いで推奨したいのは、経常黒字で金利も少しは高い豪ドル。
ロシアも経常黒字だが、欧米から経済制裁を受けている不安があることからの急落は覚悟しておきたい。
経常赤字のポンド、NZドル、カナダドル、米ドルもリスク選好の波にのればスワップポイントでの収益を享受できて為替変動の損も小さい。
人民元は理想的だが、中国が為替をコントロールしていることや、欧米との政治経済での対立が不安要因だ。長い目で見て、民主的で経済的にも正しい運用が出来ている国を選びたい。
高金利国は低格付けであり、かつ様々な政治・経済問題を抱えている。それゆえに高金利であることは覚悟したい。
まとめ
総合的に見て
ハイリスク・ ・・・トルコ、ロシア
ミドルリスク ・・・人民元、南アランド、メキシコペソ
低リスク ・・・米ドル、豪ドル、NZドル、カナダドル、ポンド
であろう。
※ハイリスクではレバレッジは低く、投資金額は押さえたい。
FX湘南投資グループ代表 1979年東京大学教養学部を卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。82年ニューヨーク支店にて国際投資業務(主に中南米融資)、外貨資金業務に従事。85年プラザ合意時には本店為替資金部でチーフディーラーを務める。 87年米系銀行へ転出。外資系銀行を経て欧州系銀行外国為替部市場部長。外国為替トレーディング業務ヴァイスプレジデントチーフディーラーとして活躍。 財務省、日銀および日銀政策委員会などの金融当局との関係が深く、テレビ・ラジオ・新聞などの国際経済のコメンテイターとして活躍中。為替を中心とした国際経済、日本経済の実践的な捉え方の講演会を全国的に行っている。現在、FX湘南投資グループ代表。