新聞やテレビのニュースで為替レートは、「今日の外国為替市場は、1ドル105円45銭から50銭の間で取引されています」などと報道されます。
「なぜ価格に幅があるのだろうか」と、不思議に思った人もいるのではないでしょうか。
為替は基本的に売り手と買い手が、価格や取引量を決めて売買する「相対取引」です。
つまり、提示された価格で買うのか、売るのか、その都度判断して売買されています。
言い換えると、常に売買価格が変化してしまうため、価格帯(レンジ)という方法で表示せざるを得ないのです。
もちろん、個人投資家のFX取引も、「個人投資家」と「FX会社」間の「相対取引」ということになります。
「売値(Bid)」と「買値(Ask)」と「スプレッド」
ところで、個人投資家に対して、為替レートはどのように提示されているのでしょうか。
外為どっとコムの「外貨ネクストNEO」の為替レートパネルで確認してみましょう。
このように為替レートパネルにも「売値(Bid)」と「買値(Ask)」の両方が大きく表示されています。
注意してみると、「売値(Bid)」と「買値(Ask)」で微妙に価格が異なります。
左上の「ドル/円(USD/JPY)」レートでは、「売値(Bid)」が103.476、「買値(Ask)」が103.478でした。
この「売り」レートと「買い」レートの価格差は「スプレッド」と呼ばれています。
もし、為替価格にまったく変動がない状態で、ドルを売買すると、0.1銭の費用がかかることになります。
スプレッドとは、FX取引の実質的な取引コストを意味しています。このときの「ドル/円(USD/JPY)」のスプレッドは0.001円、すなわち売買の際0.1銭のコストが発生するということです。
為替レートパネルで得られる情報
このように為替レートパネルには、FX取引をする際に必要な重要情報が提示されています。
①「通貨ペア(左が「米ドル/円」右が「ユーロ/円」)」
②「売値(Bid)」
③「買値(Ask)」
④「スプレッド(「ドル/円」0.1銭、「ユーロ/円」0.3銭)」
⑤「高値(Hi)」
⑥「安値(Low)」
⑦「変化幅(Change)」
ご覧の通り、ドルとユーロで④「スプレッド」の値が0.2銭違います。このようにスプレッドは通貨ごとに異なります。
なぜ、スプレッドの値が異なるかというと、通貨ペアによって取引量が異なるからです。
売買需要が高く、取引量の多い通貨ペア流動性が高く、為替レートの変動が比較的緩やかで安定しています。
価格が急騰、急落するリスクが少ないので、売買価格差であるスプレッドの値は小さくなります。
その一方で、需要が少なく、取引量が少ない通貨ペアは流動性が低く、売買が成立しにくいので、スプレッドの値は高くならざるを得ないのです。
ちなみにスプレッドはFX会社によって原則固定化されています。
その日の⑤「高値(Hi)」⑥「安値(Low)」そして、前日終値からの⑦「変化幅(Change)」は、日本時間を基準にしているのではなく、ニューヨーク市場のある米国東部時間が基準になっています。
つまり、東京市場ではなく、ニューヨーク市場を起点にした数値であることは覚えておきましょう。
2つの為替レートを表示する理由
さて、なぜ、FX会社はこのように2つの為替レート(2WAY)とスプレッドを同時に提示するのでしょうか。
それは個人投資家とFX会社間の取引の公平性を保つためです。
例えば、実勢相場が1ドル110円の場面において、FX会社が「売値(Ask)」を1ドル110.20円にしたとしても、「売値(Ask)」しか提示されていなければ、顧客にはその為替レートが適正かどうか判断できないでしょう。
しかも、売買で発生するコスト(スプレッド)まで明示されています。
スプレッドは原則固定ですから、投資家は明確に取引コストが把握できます。
言い換えれば、投資家を保護するような役割を果たしているのではないでしょうか。
原則固定のはずのスプレッドはなぜ広がるのか
ところが、FX会社が原則固定しているはずのスプレッドが、例外的に変化してしまうことがあります。どういうときにおきるのか、整理してみました。
①時間的要因
早朝の時間帯、年末年始、クリスマスやイースター祭などの海外休日は、通貨の流動性が低くなるので、スプレッドが広がる傾向にある。
②指標発表前後
米雇用統計のような重要指標の発表前後は動向を見極めようと、売買が手控えられ、流動性が低下したり、発表直後に注文が殺到したりして、売買が成立しにくくなることがあり、スプレッドは広がる傾向にあります。
③突発的イベント
④戦争や地域紛争が起きたり、テロが発生したりすると、インターバンク市場全体が「リスクオフ(資金を引き上げる)」の状況になるので、スプレッド幅は広がる傾向にあります。
米国大統領やFRB議長などの要人発言も、その内容次第で同様のことが起きる可能性があります。
⑤マイナー通貨ペア
マイナー通貨ペアは流動性が少ないので、スプレッドが広がる傾向にあります。
このようにスプレッド変化の鍵は通貨の「流動性」にあることがわかります。
スプレッド幅が広がっているときに取引をすれば、コストはいつもよりかかるので、取引する際には注意が必要となります。
FX会社で異なるスプレッド
スプレッドはFX取引における実質の手数料であり、原則固定となっていますが、各FX会社がインターバンク取引で提示された為替レートをもとに、それぞれで「売値(Bid)」と「買値(Ask)」を設定します。
FX会社に対してインターバンク取引の為替レートを提示してくれる銀行や金融機関のことを「カバー先金融機関」といいます。
各FX会社で、契約できるカバー先金融機関や提示されるレートが異なるため、各FX会社でスプレッドや為替レートは異なってくるのです。
言い換えると、カバー先からいい条件で売買できるFX会社は個人投資家にたいして、良い条件を提示できるというわけです。
カバー先金融機関がどこであるかということは、そのFX会社を評価する上で重要なポイントとなっています。
また、口座開設者数が多く、たくさんの顧客を抱えているFX会社は取引量が多いので、スプレッド抑えても、十分な利益が獲得できます。
そのため、スプレッド幅を狭める傾向にあります。
スプレッドは個人投資家のFX会社選びにおいて、重要な“指標”なのです。
PickUp編集部