総括
大統領の悪魔の三角形の打破宣言も貿易赤字拡大で14円から下落
(通貨最下位、株価3位)
予想レンジ トルコリラ/円 13.5-14.5
(ポイント)
*エルドアン大統領は金利、為替、インフレの「悪魔の三角形」を打破するとした
*リラ円年足は6年連続陰線、但し20年11月、12月は連続陽線
*外貨準備は増加傾向
*11月貿易収支は再び50億ドルの赤字
*12月CPIは14.60%へ上昇(前回14.03%)
*12月製造業PMIは50.8に低下(前回51.4)
*政策金利は15.00%から17.00%に引き上げ
*中銀は為替介入は行わないとした
*2020年GDPの予想は僅かにマイナス成長か
*20年の株価は世界で3位の強さ
*3Q・GDPは予想を上回った
*国民はリラより外貨や貴金属を選好している
*政府の2020年の経済成長率見通しは0.3%
*大統領はGDPを世界のトップ10に引き上げるとした
*数多くの国際紛争に関わっている
*ムーディーズが格付け引き下げ
*カタールの枠増加に続きに続き中国ともスワップ協定締結
(悪魔の三角形を打破)
エルドアン大統領は12月26日、構造改革を進め、金利と為替、インフレの「悪魔の三角形」を打破すると述べた。
大統領は、2021年は「民主的、経済的な改革の年になるだろう」と表明。こうした改革の議会への提案に向けた取り組みを「できるだけ早く」進めるとした。
「われわれはトルコ経済に対する攻撃や新型コロナウイルス大流行などによる困難をできるだけ早く克服したいと願っている。構造改革の加速によって生産と雇用に基づいた体制を構築し、金利、インフレ、為替という悪魔の三角形を打破する決意だ」と強調した。
エルドアン氏は高金利が高インフレを招くという、金融の一般常識から外れた主張を展開。トルコ経済の悪化は海外からの攻撃によるものだと訴えている。
(概況)
トルコリラは6年連続で最弱通貨となった。ただ昨年11月は最強通貨、12月は2位と健闘した。11月初めの大胆な利上げと人心の一新(財務相と中銀総裁の交代)で2020年の安値の12円から14円まで回復した。欧米から課された経済制裁も思ったほど厳しいものでなかったこともリラを支えた。
その間、400億ドル割れを懸念された外貨準備が500億ドルまで回復してきたこと、10月貿易赤字が23億ドルまで縮小したことも好感された。ただ年末に発表された11月貿易収支は再び50億ドルの赤字と拡大したことで再び14円を割り込んだ。
2021年も市場から信頼感を得ることが出来る金融政策が肝要だ。南アランドやメキシコペソのような回復がなかったのは、鉱産物資源を持たず中国景気の恩恵を受けなかったことだ。対中貿易依存度も低い。利上げだけでは国内経済の負担も大きく持続的なリラ高には繋がらないだろう。また数多くの海外との紛争に関与していることもリラを不安定にさせている。
(トルコ中銀、物価安定を最優先 為替介入は行わない)
トルコ中銀は12月24日の政策決定会合で、主要政策金利の1週間物レポレートを15.00%から17.00%に引き上げた。利上げ幅は予想より大きく、中銀はインフレを持続的に引き下げるために金融政策を「断固として」引き締め的に維持する姿勢を示した(12月CPIは14.60%へ上昇)
また為替レートを特定の水準に誘導するための市場介入はしないと表明し、外貨準備を透明性の高い形で増やしていくと述べた。
(欧米との関係改善に意欲)
エルドアン大統領は12月23日、米国およびEUとの関係改善への意欲を示した。
米政府は、トルコがロシア製地対空ミサイル「S400」を購入した問題で制裁を発動。EUも、トルコが東地中海ガス田探査を巡って加盟国のギリシャ、キプロス両国と対立している事態を受け、制裁を準備している。
こうした状況についてエルドアン氏は、トルコと米国、EUの関係は「無理やり作られた問題」のために試練にさらされ、東地中海ガス田とS400の双方で二重基準が当てはめられていると指摘。ただ事態は好転すると期待した上で「われわれは来年を迎えるに際して、EU、米国との関係の新たなページを開きたい」と語った。
さらに同氏は「われわれは多国間の政治的、経済的、軍事的な協力措置が、米国との深く根ざした絆の代わりになるとは考えていない。またEUに対しては、トルコと距離を置く戦略的な盲目さを捨て去ることを希望する」と付け加えた。
(ワクチン状況)
トルコはロシアが開発した新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の国内生産を目指すと表明した。また中国のシノバック・バイオテックが開発したワクチン「コロナバック」を5000万回分購入することで合意。さらに米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチン450万回分の供給を受けるほか、独自のワクチンの開発も進めている。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
年足は6年連続陰線だが月足は2か月連続陽線
日足、年末にボリバン3σ上限に達し反落。。12月30日-1月4日の下降ラインが上値抵抗。12月28日-31日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。
週足、先週までは3週連続陽線。12月21日週-28日週の上昇ラインがサポート。
6月8日週-12月28日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン中位越え。5週移動平均上向き。
月足、20年11月、12月は19年6月-7月以来の連続陽線となった。11月-12月の上昇ラインがサポート。19年12月-20年1月の下降ラインが上値抵抗。まだボリバン下限。5か月移動平均は下向き。
年足、6年連続陰線。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
英・トルコが貿易協定延長、EU離脱受けて
トルコと英国は12月29日、自由貿易協定(FTA)を延長することで合意した。英国はEUから正式離脱するが、トルコとの貿易は従来通り維持される。
協定は21年1月1日に発効した。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。