▼様々な要素がメキシコペソをサポート
▼金融政策
▼メキシコペソの予想
様々な要素がメキシコペソをサポート
ドル/メキシコペソ、ペソ/円ともに11月に入り5%以上上昇しています。メキシコペソ上昇の材料を探ってみたいと思います。
まず今月は新興国通貨が全般的に堅調に推移しています。米大統領選挙を通過して市場全体がリスクオンに傾く中で、ドルは全般的に売られたことが新興国通貨にとっても好材料になっています
ファイザー、モデルナの新型コロナウイルスワクチンの有効性が確認されワクチン配布が近づいていることも、感染者数が多いメキシコなどの新興国には好材料です。
金融政策のところでも書きますが11月12日にメキシコ中央銀行が金利を据え置いたことでペソ高が一段と進みました(ドルペソ20.60→20.20、ペソ円5.1→5.2円)
メキシコの代表的株式指数のボルサ指数は10月30日の36,987.86から11月18日には42,252.61へ14%ほど上昇しています。
11月に入りWTI原油先物が36ドル台から42ドル台に上昇していることも産油国のメキシコにとっては好材料になっています。
米大統領選挙の結果は最終的に出ていませんがバイデン氏がほぼ確実で、トランプ大統領との間でメキシコが貿易問題や国境の壁に関してかなり譲歩したことと比較すればバイデン政権の誕生はメキシコにとっては対米関係の改善が期待できる可能性があります。
11月9日にINEGI(メキシコ国立統計地理情報院)が発表したメキシコの10月の自動車生産台数は37万7829台と前年同期比9%増加し、新型コロナ感染拡大で稼働停止なっていたところから回復しています。1~10月の生産台数は246万5439台と前年同期比ではまだ25%下回っていますが、自動車の生産、輸出拡大は明るいニュースです。
このようにドル安という流れとともに、メキシコ固有の材料もメキシコペソの上昇の要因になっています。
金融政策
メキシコ銀行は11月12日に行われた金融政策会合で政策金利を4.25%に据え置きました。事前の予想では据え置きと利下げの予想は拮抗していました。中銀としては新型コロナウィルスの感染拡大による経済減速を配慮しながらも政策目標を上回るインフレ率を重視する形となりました。
10月の消費者物価指数は前年同月比で4.09%に上昇し、中銀の政策目標の上限である4%を3か月連続で超えています。天候不順による食品の上昇が物価上昇の原因でした。
メキシコ中銀は声明で「経済活動は感染拡大前に戻っておらず、不確実性や下振れリスクがある」と指摘しています。また今年度のGDPは-9%になると予想しており経済刺激的な面からはもう一段の利下げも選択肢になっていると思います。実際11月の会合では5人中1人の委員が0.25%の利下げを主張しました。
またロペスオブラドール大統領は10月23日の会見で、さらなる利下げが必要と述べています。
次回12月17日の会合では物価動向次第では利下げの可能性もあります。
景気次第で据え置きとなればさらにメキシコのサポート材料になります。
メキシコペソの予想
ドル/ペソは11月に入り21.242ペソでオープンし20日には20.1096で終了し5.33%のドルの下落・ペソの上昇となっています。先月のレポートで指摘した20.84の3月以降の重要サポート下抜けして一時20.0428ペソまで下落しています。節目の20ペソ付近は2月の安値18.50から4月の高値25.77の78.6%戻しにあたり重要なサポートレベルです。20ペソ付近がサポートされれば20~20.84ペソのレンジを予想します。
日足のRSI(パラメーター7)を見ると23.955付近に低下しており、かなり低いレベルで底値圏である可能性はありますが、すぐに底打ちするかどうかはわかりません。
20ペソを下抜けする場合は上昇前の安値19.10ペソ、18.50ペソ付近がターゲットになります。
ペソ/円は11月に入り4.903円でオープンし20日には5.164円で終了し5.32%の上昇となっています。
3月以降のペソ/円の高値は5.166円(3月10日)5.105円(5月5日)、5.0354円(9月15日)、5.024円(10月23日)で5~5.16円付近が長期のレジスタンスになっていました。
また2月19日の高値6.011~4月6日の安値4.222円の50%戻しが5.1円付近になっています。
25日移動平均線が5.062円、60日移動平均線が4.976円、250日移動平均線が5.028円に位置しており中長期の移動平均線が上向きで5円付近に集中しています。5円付近が重要なサポートとなりここが維持できればもう一段のペソ高を予想します。
短期的には11月9日の高値5.236円、38.2%戻しの5.32円付近がターゲットになります。
ただ5.17~5.4円付近は3月の下落前にサポートされていた長期的に重要なサポートだったところで、現状はまだその下にいます。ここを完全に抜ければペソ/円の長期的な上昇を期待できますが、ここを上抜けできないようであれば、しばらくもみ合いになる可能性があります。
5円が下抜けした場合は4.7~5円のレンジが予想されます。
メキシコペソ 特設サイト:
メキシコペソ(MXN)の特徴と今後の見通し│初心者にもわかるFX投資 | 外為どっとコムのFX
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。ブログ「YEN蔵のFX投資術」、メルマガ「YEN蔵の市場便り」で個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。