総括
大統領の決意が試される今週の政策金利決定
(通貨最下位、株価3位)
予想レンジ トルコリラ/円 13.0-14.0
(ポイント)
*大統領はGDPを世界のトップ10に引き上げるとした
*大統領は中銀の政策を支持、通貨の信頼を再構築するとした
*経常・貿易収支以外の経済指標は強い
*外貨準備は減少中
*今週の政策金利は引き上げか
*通貨、株価、長期債でトリプル高が進んだ
*中銀総裁は更迭、財務相は辞任
*新中銀総裁は物価安定へあらゆる政策ツールを躊躇なく活用すると強調
*バイデン新米国大統領誕生やワクチン開発進展でもリラは急騰
*9月は64億ドル介入か
*10月消費者物価は11.89%
*株価は世界で3位の強さ
*対仏関係さらに悪化、トルコのみならずイスラム諸国が仏製品をボイコット
*その他数多くの国際紛争に関わっている
*ロシア製ミサイルの試射に米国が反発
*米議会はロシアへのミサイル売却問題で制裁を決定
*ムーディーズが格付け引き下げ
*エルドアン大統領は20年プラス成長を予想、政府と民間の成長予想に差異
*2Q・GDPは前年比9.9%減で、約10年ぶりの縮小
*カタールの枠増加に続きに続き中国ともスワップ協定締結
(大統領の野望は信頼を勝ち得るか)
エルドアン大統領は、トルコは政治的な障害を克服し、経済成長と雇用、輸出の改善に向けて引き続き取り組むと強調した。GDPは世界のトップ10入りを目指すとした(現在19位)。
また大統領は「中銀の政策を十分にサポートする」と発言し、これまで対立することが多かった中銀を支持する姿勢を示したことからリラ高が進んだ。
利下げを繰り返し求めてきた大統領は、新たな成長戦略が物価や金融・財政面での安定性に基づくと表明。 枯渇した外貨準備と通貨への信頼を再構築する必要があると述べた。その上で、「われわれは、インフレと経常赤字を起こさず、適正な雇用を創出する成長構造を構築しつつある」とし、「厳しくても正しい政策を実行する」と強調した。
(政策金利は引き上げか)
今週は政策金利が15%に引き上げられる予想だ。11月に入り人心一新の効果がありリラは上昇している。ウイサル中銀総裁とアルバイラク財務相が相次いで辞任した。中銀のアーバル新総裁は、初の公式見解として、透明性・説明責任・予測可能性の原則の枠組みの下、政策対話を強化する考えを表明した。物価安定の目標達成へあらゆる政策ツールを躊躇なく活用すると強調した。
新財務相のエルバン元副首相は、市場を重視した変革を行い、国内外の起業家のために投資環境を改善すると述べた。制度強化が重要で、財政規律は現実的なリスク管理を通じて維持されると指摘した。マクロ経済の安定性を強化しつつ、ミクロ改革を含む市場に優しい変革プログラムに注力する、特に税制度の予見可能性を高めるとした。また、生産プロセスを輸出に向けた構造に変えることにより、国内の生産能力を高めるとも述べた。
(11月はトリプル高)
米国バイデン新大統領の誕生が米国と中国や新興国との外交・経済関係を改善するとの期待感を生じさせたこと、米製薬大手ファイザーが新型コロナウイルス感染症ワクチンの治験で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表したことなどもリスク選好が大きく進めた。特にトルコリラは人心一新での新政策の期待も加わり、先週は対円で12.72%高となった。株価も買われた。10年国債金利も14%を割り込み(債券が買われた)12%台へ低下した。トルコでは珍しいトリプル高となった。 係争地ナゴルノカラバフを巡り衝突していたアゼルバイジャンとアルメニアが、ロシアのプーチン大統領の仲介で停戦に合意したこともリラを支えた。トルコはアゼルバイジャンを支援していた。
(市場の今後の見方)
エルドアン大統領が経済運営で主流に近いアプローチを容認するとの見方が広がるなか、リラは大幅高を演じた。
フィッチは、中銀総裁の交代は「金融政策に対する信頼性向上もたらす可能性がある」との見解を示した。ただ、近年、国内の公共機関に対する前例のない権力を手に入れ、閣僚に忠誠と服従を要求するエルドアン大統領が政治手法を改めた可能性は低いとして、悲観論者は警鐘を鳴らす。
エルバン新財務相は大統領と率直に話はするものの、最終的には大統領の希望に従うとみられている。実業界では、「彼は大統領に真実を語るだろうが、ノーとは言わない」とし、「大統領が言葉にしたことが最終決定になる」と語られている。
(失業率、経常収支、外貨準備、小売売上、鉱工業生産は)
8月失業率は13.2%で7月の13.4%から改善した。
9月経常収支は23.64億ドルの赤字、赤字は10か月連続
11月6日付け外貨準備は419.1億ドルで前回の422.6億ドルから減少した
9月小売売上は前年比7.8%増で8月の6.0%増から改善した
9月鉱工業生産は前値日8.1%増で8月の10.6%増からは縮小
テクニカル分析(トルコリラ/円)
急騰後、ボリバン上限で一服
日足、11月5日-6日の下降ラインを上抜き急騰。ボリバン下限から一気に上限へ。ただ上限でもみ合っている。11月13日-16日の下降ラインが上値抵抗。12日-16日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。雲の中に入れず。
週足、10月26日週-11月2日週の下降ラインを上抜き急騰しボリバン中位に近づく。6月8日週-7月20日週の下降ラインが上値抵抗。11月2日週-9日週の上昇ラインがサポート。
月足、9月-10月の下降ラインを上抜く。7月-8月の下降ラインが上値抵抗。まだボリバン下限。
年足 5年連続陰線、今年は陽転して始まるも陰転。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
エルドアン大統領が北キプロス訪問、南北分断の固定化を主張
エルドアン大統領は11月15日、トルコ軍が駐留している北キプロスを訪問し、キプロス島の「2国」分断を永続するのが望ましいと述べた。この訪問をめぐっては、国際的に承認されている南側からは挑発行為との非難が上がっている。
キプロス島は、EU加盟国で南側の3分の2を支配しているキプロスと、トルコ軍が駐留している北キプロスに分断されている。
トルコ政府しか承認していない北キプロス・トルコ共和国の独立宣言から37年を迎えたことで同島を訪問したエルドアン氏は、「キプロスには、2つの民族と2つの独立した国がある」「独立した2国に基づいた解決策のために協議を行うべきだ」と述べた。
EUのボレル外交安全保障上級代表は、エルドアン大統領の北キプロス訪問を非難し、「EUからのメッセージはとても明白だ。キプロス問題の包括的解決には、国連安保理の決議関連に基づくほかない」とする声明を発表した。
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