2019年のマーケットの主役は、ポンドであった。2020年も引き続き、主役を引き渡すつもりはなさそうである。
そこで早速、最新のポンドを取り巻く注意点をまとめてみたい。
▼注目点①:新型コロナ第2波リスク
▼注目点②:Brexit交渉
▼注目点③:英中銀の動き
▼ポンド見通し
注目点①:新型コロナ第2波リスク
9月26日の週末に、ロンドンにある32区全てが「ロックダウン候補リスト」に載った。既にロンドン市長がロックダウンの可能性を示唆しており、前週からロンドン市民はトイレットペーパーやパスタ、缶詰などの買い置きに走り始めている。9月24日からレストランやパブに代表されるホスピタリティ・セクターの営業時間は、22時までとなっており、会社に行かずに仕事が出来る人は、出来る限り自宅で働くよう、政府からの指示も出た。
わずか1ヶ月前に、ボリス・ジョンソン首相(以下、ボリス)が、「出来る限り、職場に行って仕事をするように」と、国民に呼びかけてからわずか数週間後の方向転換である。
注意すべき点:
英国北西部の都市では、地域限定のロックダウンを8月末から始めているところが複数ある。しかし、経済の要であるロンドンのロックダウンとなると、経済・金融・小売・物流など影響は非常に大きくなるだろう。
ロンドン・ロックダウンの発表は、ポンド売りに繋がるだけに、注意が必要である。
注目点②:Brexit交渉
9月28日週に、EUと英国との間で第9弾交渉が行なわれるが、これが10月15/16日のEUサミット前の最後の公式交渉となる。ボリスは、交渉合意期限を10月15日に設定しているため、EUサミットまでの合意に失敗すれば、一気に合意なき離脱への道を歩むことになるかもしれない。
https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/european-council/2020/10/15-16/
出典: 欧州委員会
注意すべき点:
先月のコラム記事でも書いたが、ポンドはBrexitに関する悪材料をかなり織り込んでいる。そうは言っても、合意なき離脱が現実となれば、悲観色から来るもう一段のポンド安は覚悟しておくべきであろう。
注目点③:英中銀の動き
日本でも報道済みであるが、英中銀はマイナス金利導入を真剣に考えているようだ。まだ決まった訳ではないとベイリー総裁は語っているが、導入するつもりがないのであれば、ここまで頻繁に話題にのぼってこないであろう。
ただし、英中銀は今年第4四半期から技術的な検討に入るので、実際に導入されるとしても早くて来年であろう。
注意すべき点:
マーケットでは、マイナス金利導入は、早くて来年5月くらいを予想している。あれだけマイナス金利に否定的であった英中銀が検討を始めたこと自体、私には想定外であった。
新型コロナ感染で経済がガタガタになり、これから本格的に失業者が増える。そこにBrexitの移行期間終了と合意なき離脱が続けば、マイナス金利導入が一気に現実味を帯びてくるに違いない。
ポンド見通し
ポンドの先行き見通しを予想するのは、非常に難しい。というのは、10月15/16日のEUサミットまでに、奇跡的にBrexit合意間近!というヘッドラインが出ないとは限らないからだ。
2019年10月、絶対に無理と言われていたEU離脱協定案を、わずか1日で合意に持っていたアイルランドのバラッカー元首相とボリスである。また同じように、最後の最後で逆転ホームランとなるのでは?という淡い期待が、マーケット参加者の間には存在する。
こちらはポンド/ドル週足チャートであるが、当面は水色ハイライト(1.32ミドル~1.3500)と黄色のハイライト(1.2500~1.2700)の間、つまり赤いラインで示した1.2700~1.32ミドルのレンジを想定している。
元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。