第99代内閣総理大臣として、菅義偉氏が就任した。安倍内閣で官房長官を務めた同氏は、言うまでもなく安倍路線の最も正当なる継承者だ。菅総理自身、アベノミクスを引継ぎ強化する、と明確に述べている。その上で、菅総理による経済運営に関して、以下の点に注目したい。
第一は、新設されるデジタル庁が、実効性のある組織になるかどうかだ。コロナ危機で、日本のデジタル化の遅れが明確になった以上、こうした組織を設けることには大きな意義がある。しかし、より重要なのは、これによって縦割りだった各省庁の政策に「デジタル」という横串が入ることだ。縦割り行政の打破こそが、菅総理の最大の狙いである。これを、スピード感を持って実行できるか、が注目される。
第二は、政権運営を安定させるために、何らかの「アーリー・サクセス」が実現でできるかどうかだ。現状の高い支持率を維持するためには、今度の内閣はどこか違うぞ、と国民が実感できるようにしなければならない。その意味で、総理自身が打ち出した携帯料金引き下げ、不妊治療の保険適応などを、短期間で実現できるかどうかが試される。菅総理の政治的腕力が期待される。
株式会社外為どっとコム総合研究所
特別研究主幹
慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵
1951年生まれ。1973年一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。ハーバード大学・ペンシルバニア大学客員研究員、大蔵省財政金融研究室主任研究官、大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、国際経済研究所客員フェロー、慶應義塾大学総合政策学部助教授を経て、1996年慶應義塾大学教授に就任。 2001年には、小泉内閣発足に際して 国務大臣・経済財政政策担当大臣に就任。その後、金融担当大臣・経済財政政策担当大臣、 内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策)、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、総務大臣(郵政民営化担当)を歴任。閣僚時代には、不良債権の処理、郵政民営化などに尽力し、小泉内閣が標榜した「聖域なき構造改革」を推進させた。