総括
経済活動再開を好感
通貨最下位、株価9位
予想レンジ 南アランド円 5.6-6.6
(ポイント)
*5月は対円で6.23%、対ドルで5.63%上昇
*対円では5か月ぶりの月足陽線
*ただ年初来では最弱通貨
*外出などの制限を6月1日から大幅に緩和
*総額205億ドル相当のインフラ整備公共事業に乗り出す
*S&Pの成長率見通しはマイナス4.5%、財政赤字過去最悪
*政策金利は0.5%引き下げられ3.75%となった
*7月まで計画停電はない見込み
*南ア航空は清算中
*世界各国の経済再開でややリスクオンの流れとなる
*中国と首脳会談を行う
*金価格上昇で外貨準備も増加
*3月の企業景況感指数が悪化
*直接投資が減少、海外投資家は株式を売り越した
*中銀は国債購入を開始、流動性を供給
(先週は最強通貨、年初来では最弱通貨 経済活動開始)
5月は対円で6.23%、対ドルで5.63%上昇し、対円で5か月ぶりの月足陽線となった。中国を中心とした世界経済の再開がリスクオンの流れとなり南アランドを支えた。
ただ年初来では依然最弱通貨で20.77%下落している。コロナウィルス感染問題では、政府は、外出などの制限を6月1日から大幅に緩和し、経済活動の再開を一段と進めると発表した。ラマポーザ大統領は、「制限措置は弱い人々を最も苦しめた。今こそ仕事を再開するときだ」と述べた。具体的には、すべての製造業や鉱業、それに商店などが再開し、禁止されていた酒の販売も条件つきで認められるようになるほか、学校も段階的に再開する。大統領はまた「感染は急増し始めていて、今後さらに拡大する」と述べて国民に感染防止策の徹底を呼びかけ、経済活動との両立をめぐり、厳しいかじ取りを迫られている。
政府は、景気対策として、総額205億ドル相当のインフラ整備公共事業に乗り出すことを計画している。対象となるのは鉄道、港湾、エネルギー、情報技術、水道、清掃、住宅といった分野。南アは新型コロナのパンデミックに見舞われる前から景気後退に陥っており、中銀は今年の成長率がマイナス7%になると予想している。
「S&Pの成長率見通しはマイナス4.5%、財政赤字過去最悪に」
S&Pは、南アの今年の成長率について、新型コロナウイルスのパンデミックが生産や消費に打撃を与えるとの理由から、マイナス4.5%になるとの見通しを示した。
S&Pは4月、南アの長期外貨建て格付けを「BB」から「BBマイナス」に、長期自国通貨建て格付けを「BBプラス」から「BB」にそれぞれ引き下げた。既に低迷している経済と税収が新型コロナ関連の問題でさらに相当な下押し圧力を受けるため。今回の見通しに関しては「厳しいロックダウンで経済の大部分が止まり、対外需要の見通しが著しく弱まっているほか、信用環境が引き締まっている点を踏まえれば、新型コロナはGDP成長率に重大な圧迫を加える」と説明した。
来年の成長率はプラス3.5%と見込んでいる。
マクロ経済環境悪化は歳入にも影を落とし、今年の財政赤字の対GDP比が13.3%と過去最悪になるだけでなく、ネットベースの公的債務の対GDP比は年末までに75%を超え、2023年までに85%に達する見通し。
(今年の鉱業生産は8─10%減)
南アの鉱業団体は、新型コロナウイルス感染流行のため同国の今年の鉱業生産は前年比8-10%減少するとの見通しを示した。
南アの鉱山業者はプラチナとクロム生産量で世界最大、金とダイヤモンドでも世界有数の産出を誇るが、新型コロナウイルス対策での3月下旬からの全土封鎖に伴い、休業を余儀なくされていた。
産金のハーモニー・ゴールドは、6月1日から認められている全鉱山の完全操業再開以降、同社鉱山が実際にフル操業に戻るには1カ月かかるとの見方を示した。同国では5月1日から露天掘りの完全再開が認められた一方、対人距離を取りにくい深部採掘は50%の復旧に制限されたままだ。
(自動車販売の再開も前途多難)
貿易産業競争省は、自動車販売の再開を段階的に認めると発表した。3月27日から全国でロックダウンが開始された後、食品や医療品など生活必需品の販売のみが許可され、必要不可欠なサービス・財以外に分類された自動車の販売は認められなかった。5月1日には新型コロナウィルス感染への警戒レベルを5から4に引き下げられ、自動車製造では従業員50%まで出勤可(レベル5では出勤不可)などの緩和策が取られたが、販売に関しては「特定の指示」の発表が待たれていた。
政府は、レベル4の段階でも、新車・中古車の売買、委託者ブランド製造(OEM)メーカーや輸入者による新車・中古車の卸売り、通関に係る厳格なガイドラインに基づく自動車の輸出入などを認めた。その上で、3段階にフェーズを分け、感染防止の対策を講じることを条件として、自動車販売を認めると発表した。
景気低迷が長引く南アでは、2019年の自動車販売台数は53万台と2年連続で減少したが、国内生産台数は63万台と3年連続で増加した。しかし、ロックダウンの影響により、2020年4月の新車販売台数は前年同月比で98.4%減になると、南ア自動車製造者協会(NAAMSA)は5月5日に発表した。生産および販売は部分的に再開されたものの、新型コロナ感染拡大による自動車産業への影響は長期化する見込みだ。
テクニカル分析(ランド/円)
5月は5か月ぶり月足陽線
日足。ボリバン上限から小反落。5月28日-29日の下降ラインが上値抵抗。5月29日は下ヒゲ長い。5月18日-29日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。ボリバン上位。雲中。
週足。ボリバン内へ戻り4月6日週-5月11日週の下降ラインを上抜き上昇。5月18日週-25日週の上昇ラインがサポート。2月17日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。
月足。5月は5か月ぶり月足陽線。ボリバン内へ戻す。2月-3月の下降ラインが上値抵抗。4月-5月の上昇ラインがサポート。
年足、16年-19年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
喜望峰
外出禁止令効果か 南アで凶悪犯罪激減
犯罪の多さで悪名高い南アで、凶悪犯罪が激減している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出禁止令の影響とみられる。
南ア警察当局犯罪統計によると、外出禁止令が発令された3月下旬から5月19日まで約2か月間の犯罪発生件数は、殺人が前年同期比63%減の1072件、性的暴行が同82%減の919件、強盗が同63%減の5397件だった。 一方で新たな犯罪が増えている。輸入されたマスクや防護服が空港で盗難に遭う事件が相次いでいると報じられている。
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