総括
景気悪化の円高、政府沈黙
ドル円=102-107、ユーロ円=116-121 、ユーロドル=1.11-1.16
通貨ごとの注目ポイント
*円通貨2位、株価11位、景気悪化に貿易黒字で円高、介入は期待薄か
週末に発表された中国の1-2月の貿易収支は、前年比で輸出が17.2%減少に対し輸入は4%減少に留まった。日本の貿易統計は2月上中旬分まで発表されているが、中国とは対照的に輸出は0.8%減少だが、輸入が16.6%と大幅に減少した。単純に考えれば日本の中国からの輸入が激減したということで、貿易収支の改善となり円高要因となる。
昨秋の消費増税から日本の10-12月期が大幅マイナス成長となったが、今週発表される国内経済指標も弱くなりそうだ。GDP改定値も下方修正予想、2月景気ウオッチャー調査は30台に落ち込む予想、短観の前哨戦である法人企業景気予測調査も悪化しそうだ。現在、新型コロナ感染抑制のために日本の経済活動が自粛されていることもあり、消費活動は大きく落ち込むので輸入はさらに減少すればこれも円高要因となる。3月はリパトリの円買いも出ている。唯一巨額円売り要因と見られていた2兆円規模のセブン&アイの米企業買収案件は中止となった。また麻生財務相は「市場の動き見てあわてて対応変える必要あるとは思わない」と発言し市場を失望させている。G7でコロナ感染抑制に関わる協調経済対策はとられないのだろうか。
*米ドル通貨5位、株価(NYダウ)10位、NY州の非常事態宣言、FRBは量的緩和拡大も示唆
レバノンのデフォルトや新型コロナウィルス感染者が増加したNY州の非常事態宣言など週末にはまた不穏なニュースが出た。先週のNYの株は私にとって大きく下落した印象であったが、週間ではダウが1.79%高、ナスダックが0.1%高であった。日々乱高下したが元に戻った。2月の雇用統計が、非農業部門の雇用者数が前月から27万3000人増と好調なペースを維持したこともある。緊急利下げがあったが、新型コロナウイルスウイルスの感染への不安心理を抑制するための意味があった。
ただ世界的な不安もあり、FRBはさらに金融緩和を続ける見通しが強い。4月末までに政策金利をゼロ近辺まで引き下げるとの見方が強まっている。ローゼングレン・ボストン連銀総裁は、新型コロナウイルスの流行により、経済刺激策として量的緩和政策の導入を余儀なくされた場合、より広範な証券や資産を購入対象にすべきと述べた。それには米議会が決めたFRBの責務を変更する必要があるとした。米国でのマイナス金利導入に関しては懐疑的な見方を示した。
貿易需給では1-2月の中国の輸出が大幅減少したが、これが続けば米国赤字の減少となり、思いがけぬトランプ大統領の貿易赤字縮小の目標に近づくこととなる
米ドルはさらにドルインデックス100近くから下落。背景にはユーロの経済指標によるユーロドルの上昇が大きい。
*ユーロ通貨3位、株価12位(DAX)、指標改善でユーロ強い、さあECBは協調利下げに参加するか否か、イタリアは危機的
2月20日のユーロ圏消費者信頼感の改善より対ドルで1.07台から1.13台まで上昇したユーロであるが経済指標は先週も改善が続いた。普段のECBなら利下げなんてもっての外であり、金融緩和の縮小も考えるところだろうが、新型コロナウィルス感染拡大を経済的にも支援する声明を公表したG7に従い、0.1%中銀預金金利を引き下げる予想が市場にはある。一方、エコノミストでは、0.1%引き下げる予想は少ない難しい局面だ。
新型コロナウイルスの感染者が急増しているイタリアでは、感染の中心となっている北部ロンバルディア州などが、全面的に封鎖される可能性があることがわかった。ミラノを含むロンバルディア州や、近隣の11州の封鎖措置を盛り込んだ新たな法令が施行されるという。封鎖対象となる地域では、移動が大幅に制限されるほか、美術館、スポーツジム、スキー場などの施設も閉鎖され、現在の休校措置についても4月3日まで延長されるようだ。
イタリアでは、欧州で最も多くの感染者が確認されていて、7日には、前日から1247人増えて感染者は5883人となりました。死者は前日から36人増えて233人となり、これは中国に次いで世界で2番目に多い数となっている。
*ポンド通貨6位、株価13位、去年の勢いなし、政策金利決定は3月26日で時間あり
昨年は主要12通貨ではメキシコペソに次いで強かった英ポンドだが、現在はユーロにも抜かれ6位に位置している。英国のEU離脱を終えてからは元のやや弱いポンドとなっている。経済指標もマチマチであり、経常収支は従来から赤字なので強さは持続はしない。G-7、G20で新型コロナ肺炎に関わる協調利下げが続いているが、英国の次の政策金利決定は3月26日でまだ時間があり、コロナ感染の拡大状況を見守れる。
今の処は、3月の会合で0.5%の利下げを決定すると予想されている。英中銀のベイリー次期総裁は、利下げに関する決定をする前に、新型ウイルスによる経済的影響がより明らかになるまで待つべきと述べた。
一方、EUを離脱した英国とEUの将来関係を巡る交渉の初会合が5日閉幕した。浮かび上がった対立点は漁業や司法など4分野だ。EUのバルニエ首席交渉官は「深刻な意見の不一致がある」と述べた。EU法令を英国に適用する「移行期間」は年末までの予定。それまでに対立を解消できなければ双方の経済社会が混乱に陥る恐れがある。
*豪ドル通貨9位、株価7位、豪はG7に協調、LNG価格急落は痛い
リスク回避と言われる中でも先週、豪ドルは対ドルで上昇した。G7の共同声明(コロナ肺炎への対策)に従い、G20の豪も協調しFRBに追随し利下げとなった。政策金利を0.75%から0.5%に0.25%引き下げた。
ロウ総裁はで、新型コロナウイルス流行は豪経済に「重大な」打撃を与えているとし、影響の大きさやどれだけ長く続くかを予想するのは難しいとの見解を示した。前週行ったエコノミスト調査では利下げを予想したのは40人中2人にとどまっていたが、急展開となった。観光、輸送、宿泊施設、小売業が、2月以来導入された中国に対する渡航制限の打撃を受けている。
4QのGDPは前年比+2.2%となり予想の+1.9%を上回った。一方、1月の小売売上は前月比0.3%減と、予想の前月比横ばいを下回った。1月の統計には新型コロナウイルスの感染拡大の影響はみられなかったとされている。
豪はネットで原油輸入国であるが、このところの原油価格の急落はLNG価格の下落にも繋がっており豪にも悪影響を及ぼすだろう。
*NZドル通貨10位、株価2位、依然、通貨安株高続く、乳製品価格は下落
中国依存度が高いというイメージで豪ドルと並び売られているが、株価は上海総合指数と首位争いをしている強さがある。豪ドルはLNG価格の下落で売られているが、NZは鉱物資源の生産は乏しいので影響は受けずむしろメリットとなる。ただ中国向けの精肉、乳製品、木材などの輸出減少は心配である。フォンテラ社の乳製品オークションでは3回連続価格が下落している。
NZ中銀は十分に機能する金融システムの確保に引き続き努めると表明するとともに、次の金利決定は予定通り3月25日に行うとした。また、3月10日に非伝統的な金融政策ツールに関するハイレベル原則について声明を出すと発表した。
さて保健省は2月28日、国内で初めて新型コロナウイルスの感染者を確認したと発表した。感染が確認されたのは60代のNZ永住者で、2月26日にイラン発のインドネシア・バリ経由でオークランドに着いた航空機を利用していた。保健省が最も厳しい渡航制限がかけている国は中国とイランで、過去14日以内に両国への渡航歴のある外国人は原則としてNZ入国を禁止している。春節で帰国した中国人留学生が再入国できず、大学など教育現場でも深刻な影響が出ている。
テクニカル分析
*ドル円=「2週連続ボリバン下限下抜け」
日足、ボリバン上限上抜けから一気にボリバン下限下抜けへ。下限は106.32。2019年8月26日-20年3月6日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。
週足、ボリバン上限越えから一気にボリバン下限下抜き。19年8月26日週-20年2月24日週の上昇ラインを下抜く。2月24日週-3月2日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、19年9月-20年1月の上昇ラインを下抜く。上ヒゲの長い2月月足で3月は下落スタート。ボリバン下限の105.20あたりに到達。
年足、4年連続陰線。陰転。16年-19年の上昇ラインを下抜く。16年-17年の下降ラインを一時上抜いたが再び下降ラインの下に。
*ユーロドル「ボリバン上限上抜く」
日足、ボリバン上限上抜く。3月5日-6日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。ボリバン上限は1.1268。
週足、ボリバン下限下抜くも2月3日週-10日週の下降ラインを上抜く。2月24日週-3月2日週の上昇ラインがサポート。ボリバン上限上抜く。
月足、2月はボリバン下限で下げ止まり長いヒゲで戻し3月の上昇に繋がる。20年1月-2月の下降ラインを上抜く。2月-3月の上昇ラインがサポートとなるか
*ユーロ円=「ボリバン下位も下ヒゲ長い」
日足、じり安推移。3月5日-6日の下降ラインが上値抵抗。3月2日-6日の上昇ラインがサポート。ボリバン下位。5日線上向き。
週足、ボリバン下位のまま。2月17日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。2月24日週-3月2日週の上昇ラインがサポート。
月足、19年9月-10月の上昇ラインを下抜く。20年1月-2月の下降ラインが上値抵抗。19年9月-20年2月の上昇ラインがサポート。
年足、16年-19年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
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