周知の通り、中国はインターネットの時代を迎えてからアリババや騰訊などの新しい企業が多く生まれました。
それらの活動によって中国では買い物に現金を持ち歩かなくてよくなりました。
最近では会計時にスマートフォンも使わなくていいように顔認証システムで支払いが済む技術が注目されています。
超先取り消費
アリババのアリペイはアカウントが10億を超え、多くの若い消費者を取り込んでいます。
彼らはアリペイのキャッシュサービス花呗(ファベイ)を利用してアリババのタォバオからローンで買い物をする’超先取り消費’を好みます。
この’超先取り消費’というのは自分の今の収入から乖離して未来の収入を当てにした消費スタイルです。
アリペイは既に花呗で3000億元、日本円にして5兆円近くユーザーに貸し出しています。
’超先取り消費’志向の90年代以降の若いユーザーの内、返済不良数は約1%、100人に1人は期日までにお金を返さずにアプリを削除して返済から逃げようとします。
この姑息なやり方にアリババCEOのジャック・マーは「全く問題ない」と回答しています。
なぜならアリペイの利用を始めた時に実名登録をしているからです。
その際IDや電話番号登録を求められます。
花呗の利用にはさらに家族や友人の連絡先も必要になります。
アリペイの督促から逃れるために電話番号を変えたとしても家族や友人に連絡が行くようになっているのです。
それでも使ったお金をずっと返さないでいるとアリペイやタォバオのアカウントが凍結され、それらに登録されている銀行のキャッシュカードも使えなくなり、最悪法的手段を取られ社会的信用をなくしてしまいます。
もし仮に債務者が死亡した場合、相続人がいなければ債務は帳消しになります。
新しく開いた花呗の利用額
花呗利用ユーザーは7億人以上に達し、平均利用額は数千元、日本円で数万円です。
顧客数が飽和状態に近づきつつある一方、企業側は常に新規ユーザーを求めています。
そこでいままでは一つの社会保障番号につき一つのアカウントしか開設できなかったのが三つまで使用できるようになりました。
新しく開いた花呗の利用額は少額でそれぞれ独立しています。
将来的にはそれぞれのアカウントで利用額を融通し合うようにする予定とのことです。
この施策のターゲットは15歳未満の子供と60歳より上のお年寄りです。
アリペイにはアカウントにサインアップする年齢制限があり、15歳未満と60歳より上の方はアカウントを開設できないのです。
ユーザー数の伸びが頭打ちになる前に手付かずの層へのアプローチを試みています。
アリペイ提供サービス『ゴマポイント』
アリペイはもともとタォバオの発展の為に生まれたものです。
それが若い世代の旺盛な消費意欲に支えられ中国の個人決済コンテンツのトップとなりました。
アリペイの提供サービスの中にゴマポイントというものがあり、自分の社会信用力を示す一つのバロメーターとなっています。
公共バスやレンタサイクルを利用するとボーナスポイントが加算されアリペイ内で利用できる様々なクーポンをもらえます。
花呗を期日通りに返済することでもボーナスポイントが貰えるので持ち合わせがあっても、とりあえず花呗で払ってポイントを貯めるポイント術があります。
アリペイには他にもたくさんのサービスが提供されていて、映画のチケットを買ったり、出前を頼んだり出来ます。
それだけでなく公的な資料を登録して老後の年金や教育ローンも組めたり、金相場やファンドに投資したり医療保険への加入や寄付ができたりとファイナンス部門のサービスも充実しています。
LINEPayなどとは少しサービスのアプローチが違っていて社会インフラに近いものがありますね。
アリペイ以外にWeChatPayというサービスがあります。
こちらはローンが組めるサービスはなく花呗はアリペイオリジナルサービスになります。
香港株式市場 最大規模の上場
花呗の利用可能額はもちろん頻繁に利用すると伸びるのですが、期日前返済を繰り返すとちゃんと返済していても利用可能額が伸びません。
その様なユーザーからは利息が取れないのでサービスを提供する側としては好ましくないためです。
ほかにも自分の社会行動が花呗の利用額にも影響し、規範を逸脱した行動をとると利用可能額は低くなります。
例えばローンの焦げ付きや携帯電話の契約時のルール違反などです。
花呗の利用可能額も自分の社会力を示すバロメーターの一つとなりますので、額を比べあったりします。
社会に変革をもたらしたアリペイですが、母体のアリババは11月26日火曜日に香港株式市場に上場し、調達総額は最大129億ドルに上る見通しです。
IPOの公募価格は176香港ドルで2019年最大規模の上場となります。
ここ5カ月以上反政府デモが続いて過去10年来初めて景気後退入りする可能性のある香港にプラスに働くとみられています。
米中の対立から中国政府は企業に対し中華圏での上場をするよう呼びかけていて、今後米国ではなく香港での上場を選択するケースが増えそうです。
アリババは今年のEコマースの祭典「独身の日」、ダブルイレブンで1日に384億ドルの売上げを記録しました。
アリペイの花呗が消費促進に貢献していることは間違いないと思います。
アリババグループの発展により決済ツールアリペイがブロックチェーンや顔認証システムなどの先端技術を活用したサービスを充実させ、社会にさらなる変化が巻き起こるのではないかと思われます。
PickUp編集部 中国特派員