投資には古くから伝わる格言があります。
先人たちが残した言葉には、必ず意味があり、今の投資家にとっても、十分に役に立つものが多いです。
そこで今回は投資にまつわる格言を、FXに関連したものに焦点をあてて紹介してみたいと思います。
個人投資家の岩田です
みなさん初めまして。
私は個人投資家であり、テクニカルアナリストとして、外為どっとコムのオウンドメディア「マネ育チャンネル」で、為替相場の分析などをさせていただいている岩田仙吉です。
私は東京にある大学の経済学部を卒業後、FX会社に約8年間勤務し、その後、金融メディアのベンチャー企業で、サイトの立ち上げやウェブマーケティングを担当した後、起業してFXや仮想通貨の自動売買プログラムを開発するかたわら、証券アナリスト、テクニカルアナリストの資格を生かして、為替相場などの分析を行っています。
私が投資を始めたのは大学1年生のときで、FX会社に勤めている間は、規制があるので私的な取引はできませんでしたが、ディーリングの仕事をしたり、会社の自動売買プログラムを開発したりと、常に相場と向き合っていました。
10年以上、金融の仕事に携わり、勉強を続けてきた私が、僭越かもしれませんが、「初心者に役立つ格言だ」と思えるものを、10件ほど選んでみました。
資金管理の重要性
1.ウォーレン・バフェットの格言
第2ルール:第1ルールを決して忘れるな。
世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェットの言葉です。
投資において絶対に損を出さないことは不可能でしょう。
おそらく、バフェット氏も損失は出したことがあるはずです。
そこで私はこの格言を次のように理解しています。
「第1ルール、決して“大きな”損をするな。第2ルール、第1ルールを決して忘れるな」
具体的に言えば、大きな損失になりそうなときは、すぐに「損切り」するようにしています。
2.ポール・チューダー・ジョーンズの格言
持っているものを守ることに集中しろ。
先物取引の天才と呼ばれているポール・チューダー・ジョーンズも、同様の言葉を残しています。
これらの格言が示唆しているのは、「資金管理の大切さ」です。
もう少し具体的に数字をあげている格言もあります。
3.ラリー・ハイトの格言
全資産の1%以上のリスクはとるな。
アメリカの著名なファンド・マネジャーであるラリー・ハイトは、自身が創設した会社のトレーダーにこのルールを守らせていたそうです。
プロのトレーダー集団が、このように厳格な資金管理に基づいて、シンプルな取引を行っていた事実から、多くのことを考えさせられた投資家の方も多いのではないでしょうか。
一回大きな損失を出すと、損失分を取り戻すのは本当に大変なのです。
参考>「FX市場から退場せず、成長し続けるために必要な資金計画の立て方とは?」
ポジション管理の重要性
4.ブルース・コフナーの格言
アメリカのトップトレーダーの一人、ブルース・コフナ−の言葉です。
経験の浅いトレーダーは欲を出して、特にポジションが大きくなりがちで、「ひとつの取引で5%から10%という大きさの危険な取引を行い、いずれ破産する」と言っています。
大きすぎる取引は、「大きな損失を出す」という結果をもたらす可能性があります。
それ以上に、ポジションを持とうするときの判断、そして、持っているときの思考を狂わせます。
アメリカの有名なトレーダー集団「タートルズ」の一人、ハワード・シドラーは、大きなポジションを持っているときの恐怖について、以下のような言葉を残しています。
5.ハワード・シドラーの格言
私は大学1年のときに、手を付けてはいけないお金でポジションを持ったことがあります。
奨学金を使ってしまったのです。
資金管理とポジション管理の知識がないまま、FX取引をした結果、どんどんと資金を失い、その負けを取り戻すために、どんどんとポジションを大きくしてしまいました。
そのとき、ポジションを大きくすればするほど、冷静な意思決定ができなくなることに気がつきました。
自分で決めたエントリールールを守らなかったり、損切り水準を無視し、いつかは反転してプラスになるだろうと都合のいいように考えたりしました。
プラスになると、利益が小さいにもかかわらず、決済していました。
最後は、チャートを見ることをやめて、パソコンの電源を入れず、アルバイトを休み、布団の中で両手をあわせ、神様にお願いをしていました。
自分がやらなければならないことを放棄して、「神頼み」という非合理的な行動をしていたのです。
もし取引をしていて、あなたが恐怖や不安を覚えたならば、それはポジションが大き過ぎるのかもしれません。
まず、初心者はコツコツと小さな勝利を積み重ねて、勝ち方を覚えるべきなのです。
「勝ち方を覚える」とは、勝率と平均損失に対する平均利益の大きさを上げることです。
このふたつで常に良い数字が出せるようになり、資産を倍にしてから、ポジションを大きくしてもいいのではないでしょうか。
損切りの重要性について
さて、先人たちの格言から、資金管理、ポジション管理の大切さを学びました。
次に実際にポジションを持ったあとに重要な「損切り」に関する格言を紹介しましょう。
6.ブルース・コフナーの格言
損切りがうまい人と、損切りがなかなかできない人の違いは、「負けることも投資の一部」と理解できているかどうかでしょう。
ポジション管理の格言で紹介したブルース・コフナーは「いつでも間違えて当たり前だ」という言葉を残しています。
それでは「間違った」と思ったとき、私たちはどうするべきなのでしょうか。
ヘッジファンドのマネジャーの年収ランキングで、1位になったこともあるマイケル・プラットの格言です。
7.マイケル・プラットの格言
「私の考えが間違いだとわかったとき、ショックを受けるのは私だけではないだろう。
だから、誰よりも早く売らなくてはならない。
どんな価格で売るかはまったく気にしない」とプラットは言っています。
投資家から集めた多額の資金を運用するヘッジファンドのマネジャーの非常に重い言葉です。
相場のことを勉強すれば、いつかは必ず勝てる法則が見つかると、私は思っていました。
だから、証券分析やテクニカル分析の資格を取り、物理学的なアプローチで経済を分析するという新しい学問にも取り組みました。
そこで勉強した理論を、自動売買プログラムに組み込んでみました。
このような必ず勝てる方法を探すことを「投資の聖杯を見つける」と言います。
ところが、この聖杯を探せば探すほど、相場について研究すればするほど、私は勝ちに執着して、負けを認められなくなり、結果的に損切りが遅くなって、パフォーマンスは下がりました。
パフォーマンスが改善したのは、私が「聖杯探し」を諦めてからです。
私の研究不足もあったかもしれませんが、「聖杯探し」にコストをかけるよりも、「負けることもある」と認めて、それを踏まえた取引手法を考えるほうが、圧倒的にコストは安く、取引がしやすくなり、経験値を積むスピードが速くなったからだと思います。
なお、ロスカットを決断する方法は、あらかじめロスカットの水準を決めておくことです。
ロスカット水準の設定は、資産管理、ポジション管理とも関連しています。
参考>「FXの市場から退場せず、成長し続けるために必要なポジション管理とロスカット設定の方法とは??」
8.ウォーレン・バフェットの格言
「間違って当たり前だ」と理解し、素早く損切りができるようになったとしても、損切りが続くと苦しいものです。
そういうときは取引を休みましょう。
野球が好きなウォーレン・バフェットは次の言葉を残しています。
これは、企業分析にじっくり時間をかけて、自分が信じるすべての条件が揃ったときだけバットを振ればいいという「休むも相場」を意味する言葉です。
株式とFXでは相場が異なりますが、この言葉はFXにも通じるでしょう。
為替は上がったり下がったりの波を繰り返します。
いつかは必ずチャンスがやってきます。
投資に「見逃し三振でバッターアウト」はありません。
自信がなくなったら、バッターボックスで、好球が来るのを待ち続けましょう。
9.トレンドの重要性に関する格言
こちらは古くから伝わる投資の格言です。
直訳すると「トレンドはあなたの友達」となります。
「トレンドを味方にしろ、トレンドに逆らうな」つまり、「トレンドフォローをしろ」ということです。
FX相場は二国の通貨を交換するレートで作られています。
例えば、米ドル/円の値は、米ドルと日本円を交換するときの乗数です。
ところで、米ドルと日本円は、なぜ交換されるのでしょうか。
それは人の移動、モノの移動、サービスの移動、国境をまたいだ実需の取引が、お金の交換の裏側にあるからです。
マクロ経済学の要素としてとりあげられる実需の取引は、数日や数週間で逆流するようなものではありません。
長年、海外市場で日本車が売れ続けています。
日本を訪問する外国人観光客は、数年前から急増しています。
このような実需のトレンドは、数カ月ではなく、数年続きます。
実需のトレンド同様に、FX相場のトレンドも長くなるということが理解できるのではないでしょうか。
もちろん、政権交代や中央銀行の政策変更、「◯◯ショック」と名付けられるほどの相場崩壊、地域紛争の勃発などの大きなニュースには注意しましょう。
これらの出来事が実需のトレンドを大きく変化させる可能性があります。
そして、そこがFX相場の転換点になるかもしれません。
10.スティーブ・クラークの格言
そうでないことを少なくする。
長年高いパフォーマンスを達成しているヘッジファンドを創設したスティーブ・クラークは、部下に取引の損益を分解させ、「うまくいったこと」「そうでないこと」を分析するようにアドバイスをしているそうです。
また、著名なファンド・マネジャーのレイ・ダリオも、部下に取引をしたら、必ず取引した理由をノートに書かせて、手仕舞いしたときに、実際に起こったことと、自分が書いた前提や理由を比較させたそうです。
スティーブ・クラークは、取引記録を分析させた後に、「うまくいっていることをもっとやり、そうでないことを少なくする」ということをアドバイスしているそうです。
とても単純なことですが、これこそが投資におけるPDCAサイクルでしょう。
参考>「FX初心者が成長していくために必須の投資日記の付け方と続けるコツとは?」
今回はFXで役立つ格言を、私が大切だと思う順番で紹介しました。
10の格言が示していたことを最後にもう一度整理してみましょう。
1 資金管理
2 ポジション管理
3 損切りの決断
4 休むも相場
5 トレンドは重要
6 取引を振り返り、PDCAサイクルをまわす
先人たちの残した言葉については、以下の書籍を一部参考にさせていただきました。
今回格言を紹介した人たち以外の偉人の言葉も、多数記載されています。
興味のある方は是非、読んでみてください。
カーティス・フェイス『伝説のトレーダー集団 タートル流 投資の黄金律』
ジャック・D・シュワッガー『マーケットの魔術師 エッセンシャル版』
投資で大切なことは「継続」することです。
最初からうまくできる人はいません。
コツコツと自己研鑽し、技術を習得していくものではないでしょうか。
とんでもないところへ行くただ一つの道
これは今年4月に現役を引退したマリナーズのイチロー選手の言葉です。
FXでの投資も同じではないでしょうか。
欲を出さずにバッターボックスに立ち、好球を待ち続け、コツコツとヒットを打つことを続ければ、自分が目指すところに、少しずつでも近づける。
私はそう思っています。
FX投資が初めての方へ!FXの魅力や特徴(初心者編)はこちら
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。